第36話 少年、露出狂と出会う
市場からの帰り道、若い女性に声をかけられる。ショートカットの青髪。革製の防具を着用しているが、お腹丸出しで、日焼けした肌を惜しげもなくさらけ出している。
「露出狂のおネエさん、誰?」
「初対面で露出狂呼ばわりしないでほしいっす! これはビキニアーマーという立派な防具っすよ。まあ、それはイイっす……私は冒険者で吟遊詩人のミンファっす。ねえ、私もメンバーに加えてもらえないっすか?」
市場での演奏とシシリーの歌声に感動して、同じ吟遊詩人として「一緒にやりたい!」と思ったそうだ。
「彼女の歌声に、みんなうっとりしていたっす。それに妖精のパーカッションもスゴいっすね! そしてキミのギター! とってもカッコよかったっす!」
そう褒められて、アニエルは「エヘヘ、照れるなあ」なんて言っている。
(オマエは、『カッコよかった』じゃなくて、『カッコだけ――』だがな)とツッコミを入れたくなるアト。
「これにワタシのオルガンが加われば、曲の厚みが断然増すっす! どうっす?」と、ミンファと名乗った女冒険者が言う。
「オルガン? おネエさん、オルガンなんて持ってないっすよね?」
アニエルはすぐにそう言い返す。なんか、口癖まで移っているし……。
確かに、彼女の持ち物は腰にぶら下げた短剣だけだ。
「ふ、ふうん。見てほしいっす」
ミンファと名乗った露出狂――もとい、冒険者の娘は左手を前に出すと、「オルガンを出して」と唱える。すると、パッと鍵盤楽器が現れた。
「うわっ! なんだぁ? いったいどこから?」
びっくりするアニエル。その様子を見て、ミンファはドヤ顔を見せる。
「どう? スゴいっしょ?」
「ほう、珍しい。収納リングか――」
シシリーに抱きかかえられていたギター――つまり、アトはシシリーにだけ聞こえるように、小声で囁く。
「収納リング、ですか?」
シシリーも小声で聞き返すと、「ああ、あの左中指のリングはかなりレアな魔道具だ」と、やはり小声で説明する。
この世界には空間魔法を利用した『収納ボックス』が流通していた。たいていはアニエルが持っているようなリュックサックか、ショルダーバッグの形をしている。だが、それ以外の形態も存在していた。
魔石に空間魔法を封じ込める製法で、空間魔法の使い手が少ないこともあり、一番安いものでも金貨数枚はする。
「リング状の収納ボックスがあることは知っていたが、現物を見たのは初めてだ。アレを売ったら金貨千枚……いや、それより高いかも――」
「せ、千枚!?」




