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〇〇は誰だ  作者: 北崎世道
一章
34/43

今更ダンジョン

 僕がそれに気付いたのは、部屋でゆっくりし過ぎて、脳が融けてきたんじゃないかと思い始めた頃だった。

 しかし、死体とアヘ顔の中間くらいの状態でも、部屋に誰かが入ってきたら気付くし、僕が自室から出た訳ではないから、それが行われたのが、いつからいつまでなのかについては、はっきりとしていた。


 事が起きたのは、僕が部屋を出て行ってる間。

 それもヒオカさんと家具屋に行ってる間ではなく、一度部屋に戻ってから、すぐにまた僕は出かけた、それからだ。


 そして、その外出からまた部屋に戻ってくるまでの間。約二、三時間くらいか。

 その間に事は行われた。

 今度戻ってきてからは、部屋から出て行ってないから間違いない。


 要するに、僕がヒオカさんと取り巻きに絡まれたり、その後ヒオカさんと軽くイチャイチャしたりしている間だ。

 僕とヒオカさんが博物館に行ったり、うみゃみゃみゃみゃみゃみゃみゃっ、とか言ってる間に犯人は犯行に及んだ訳だ。


 ただし、今回の事件は前とは少し異なり、破壊ではなく窃盗だ。

 盗まれたのは、またしてもサムさんのところで買った商品の内の片方で、もう一つの方が無事だった。


 今回は破壊された残骸が部屋に残されていた訳じゃないので、気付くのが遅れてしまった。

 この世界に来てから僕は、身体が変わり、環境が変わり、ライフスタイルが変わった。

 なので自室で一人で籠ってる時も、やる事が違い、それがない事にはすぐに気付けなかった。

 おそらく元の世界でだったら、すぐに気付いただろう。

 ただ、すぐに気付いたからといって、何かが変わる訳ではない。


 そもそも今回の件を、僕はとりたてて大事にするつもりはない。

 どうせもう少ししたら、この寮を出るのだ。

 盗まれたこと自体はショックだったが、あくまでそれなりにで、前回みたいな凄惨な光景が遺されてる訳でもないし、特にそれが大事だった訳でもないから、別に構わないと思っている。

 むしろここで大ごとにして、折角のお別れを台無しにしてしまう方が問題だ。

 あ、いや別に、寮が変わるだけで、学校は一緒だからお別れと言うのは間違いかもしれないけど。


 ともあれ、今回の窃盗はもう見て見ぬふりをするつもりだ。

 泣き寝入りといえば泣き寝入りだけど、犯人の目星が付いてるから、そんなに慌てなくてもいい気持ちになっている。


 そう。犯人の目星は付いている。


 誰がやらかしたかについて、僕はこいつが犯人だろと、半ば確信に至っている。

 トリックについても判っている。


 これまでは証拠がないから疑っても仕方ないか、ぐらいに思ってたけど、今回の件で証拠が部屋に置かれているのが分かっているため、責められるといえば責められる。


 ま、責めはしないけど。


 さっきも言った通り、もう見て見ぬふりをするつもりなのだ。


 元々、僕は誰かを非難したりするような攻撃的な性格の人間ではない。

 何かしら問題が起きた時も、たとえ自分に非がなくても、自分のせいにされないだろうか、もしくは、本当に自分に非がないだろうかとびくびくするタイプの人間だ。

 この世界に来て、異世界チートの力を手に入れ、自分に(たとえ偽りの力であろうと)自信がついたので、そこまで自意識過剰な被害妄想屋ではなくなったけれども、それでもやはり根っこの部分はそう簡単には変わらないし、変えられない。

