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『王女の騎士様』と『村への帰郷』。



「「「李紗を助けてくれてありがとうございます」」」


クラウディアから李紗の身体について説明を受けて、それを聞いた上でも三人は彼女に感謝を告げた。




それから一週間後、ルナアークから李紗が目を覚ましたと聞いて慌てて駆けつける三人。

寝室に入ってみればそこには確かに起き上がっている李紗。

怜奈が李紗の胸元に飛び込む。

そんな怜奈に戸惑っている李紗。


この時点からなんだか違和感を覚えた。


というか、李紗の口からポロポロと何か零れている。

多分、本人はモノローグのつもりなのだろうが、周りにきちんと聞こえている。


記録映像を見たいという李紗の為にそれを用意出来ないかルナアークに尋ねる虎鉄。

なんと、そういう道具があるらしい。

凄いな王国。

可能だと言われて三人で魔力を込めた。

虎鉄一人で行わなかったのは、色々と視点が偏るから。


あとは色々と覗き見られたくない部分まで細かく見られてしまうと困るから。



映像が今までの状況全てを写し終わる。



「寝ます……!」


そう言って再び布団に潜り込んだ李紗。


「寝かさないわよっ!」


李紗がすかさず布団を捲った。



「ひぃっ、刺される」


記録映像での怜奈を思い出したのだろう。


怖がって怜奈から距離を取ろうとする李紗。


「……失礼な!誰彼構わず刺したりしないし!!」



傍から見たらただの仲のいい姉妹のやり取りだ。


やっとBL風でない、本当の姉妹絡みが見られたと、隣に立っていた竜矢の一言だった。

彼女達のそんな姿を見て喜んでいるところを見ると凄く変態っぽく見える。




「一応の事情は分かった。けど正直私は怖いよ。冒険者なんて仕事、したくない。そうしなきゃ生きていけないことは分かっているんだけどね」


「大丈夫だよ!私達が居るから」


「今私の中にはこの約二年で身につけたらしい技術・技能は魂にも身体にも残ってないの。それらは全部比嘉くんの中にあるから。……こんな私でも大丈夫かな?」


「映像見たでしょ?李紗、最初は失敗ばっかりだったけど、ちゃんと戦えるようになったじゃん。あ、もし不安なら、またギルドの養成所に入る?」


「んん、今のまま一年間も知らない人の所に居るのは辛いかな」


「そっか。じゃあ何か他に良い案を考えないとだね」


「ごめんね、怜奈」


折角、関係を深めることが出来た姉妹の関係がまた振り出しに戻ったようだった。それが見ていてとても歯痒い。


でも、やっぱり李紗の方もあの転移した時そのままという訳ではなかった。

まず強がりを見せない。

嫌なことは嫌と、ちゃんと否定しているのだ。

我慢して自分の気持ちを押し込むようなことはしない。


完全に全てが元通りに思えるけど、きちんと李紗の中にこの一年間で得てきた物が生きている。それが分かって少し安心する。



「なら、俺達がそれぞれの技術や知識を少しでも分ければいいんじゃないか?俺達もリハビリしないといけないわけだし、その時に一緒に特訓したりとか……」


だから虎鉄は気づいたらそんな事を言っていた。


「うん、知らない人のところへ行くよりはそっちの方がいい……。そうしたい」


以外にも素直に返事をしてくれた李紗。

彼女の顔が少し顔が赤くなってるのに気が付いて、ルナアークから言われたあれを思い出して顔を赤らめてしまう虎鉄。


「ありがとね、虎鉄……」


「……!お、おう……」


なんて考えていた時に突然怜奈に声を掛けられて驚く。



そんな二人の様子を李紗が訝しむように見ていたことには二人共気がついていない。


そんなやり取りを見ていた竜矢は微笑みながら各々の師匠に声を掛けに行くのだった。





その夜のこと。


「ねえ、怜奈は比嘉くんの事が好きなの……?」


二人きりになってまず初めにそんな事を聞く李紗。


「はっ……!?そりゃあ、仲間としては好きだし、大事に思ってるけど、本当にそれだけ……!でもなんで急にそんな事を……?」


「うんん、二人が仲良さそうだったから。二人とも本当に信頼し合ってるんだなって」


「それは李紗も同じだったんだよ。それに記憶で見たでしょ……。李紗は虎鉄の事が……」


「好き、だったんだよね。何となく身体は覚えてるみたいでさ。比嘉くんを見るとドキってするの。でもそれは比嘉くんも同じなのかなって。だって私の体を使ってたのは比嘉くんのはずで、つまりそれは……」


