第3話 少年、口論となる
冒険者試験に合格したアニエルは自宅に戻るなり、父親、ダニエルに向かって「ボクは冒険者にならない」と宣言するのだった。
「な、なにを言っているんだ、オマエは!? 冒険者の資格を手に入れたばかりだぞ?」
「うん。だけど、父さんから冒険者になるための訓練を受けて、そしてわかったんだ。ボクは冒険者に向いていないと――」
与えられた試練をクリアするだけでやっと――結局、目隠ししたままでは火竜を倒せなかったし……そんな自分が冒険者としてやっていける自信がない。
アニエルはそう伝えるのだった。
「バカモーン! そんな気持ちで、立派な冒険者になれるかぁ!!」
「いや、だからならないと言っているんだけど――」
混乱するダニエル。どうしてそうなるんだ?
「それに、冒険者って仲間とパーティーを作って行動するんでしょ?」
「当然だ! 仲間との絆はとても大切だ!」
「だけど、ボクは長い間、父さんと二人暮らしだったから、他人とどう接すればいいかわからない。そんな自分が、誰かと信頼関係を築けるなんて思えないんだ」
「うむむ――」
他人とどう接すればいいかわからない――だと?
そんなことで悩むのか?
ますます、わけがわからなくなる。
「それなら、オマエは何になりたいんだ?」
「わからない」
「――はあ?」
「だから旅に出る」
世界は広い。こんな自分にもきっと向いている職業があるはず。それを探しに行くという。
冒険者ギルドはどの国家にも属さない、大陸共通の独立組織。ギルドが発行した冒険者証はどの国でも身分証として扱ってくれる。だから冒険者にはなったけど、冒険者の仕事をするつもりはない――そう告げるのである。
「父さんの望みは、ボクが冒険者になること。そして、ボクは冒険者資格を手に入れた。だから、これからは自由に生きたい。それでいいよね?」
今回はたまたま甘い試験官で運が良かったけど、合格したことには変わりない。だから約束は果たした――そう言い張る。
「そんなこと、許すわけがないだろ!」
「でも、ボクはもう決めたんだ」
このままでは説得できない――そう考えたダニエルは、息子にこう提案する。
「――ならば、オレと闘え。オマエが勝ったら好きにすればいい。しかし、負けたら黙って冒険者になるんだ。わかったな?」
「――ウン。わかった」
アニエルは内心、(ヨシ!)と思う。
父親の性格だから、意見が平行線を辿れば「闘って白黒つける――」そう言い出すことはわかっていた。
彼はそれを待っていたのである。それを見越して、とある秘密特訓を続けてきたのだ。
(今こそ、特訓の成果を見せる!)




