第18話 少年、料理をほめられる
アニエルとシシリー、そしてギターのアトは王国領へ向かうべく南を目指す。その途中、湖のほとりで夜を過ごすことにした。
「アニエルさんって、料理も上手ですね?」
道中で仕留めたワイルドボアの肉を豪快に焼き、岩塩と胡椒で味付けしたバーベキューが今晩の料理。もう一皿は、残っていた一角兎の肉と香草を炒めた品である。
「ま、まあね。ボク、父さんと一緒に修行の旅をしていたから、料理をいつの間にか覚えてしまったんだ」
シシリーに褒められ、まんざらでもないという表情を見せるアニエル。
「そうだな。この腕前なら料理人としても食っていけるんじゃないか?」
女性の姿に戻ったアトがそう感想を言う。
「はい! 私もそう思います!」
人になったアトにシシリーは最初、かなり驚いていた。だが、すぐに溶け込んで、今はもう仲の良い姉妹のように会話が弾んでいる。
「料理人? うーん、ピンとこないなあ……まあ、吟遊詩人の次に考えておくよ」
「だから、オマエの優先順位の付け方がまったくわからないのだが?」
「そうだね、インスピレーションかな?」
「そんな役に立たないインスピレーションは今すぐ捨てろ」
二人のやりとりにシシリーはクスクスと笑うのだった。
食事を終えると、火の周りで眠る。アニエルはすぐにいびきをかき始めた。
しかし――
「眠れないのか?」
いつまでも寝返りをうっているシシリーにアトが声をかける。
「ごめんなさい。起こしてしまいました?」
「吾は眠る必要がないからな――どうだ、少し話をしないか?」
そう言って、アトは再び人の姿に戻った。
「オマエ、人間と魔族のハーフだと言っていたが、それだけでないだろ?」
いきなり、そう切り出されて、シシリーは悲しそうな表情を見せる。
「……やはり、アトさんは気づいていたんですね? やはり、このイアリングで?」
「それだけない。まずはその角だ」とアトは彼女の頭を指差す。
「その立派な角はあきらかに上級魔族のそれだ。ベルゼブブのような大物が現れたのも、それなら合点がいく。それとオマエが使った治癒魔法。その『魔力色』だ」
この世界には魔法がある。
その種類は六つ――『火』、『風』、『水』、『土』の四元素属性。主に魔族が使う『闇』属性。そして、生命力、活力に影響を及ぼす『光』属性――である。
それぞれの属性で色が違う。『火』は焔。『風』は翠。『水』は碧。『土』は琥珀。『闇』は漆黒。そして『光』は無色――
「魔力の色――あえて悟られないように魔力放出を制限しているようだが、吾にはわかる。同じ光属性でも、より無色透明の輝きを放っていた。あれは神から直接祝福を受けた者、もしくはその血筋に近い人物しか得られない」
つまり、それは――
「シシリー、オマエの母親は、神の祝福を受けた人物――そういうことだな?」
アトにそこまで言い当てられて、シシリーは観念したように、自分の両親について話す決心をした。
「はい……私の父は魔王べリアル。そして母は聖女でした」