「うん。たとえそうだとしても、きちんと気持ちは伝えなきゃだよ」


「うん、分かってるよ。想われている事に胡座をかいてちゃダメだもんね」


「うんうん、そうだよ。私は応援してるから、頑張って!」


「……ありがとう怜奈」


「……なんなら私が恋愛相談に乗ってあげるよ?」


「うん、その時はお願いね」






それから李紗は一月の療養を挟んだ後、虎鉄が提案したように三人のリハビリに便乗する形で訓練を重ねていった。その為の剣も怜奈から一本貰った。

それを用いてリーとベルクーリの指南から剣の腕を少しずつ磨いていく。やはり魔法に対する適性は皆無だった。


クラウディアからは白魔法や回復魔法……ではなく、自らの身体の使い方、労り方を教えて貰った。

剣を使うので、身体に負担が掛かるのは分かり切っている事だったが、そうなりにくい姿勢や動作などを教えてくれる。

某脳筋さんは『とにかく剣を振り回せばいい』くらいにしか教えてくれないので非常にためになった。


ベルクーリから前述した通りの剣の指導と様々な剣の捌き方。そして柔軟な動きを教わる。動きに関してはクラウディアが教えてくれた動き方を応用してすぐに吸収した。

剣の捌き方などは少しずつ覚えていった。


先輩達から基礎を教えて貰った李紗はグレーテルの所に行ってアレクサンドリア流の剣術の指南を受けた。何度か試しに剣を交えてみたものの、やはり流石は騎士。中々勝つことが出来なかった。

やはり、剣の扱い方も振り方も、独特だった。慣れるまでが大変だった。



そのグレーテルだが、李紗が目覚めてから数日経ったあとに城に戻ってきた。

そこで、ルナアークは一から十、全てを話して聞かせた。


「国の事なのに母上に全てを任せてしまって申し訳ありませんでした。あの者達が無事で本当に良かった」


そう言って我が事のように喜んでいた。






三月目に入った頃。先輩方が腕試しもといリハビリの経過観察として私達の相手をしてくれた。


私は教えて貰っている最中のアレクサンドリア流剣術とそれに合わせた動き方を駆使してベルクーリさんに挑んだ。

結果は惨敗。


「まだ身体も慣れないだろうにたった二月でよくここまで頑張ったな」


しかし、ベルクーリさんは私を賞賛してくれた。


折角貰った剣は折れたけど。



そこには『知らない人と過ごすのは嫌』とそんな事を言っていた彼女はもうどこにも居なかった。

記憶が無くなっただけで元通りになりつつある。

そう言えるまでには明るく振る舞うようになった。



李紗は何度か、一緒に寝たいと言ったリィリスと寝たこともある。

腕枕で寝かしつけるも眠った後には必ず抱き着いてくる。

そしてそんなリィリスを『可愛いなあ』と抱き締めて返す。



ある日、いつもと同じように寝室を訪れたリィリスは不意に腰から下げている剣を抜いた。


「これは姉上から頂いた剣で《セイヴ・ザ・クイーン》という名の聖剣。母上の話では召喚獣 《アレクサンダー》の魔力が篭められているそうです。私はこれを李紗さんに持っていて欲しいです」


