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S級冒険者の父に地獄育成された少年の無自覚無双~火竜を素手で殴り殺すなんて普通でしょ?~  作者: テツみン


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第37話 少年、魔法オルガンを聴く

 ミンファが持っている指輪型の魔道具が金貨にして千枚ほどの超レアな品物だとアトから聞いて、シシリーは思わず声が出てしまう。


「えっ? どうしたっす?」

 ミンファがビックリして、そう尋ねてきたので、シシリーは「い、いえ、なんでもないです!」と慌てて誤魔化した。


「あ、そう……まあ、イイっす。それじゃ、聴いてほしいっす」

 するとミンファは左手で鍵盤楽器を持ち、右手で鍵盤を叩き演奏を始める。


 彼女が『オルガン』と称したとおり、形状はともかく、確かにオルガンの音色だ。ただし、教会にあるリード・オルガンやアコーディオンのような軽い音ではない。大聖堂のパイプオルガンのような重厚な音色だった。


「うわっ! スゴい!」

 その迫力にアニエルは目を丸くする。

 その反応に気をよくしたのか、ミンファは――


「ふ、ふうん。驚くのはまだ早いっすよ。コレのスゴいところは、いろんな音が出せるところなんすよ」

 ミンファが、「ピアノ」とつぶやくと、突然、ピアノのような音になる。


「おおっ!」

「まだまだっす!」


 今度はハープのような繊細な音色に変化。続いて、木管楽器のような音まで出てきた。


「この楽器は『魔法オルガン』と言って、魔力によっていろんな音色が出せるっす」

 ミンファは自慢げに、そう説明する。


「ん? なんじゃ? なんじゃ? なんか、面白いことをやっておるのじゃ?」


 アニエルが背負っているリュックサックのポケットで寝ていたクリムが出てくると、興味深そうにミンファが手にしている楽器の周りを飛び回る。


「わっ! わっ! わっ! 本当に妖精族っす!」

 ミンファは大きな目を見開く。


「ほら! もっと弾いてみるのじゃ」とクリムが急かすので――


「よーし! それじゃ、こうしてスタンドを出すと――」

 鍵盤楽器の裏板に収納されていた四つの脚を出して地面に置いた。


「こうすると、両手で演奏できるっす」


 ミンファは片手で弾くより、アップテンポでダイナミックな曲を奏でる。


「おおっ! スゴい! スゴいのじゃ!」


 クリムが飛び回って喜んでいる。

 いつの間にか、路上を行き交う人たちまで、立ち止まっていた。


「ま、こんなもんで。わかってくれたっすか?」

 ドヤ顔するミンファに、見知らぬ人まで拍手している。


「うん! 感動した! ボクたちと一緒に演奏してほしい!」

 アニエルが誰にも相談せず、即決してしまう。


「アトさん、アニエルさんがあんなことを言ってますが、大丈夫でしょうか?」

 シシリーはどこか引っかかっているようで、そんなことを言う。


「まあ、いいじゃないか。面白そうだし……」

 アトはそんなふうに応えた。


「面白そうって……」

 それで本当にいいのだろうか……心配になるシシリーだが――

「それで、だな……」

「――えっ?」

 アトが何やらシシリーに頼みごとをするのだった。


「ねえ、彼女? さっきからブツブツ言っているっすけど、どうしたっす?」


 ミンファが気にしてシシリーに声をかけてきたので、銀髪の少女はちょっと慌てる。


「――えっ? いや、な、なんでもないです。は、はい、私からもよろしくお願いします」と話を合わせる。


「あ、そう? ありがとうっす」と、ミンファは拍子抜けしたような表情になる。


「それで、アトはどうなんだ?」

 アニエルがそう振るのだが、アトは無言のままだった。


「えっ? アトさんて誰っすか?」

 当然、ギターのことだとは思わないので、ミンファは辺りをキョロキョロする。


「アトはコイツだよ」とアニエルは、シシリーが抱えているギターを指差そうとしたので――

「と、ところで、お腹が空きません? ミンファさんももしよろしかったら、一緒に食べませんか?」

 シシリーが顔を引きつらせながらそう提案するのだった。


 ミンファはそんな彼女に違和感を覚えたのだが、「そうだな、宿に戻ってジャックさんの料理を食べよう!」とアニエルは気にしていないようだったので、彼女も「それじゃ、ご一緒させてもらおっかな?」とヘラヘラ笑って済ませた。

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