第35話 少年、呆れられる
「それにしても、アニエルがあそこまで言えるとはな――ちょっと、見直したぞ」
市場からの帰り道、ギター姿のまま、アトがアニエルに話しかける。
「えっ? どういうこと?」
何のことだかわかっていない――という顔をするアニエル。
「どういうことって……なんだかんだ言って、シシリーのことをあんなふうに思っていたんだな」
そうニヤニヤするアト。シシリーはさっきからうつむいたまま、黙っている。
「あんなふうに? なんだっけ?」ととぼけるアニエルに、アトは――
「恥ずかしがるな。いや、カッコ良かったぞ。女はああいう押しに弱いのだ。なあ? シシリー?」
そう振られて、彼女はまた顔を茹でダコのようにする。
「さっきから何のことを言っているんだ?」
本当にわからない……そういう顔をアニエルが見せているので――
「だから、『彼女を誰かに譲るなんてボクにはできない!』だよ。聞いている吾のほうが恥ずかしくなったわ」
「――? だって、ボクはシシリーの父親じゃないから、譲ることはできないよね?」
――ん?
なんで、ここに彼女の両親が出てくる?
「父さんが言っていたんだ。『結婚したい女性ができたなら、その人の両親に頭を下げて許しを請うんだ』って。違うの?」
イヤ、違わないが……イヤイヤ、そうじゃなく!
「だって、オマエは恋人だって――」
「うん、シシリーは吟遊詩人の仲間だよ」
「……………………」
やっと、自分が勘違いしていたことに気づいた。アトは頭を抱える――気分になる。
「いや、オマエはそういうヤツだった。ちょっと期待した吾が悪いのだ」
「なんだよ。なんかボク、間違ったことを言ったか?」
バカにされた気がして、ムッとするアニエルに、アトは「オマエに女心は一生わからない――そういうことだ」とちょっとイラ立った口調で言う。
「だから、なんで怒っているんだよ」
「怒っていないわい! シシリー、あんなのは放っておいて、オンナ同士で仲良くしよう」
「はい、そうしましょう」と、シシリーもどこか怒っている感じだ。アニエルからギターのアトを奪うと、そのまま抱きかかえた。
「なんだよ、もう……」とアニエルは不満を漏らす。
その時、後方から三人に声をかける人物が――
「ねえ! 市場で演奏していた人たちっすよね?」