 変わるには、それこそ何かしらを積み重ねないといけないだろう。

 自信家になりたければ、成功体験を積み重ねないと無理だ。

 空想による薄っぺらい成功体験では、これまでうんざりするほど積み重ねてきた失敗体験を更に引き寄せるだけだろうし、やはり本物の成功体験を重ねていかないと駄目だろう。

 少なくとも僕はそうだ。


 ともあれ、僕は家具を破壊、窃盗した犯人を問い詰めるつもりはない。


 ただ、少し気になる事があると言えば、ある。


 どうして、彼女は犯行に及んだか。


 つまりは動機だ。


 動機は、これまでは分かっていたつもりだったが、今回の窃盗の件で分からなくなった。


 いや、これまで考えていた動機でも全然大丈夫なのだが、なんとなく引っ掛かるというか。

 ああもう、特に引っ張る理由もないから言うけど、どうして今回、彼女はゴミ箱なんかを盗んだという点が引っ掛かっている。


 そう、ゴミ箱。


 盗まれたのはゴミ箱の方だ。


 家具を愛してるサムさんでさえ、ゴミ箱についてはそれほど熱が入ってない。

 それぐらいの価値しかない品だ。


 もう一方の時計についてだが、そっちは盗まれていない。


 この世界で時計は貴重だというのに、手は付けられていない。


 その点が気になると言えば気になる。


 彼女は、僕が時計を手に入れたという事は知っている筈なのに、どうして盗んでいないのか。


 僕が思ってる動機と矛盾してる訳ではないけど、なんとなくそれが気になるというか、もしかして僕は何か根本的な誤解をしているんじゃないかって思えるのだ。


「…………ま、どうでもいいか」


 と、ここまで色々考えてはみたが、結局、僕は思考を投げ出した。

 何もかも、全てを放り投げた。

 責めるつもりがないなら、考えても仕方ない事に気付いたのだ。

 逃げる事が得意な僕は放り投げる事も得意分野だった。


 思考を放り投げた僕は、最初からこの部屋に備え付けられていたベッドから起き上がり、少しだけ部屋の中を見渡してから外に出た。

 向かうのは食堂だ。

 外は真っ暗。

 既に夜の帳は下りていた。

 食堂の無料期間は過ぎてはいるが、まだ開いてはいるので食べられない事はないだろう。

 ブルババから貰ったお金も、一度目は家具代で全て消えたが二度目のやつが残っているので、支払いには困らない。

 無駄遣いをしたという後悔は残るが、仕方ないと割り切っておく。

 今はまだブルババから貰った分しかお金は持たないが、異世界チートの力を使えば、お金を稼ぐのもそれほど苦労はしないだろう。

 それに折角の異世界だし、ダンジョンやらギルドやら、そういう異世界あるあるな体験をしてみたいとも思っている。

 明日辺り、街の方へ向かい、ダンジョンに潜ってみようか。

 一応、街のどこかにダンジョンの入り口があると聞いている。だから遠出をする必要はない。


「誰かを誘うのは…………やめておこうかな」


 異世界チートの力を使うつもりなので、そういう場合は一人の方が何かと都合がいい。

 特に初めて潜るダンジョンの場合は。


 何事も初めての事においては失敗が付き物だ。

 特に僕の場合は猶更である。

 いくら異世界チートの力を持ったとしても、僕の無能っぷりはそれだけで補えるものではなく、おそらく何かしら失敗を犯すだろう。

 だけど失敗をするにしても、一人で失敗するのと、誰かと一緒にいて失敗するのでは色々と違う。

 ここで誰かと一緒に失敗するのを選択しない辺りに僕のぼっち属性が表れているし、そもそも誰かと一緒に来てもらう事で失敗を避けようとしない辺りに僕の無能っぷりが浮き出ているのだけど、それは一旦置いておこう。

