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S級冒険者の父に地獄育成された少年の無自覚無双~火竜を素手で殴り殺すなんて普通でしょ?~  作者: テツみン


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第2話 少年、父に告げる

 アスタリア大陸――平たく言えば異世界。

 その辺境の地、トルトという小さな町の郊外に、ある親子が住んでいた。


 父親の名前はダニエル・ウィルキンソン。S級冒険者パーティー、『ブルズ』のメンバーとして、大陸に存在する五つのS級ダンジョン全制覇という偉業を成し遂げた人物だ。


 冒険者引退後、彼は妻や息子とともにこの地で静かに余生を過ごす――つもりだった……


 彼は五歳になる息子、アニエルに冒険者としての資質を見出す。そして、「息子を立派な冒険者にすることが、自分の使命だ」と考えるようになった。


 たった五歳の子供に資質を見出すなど、常識的に考えれば無理な話だ。つまり、彼は単なる子煩悩からそう信じてしまったのである。


 ダニエルは息子に対して冒険者になるための訓練を開始する。最初は体力をつけるための運動や、木刀を使っての剣術指導だった。

 やがて、それは厳しさを増していく。あまりにも激しい特訓だったため、見ていられなくなった妻が家を出て行ってしまうほどに――


 いったい、どういったものだったのかというと――


 冒険者養成ギプスを五歳の身体に装着し、大剣の素振りを毎日一万回!


 朝晩、四十キロを一時間で走りきるロードワーク!


 目隠しをしたまま木刀を躱(かわ)す、気配察知の訓練!


 彼の息子、アニエル少年は父親の期待に応えるべく過剰ともいえるそれらの訓練をやり遂げていく。



 アニエルが十歳になると遠征にも出かけるようになった。


「冒険者たるもの、火竜を素(・)手(・)で倒せるようでなければならない!」

 そう言われ、火竜の棲む火口へ武器を持たされず投げ込まれたり――


「冒険者たるもの、毒程度で身動きができなくなるようではダメだ!」

 そう言われ、猛毒の沼地を三日かかりで横断させられたり――


「冒険者たるもの、一晩戦い続けるだけの集中力が必要だ!」

 そう言われ、アンデッドが大量に出没する荒野で置き去りにされたり――


 まあ……要するに、平均的な冒険者なら百回は死ねる――そんな修羅場をアニエル少年は乗り越えてきたのである。


 いつしか、彼は気づいてしまうのだった。


「ボクは冒険者に向(・)い(・)て(・)い(・)な(・)い(・)」


 ――と。



 そして、彼は十五歳になり、先日、冒険者試験に合格。晴れて、冒険者となった。


 アニエルがトルトの自宅に戻ってくると――


「アニエル! 冒険者試験、合格おめでとう! さすが、オレの息子だ!」


 喜ぶ父、ダニエルが出迎えた。


「えっ? 父さん、どうしてボクが合格したことを知っているの?」


 そう言われ、ダニエルは慌てふためく。


「いや、なんだ――そう、ニグレアから来た商人に話を聞いたんだ。決して、ニグレアまでこっそり様子を見に行ったわけじゃないぞ」


 ダニエルは底なしの子煩悩であった。


「そうなんだ。うん、ボクは冒険者試験に合格したよ」


 アニエルは真新しい冒険者証を父親に見せる。


「うむ。よくやった。しかし、冒険者試験に合格したくらいで浮かれるでないぞ。本当に大変なのはこれからだ!」

「うん、わかっているよ」


 そう答える息子に、ダニエルはうなずく。


「オマエは冒険者として、今まで以上の試練を乗り越えなければならない!」

「わかっているよ。だから、ボクは冒険者にならない」

「そうだ! だから、冒険者に――おい、アニエル? 今、何と言った?」


「冒険者にはならない――そう言ったのだけど?」


「なんだとぉぉぉぉぉぉぉっ‼」

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