第12話 少年、道を尋ねる
「だ、誰だ!?」
ベルゼブブとその配下の者たちは慌てた。声をかけられるまで、気配にまったく気づかなかったのだ。
「あ、ゴメンナサイ。気配を消していたので、驚かせてしまいました?」
気配を消していた?
魔族は魔力の感知力が非常に高い。よほどの達人でなければ、魔族に気づかれないまま近づくなんて、到底不可能な芸当である。
それをこの少年が?
ベルゼブブでさえ、この少年を警戒する。明らかに凡人ではない。
樹海の奥地に単身でいる時点で、もはや凡人でないことは確実だった。
そして……魔王の娘、シシリーを追い詰めたこのタイミングで少年は現れたのである。
やはり、シシリーに何かしら関係している人物と考えるべきだろう。
すると、少年はこう尋ねてきた。
「スミマセン。王国の方向はどちらになります?」
「――は?」
この少年、本気で道を尋ねているのか?
「いやあ、しばらく森の中を彷徨っているうちに、方角がわからなくなっちゃって……」
少年はヘラヘラと笑いながら、そんなことを言う。
一瞬、呆然としてしまった魔族たちだが、やがて、どこからともなく笑いが漏れる。
「王国なら南だろ? ならあっちだ」と、牙を生やした魔族のひとりがそう告げる。
少年はそちらを見て――
「そうでしたか。ありがとうございます」と頭を下げた。
「もう、用は済んだか?」
「はい、それでは」
そう言って、少年はその場を離れようとした。
「こら! 待てぃ!」