 そういう風にしか新たな一歩を踏み出せない拗らせた人間もいるのだ。


 ともかく、明日は一人でダンジョンに潜ることにした。


 未だ授業の一つも出てない学園生活については思うところがない訳でもないが、それはひとまず後回しだ。

 すべき事を後回しにするのは、僕の数少ない特技の一つなので問題ない。


 な訳あるか。



 ◆



 その晩、僕は自分が思い違いをしている事に気付いた。


 自分の愚かさに絶望しそうだった。



 ◆



 翌日、僕は予定通りダンジョンに潜ることにした。

 朝早くに食堂で朝食を取ってから、街に向かい、ダンジョンの入り口があるところを探した。

 まだまだ朝早かったが、街の中は既に人で賑わっていた。

 街の朝は早いものだと思ったが、単に働きに出る人達が動き始めてるだけである事に気付いた。

 要は通勤ラッシュだ。

 元の世界なら、コミケのような特別時のイベント等を除き、おそらく最も人間が集まる時間だと言えよう。


 ただこの世界では、元の世界みたいな地獄を煮詰めたような通勤ラッシュは起きていなかった。

 やはりあの人口密度は異常だったのだ。

 少し深く掘り下げれば、この差は文明や医療技術の差などの要因からくるものと考えられるかもしれない。


 あるいは治安の差。

 人間同士の争いもさることながら、ダンジョンでの死亡率は一体どれくらいだろう。

 経験の浅い若者がダンジョンで人知れず消えていくのは、どれくらいの数に上るのか。

 おそらく元の世界での死亡事故の数よりは多いだろう。


「そういうところに、今から向かう訳だが……大丈夫だろうか」


 今更ながら不安に駆られてきた。

 これは僕の悪い癖だ。


 僕には異世界チートの力があるので、命の危険はまずないが、それでもビビりな僕はどうしても不安を覚えてしまう。

 ビビったところで何も解決しない事は分かっているのに、それでもビビるのはやめられない止まらない。

 とはいえここで引き返すのも馬鹿らしいので、とりあえず進む。

 街の中がどんな風に区分けされてるか、そういうのを確かどこかで聞いた覚えがある。

 確か、初めてこの街に来た時、門兵から軽く説明を受けた気がする。

 今にして思えば、あれは僕をブルババのところに連れて行くのを感付かれないよう適当に話をしていたのだと思う。

 そういえば、盗賊から助けただけでブルババが僕に若干執着するのは変だと思うのだが、どうだろうか。異世界チートの力の片鱗を感じ取ったのか。

 それとも僕には明かせない何かしらの事情があるからだろうか。

 まあ、今更どうでもいいのだけど。

 どうせボディガード辞めるし。


 不安を紛らわせる為にあれこれ別の事を考えながら街の中を歩く。

 確かここら辺は迷宮区とか呼ばれる場所だ。

 迷宮の入り口があり、それに合わせるように冒険者が使いそうな施設があれこれ並んでいるという感じだ。


 ブルババに捕まらなければ、僕もおそらくここの地域に住むことになっていただろう。

 異世界チートの力を活用するなら、やはりこういう冒険者的な場所に限る。

 それにこういう場所にはロマンを感じる。

 異世界系はあくどいクソ野郎をぶっ飛ばすだけが醍醐味ではなく、ゲーム的な世界観に触れるのも醍醐味の一つだと思う。

 さっきはビビり散らかしてた分際で何を言ってると思われるかもしれないが、それはそれ、これはこれ。

 やっぱりロマンは大事だ。


 僕は観光客の如くあちこちを見ながら、フラフラ歩く。


 歩きながら思うが、やはり迷宮区内の人は強そうだ。

 体格がいいのもそうだし、歩き方というか周囲への警戒の仕方というか、隙がないように思える。

 ただ、これは僕が迷宮区に来たという意識が、そういう印象を抱かせているだけかもしれない。

 渋谷に来たらお洒落な人が多いなぁと勝手に思ってしまう感じ。


 と、急にこちらに手が伸びてきたので、思わずそれを払いのける。


 今のはなんだ、と疑問に思うが、おそらくスリの類だろうと直感する。


 自分の振る舞いを客観視したら、隙だらけの一般人のように見えただろうし、当然といえば当然だった。

 しかし、我ながら隙だらけだったと思うが、それでもきちんと反応できたのは自分でも凄いと思う。

 こういう警戒の技術とかは異世界チートの範囲外と思っていたのだが、どうやら違ったようだ。

 いや、もしかしたら僕の秘められた才能が開花して仕舞ったのかもしれない。


「ふふふ……秘められし我が力、いざ解放せん……っ!」


 なんて呟いたら、通りすがりの人から変な目で見られた。

 死にたい。



 ダンジョンの入り口に着いた。

 意外と大きい建物だ。

 この中に入り口があるらしい。


 お城をそのまま小さくしたような感じの建物で、これだけ聞くとラブホみたいな印象を抱きそうだけど、実際に目の前まで来るとそういう印象は抱きにくい。

 古い煉瓦が積み重なってできた建物には、娯楽施設では決して出せない重々しさがあり、見るだけで思わず息を飲んでしまう。


 中に入ると、だだっ広い空間になっており、天井がアホみたいに高く、ところどころに高い柱が立ってるだけで、壁などの区切りは一切ない。

 それぞれの柱には引っ付けられている電球が今は光ってないのは、おそらく外壁の窓から暖かい太陽光が差し込んでくるからだろう。

 若干薄暗くはあるが、気にする程でもない。


 それよりも肝心なのは、建物内の中央にある黒い縦長の石の存在だ。

 あれがおそらくダンジョンの入り口なのだろう。


 僕が異世界に来てからこれまで色々見てきたと思うが、それらの大半はファンタジーに分類されるものばかりだ。

 だが、あの石は違う。

 ファンタジーから離れている。


 どちらかというとSFだ。


 てか、モノリスだ。


 高さおよそ三メートル、横二メートル、奥行三十センチくらいの縦長の黒曜石の中身を幅五十センチほど残して長方形にくり抜いたような外形。


 そんな石ががらんどうの城の中央に置かれている。

 てか、少し浮いている。

 空気的にではなく物理的に。

 たぶん十センチくらい。


 おそらく、そのくり抜いた長方形の穴を通ればダンジョンに入れるのだろう。

 その入り口の前には兵隊さんが立っており、中に入ろうとする冒険者達の行列をさばいている。


 なんというかジェットコースターに並ぶお客さん達と、チケットをもぎったりする遊園地のスタッフみたいな光景だ。


 行列はそれほど長くはない。

 時には途切れてたりする事もある。


 僕は辺りを見渡した。

 入り口の周りには入り口よりもたくさんの人達で溢れている。


 イメージ的には、イベントホールとかでの展示ブースみたいな感じだ。


 だけど勿論、何かを展示している訳ではない。

 冒険者に必要な施設の出店版みたいなのがそこには並んでいる。

 怪我人用のベッドだったり、武器や防具を売ってたり、普通に飯屋だったり、そんな感じ。


「やぁやぁやぁ、もしかして冒険者志望のコかい? うちの店なら良い武器や防具が売ってるよ。品質上等なのに、お値段は驚きの低価格。どうだい? うちで買ってかないかい?」


「あ、いや、遠慮します」


 辺りをキョロキョロしてたら声を掛けられた。

 当然、断る。

 しかしよく考えたら、僕は武器や防具を用意してこなかった。

 でもまぁ、異世界チートの力があるから、いらないと言えばいらないのだが。

 そんな事を知る由もないここらの人達には、手ぶらで来ている僕の事を変な奴だと見てしまうだろう。

 一度気付くと、周囲の人たちの中で数人くらいがこちらに奇異な視線を送ってきている。


「…………入るか」


 あまり他人からの視線が得意ではない僕にとって、これ以上ここに居るのは結構苦痛なので、さっさとダンジョンに潜ることにする。


 手ぶらでダンジョンに入るのを咎められないかと少し不安になったが、幸い咎めてくるような人はいなかった。でも、


「入場料は五〇〇ゴルドだよ。だけど、いいのかい? 何も持ってるようには見えないが」


「あ、はい。大丈夫です。今回は下見と言いますか。とにかく大丈夫です」


「…………そうかい。それなら止めはしないよ。だけど心して聞くんだ。ダンジョン内は危険がいっぱいだ。いくら助けを呼んでも、誰かが助けてくれることもない。自分の力で解決しないといけないんだ。あと、どれだけ恥をかいてもいいから、絶対に生きて帰ってくるんだ。何事においても、自分の命よりも大切なモノはない事を肝に銘じておくんだ」


「分かりました。ありがとうございます」


 とまぁ、そんな感じで入り口前の兵隊さんから心配の声を掛けられつつ、僕は入場料を支払い、モノリスの中を潜る。


 潜ると同時に、別世界にワープする。


 感覚的には地続きのようだが、一応、別の空間に転移しているのが一目で解かる。

 さっきはがらんどうのお城の中だったけど、今は石壁に囲まれた狭い通路の途中に居る。


 そもそもモノリスの裏側には何もなかったのだから、どこでもドアみたいなワープ機能が付いている事は最初から判っていたのだけど。

 それでも実際に体験するとやはり感慨深く、ついつい「おぉ」と驚きの声が漏れてしまう。


 ところで、今、ふと思ったのだけど、あの中身空っぽのお城みたいな建物は、くり抜いたモノリスみたいなのがあるから建てられたのだ。

 あの建物の中にモノリスみたいなダンジョンの入り口を用意した訳じゃなく、入り口があそこに出来たから、それにあわせて建物を建てたのだ。


 なんというか、あのモノリスの技術力はこの世界の文明とは全然違う気がする。

 ワープ機能とか、明らかにこの世界の文明から逸脱している。いくら魔法や魔力があろうとも、それは精々電気エネルギーの代わりになってるぐらいで、元の世界の文明を越えるものは特にない。

 そもそも、最初の印象からして、ファンタジーじゃなくてSFだと思ったぐらいだ。

 今更、そんな事に気付いたところで、得意げにはなれない。


「ま、気付かないよりはマシだ、と思うくらいにしておこう」


 それよりも人生初ダンジョン。

 折角来たのだから、めいっぱい堪能する事にしよう。


 ◆



 堪能した。


 ダンジョンはたくさんの層に分かれており、浅い層には弱い魔物、深くなるにつれてだんだん強くなっていくという、ゲームにありがちな構造となっていた。

 そんで僕は今回、初めて潜った訳だから一層目から始めたのだが、今日だけでなんと三十層まで進む事ができた。

 これは普通の冒険者では到底あり得ない進行速度であり、普通の冒険者なら十層進む為にたくさんの準備を行い、それから一日ではなく数日、時には数か月もの期間を掛けて進むものである。

 これは昨日のデート中、ニサン姉妹の二人共から聞いた情報だ。


 ちなみにダンジョンは最初だけ五層、それ以降は十層、二十層、三十層と、十層ごとにワープ地点が用意されている。

 なので一度、区切りの良い層まで辿り着くと、次からはその層の続きからいけるという仕組みになっている。

 これもゲーム的。


 あとついでに言うと、その十層ごとにはボスがいて、そのボスを倒さないとワープ地点にはいけないという、これまたゲーム的なシステムが設定されてある。

 ただまあ、ゲーム的と言っても、苦労して苦労してなんとか目的地まで辿り着いたと思えば、最後にボスが待ち構えていました、なんて考えると、かなり鬼畜な仕様だと思う。

 これが原因でダンジョンでの死者が大量に出たという話もあるらしい。

 異世界チートの力を持っている僕にはあまり関係のない話ではあるが。


 閑話休題。


 ダンジョン内のワープ施設で一層まで戻って、外に出る。


 モノリスを潜って外に出ると、朝、家を出た時よりも若干薄暗くなってきた光景が待ち構えていた。

 モノリス前に立っていた兵隊さんもシフト制なのか朝の人とは変わっており、僕が出てきた瞬間に

「あん?」

 とチンピラみたいな声を出してきて、若干気分が悪くなった。

 異世界チートの力で気が大きくなりやすいので、思わずカッとなってその兵を殴りたい衝動に駆られたが、我慢する。

 でもって反省もする。


 これくらいの事で怒ってたらキリがない。

 もう少し気持ちに余裕を持とう。


 もしも誰かに喧嘩を売られても、買ったりしないくらいの寛容さを。

 時には逃げる事も視野に入れられるくらいに、平和志向でいこう。


 こんな風に決意しても、どうせ僕みたいな人間はすぐに忘れるのだけど、せめて今日ぐらいは覚えていようと思い、ラブホサイズの城から外に出る。


 時刻は夕暮れ。


 空は茜色に染まり、足元の影がどこまでも薄く伸びていく。


 今からなら真っ直ぐ食堂に向かえば、ご飯はタダで食べられるだろう。


 少し早足になりながら僕は学園へと戻ろうとした。


 と、その時。


 今の今まで忘れていた、奴が再び姿を現した。


そろそろ一章の終わりが見えてきました。あとどれくらいかまではネタバレになると思うので言えませんが、そう長くはありません。僕の脚ほど短くもありませんけど。(街中で自分の姿が映った鏡とか見るとびっくりしますね)。

あと、二章もやるつもりですが、その間しばらく休みをいただくと思います。予めご了承ください。

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