「えっ、私?怜奈じゃなくて?」


「はい。私は李紗さんに受け取って欲しいのです」


強く懇願される。

理由は分からない。けれどどんな理由があろうと何でもいい。


「……分かった。ありがとう、リィリスちゃん」


そしてわざとらしく傅《かしず》く。


「この剣は私が大切に使わせていただきます、王女様」


そう言って剣を受け取った。


リィリスは破顔した。




五月目に入った頃の事。

それなりに剣術を身につけた李紗は虎鉄の提案で怜奈に頼んで腕試しをしてもらった。


怜奈はそれを了承。


聖剣には聖剣を、ということで怜奈は奥の手として所持していた《エクスカリバー》を使って相手をしてくれた。


少し前に戦ったベルクーリさんと全く同じ動きをする辺り、本当に師弟だな。なんて思いつつまけじと剣術で対抗した。


結果、どちらに軍配が上がる訳でもなくて引き分けた。



「見違えた。グレーテルさんの所に通い詰めてたのは知ってたけど、この期間でここまで扱えるようになるなんて。流石は李紗」


「全然だよ。まだ本気を出してない怜奈に引き分けたんだから」


「確かに《エクスカリバー》の力をフルに使った訳じゃないけど、それでも二年半と四ヶ月の差よ?凄いと思うわ」


「えへへ。そう言われると嬉しいかも」


「……ほんと、李紗が元気になってくれて良かった」


「うん、皆のお陰だよ。本当に」


「そうね。虎鉄、李紗の事気にしてくれてるもんね」


「べ、別に比嘉くん限定で言ったわけじゃ……」


「あはは、分かりやすいなあ」


「……もう、怜奈のばか」


「ごめん、ごめん」


「……はぁ。でもそうだよね。虎鉄くん、すごい私の為を思って動いてくれてる気がする。私、本当に大事にされてるな」


「うん」


「……私も同じくらい彼を想いたい」


「あの時の質問を返すわ。『李紗は虎鉄の事が好きなの……?』」


「うん、好き。……大好き」






六月経った頃、四人のリハビリが終わった。


ダリ村へ帰郷する日取りが決まる。



皆の各々、準備を始める。


「悪い。俺はここに残るぜ」


ベルクーリだった。


李紗との手合いで見た剣術に魅力を感じた彼は残ってアレクサンドリア剣術を学ぶ事にしたらしい。


「私も残ります」


クラウディアだった。


死んだ肉体をも快復させてみせた医術士の彼らに教えを乞うため。

城の復元に手を貸せるという名目もある。


そして、もう一つ、気がかりがあるため。


「俺も残るぞ」


クジャもだった。


クラウディアから何かを頼まれたらしく一緒に残ることになった。彼女は上位の召喚魔法を扱える彼が必要らしい。


四人のリハビリが終わるまで滞在期間をのばしたのは、上級冒険者三人が残るため、帰路で何かあってもきちんと各々で戦えるようにとの考えからだった。






李紗は城外に新しく出来た離れに虎鉄を呼び出した。



「私は貴方が好きです。……大好きです。ここ数ヶ月、貴方が私の事をとても大事にしてくれていたことを知っています。私は同じだけ貴方を大事にしたい。だから……」


一度言葉を飲み込む。


そしてハッキリと告げるのだった。


「だから、私と付き合ってくれませんか」


「……ん、こちらこそ」



そんな照れ照れな了承の返事を受けた李紗は感極まって涙を零しながら虎鉄を抱き締めた。そして気持ちを受け取った虎鉄は抱き返した。




そんなやり取りを影から見守っていた怜奈がひっそりと泣いていた。竜矢はそんな怜奈を抱き締めた。


まるで我が子の恋愛成就に喜ぶ両親みたいだった。



そして別の方向からその光景を見ていたリィリスは抱き合う二人を見て喜ぶと共に複雑な気持ちを抱えていた。





そうして半年以上アレクサンドリアに滞在した一行。


遂に帰郷する日がやってきた。



この頃には城周辺に幾つか建物が立っていた。そのくらいには復興も進んだ。




見送りにはルナアーク、リィリス、グレーテルの三人が来てくれた。



「ありがとうございました。私達を助けてくれて」


李紗を筆頭に他三人も頭を下げて感謝を述べた。


「いえ、私こそ。貴方達を助ける事が出来て良かった生きていてくれてありがとう」


泣きながらそう言ったルナアークを四人で抱き締めた。




ルナアークは四人に聞こえる声で懇願した。


「そんな皆さんにお願いがあります。皆さんにはリィリスを連れて行って欲しいのです」


ルナアークはリィリスの頭をそっと撫でながら「改めて自己紹介なさい」と言った。




「アーリア・フォン・アレクサンドリアです。私はもっと皆さんのお役に立ちたいです。なのでどうか私を連れて行ってくれませんか」


リィリスはこの国の第三王女、アーリアだった。


虎鉄は何となく気づいていた。

李紗はリィリス本人から聞いていた。

故に知っていた。


だが、竜矢と怜奈の二人は知らなかったらしい。驚いていた。


「あ、でもよく見たらリィリスの顔、確かにルナアークさんに似てるかも……」


「確かに。なんで気づかなかったんだ……」


そう言って納得した二人。


ルナアークは口を押さえて笑っていた。




「うん……よろしくね。リィリスちゃん」


李紗が笑いながらリィリスに手を差し伸べる。


リィリスが嬉しそうに李紗に飛びついた。



そんなリィリスを皆が歓迎した。

そして歓迎しつつ怜奈は「……そうなっちゃったか」と頭を抱えた。

虎鉄を肘でどついた。

「負けるなよっ」という意味を込めて。





「もし君が良ければだが、このまま私とアレクサンドリアで暮らして欲しい。さすれば君に幾らでも剣術を教えることは出来るし、私は君を守ってあげられる。だから……」


「師匠、すみません。私は皆と一緒に居たいのでアレクサンドリアに残ることは出来ません」


「なら、今じゃなくても……」


遠回しに「師匠とは付き合えません!」と言ったつもりだったが、粘るグレーテル。


「すみません!もう心に決めた人が居るので!」


「な……!?」


そんな彼に見せつけるように李紗は虎鉄の腕に抱き着き、告げた。

突然抱き着かれて赤面する虎鉄。


「そうか、それは残念だ」


あまり、ショックを感じていないように告げたグレーテル。

もしかしたら李紗の口からきちんと「彼氏出来ました!」を聞きたかっただけなのかもしれない。



「……あ!ご、ごめんなさい」


「恥ずかしがるくらいならするなよ……。嬉しかったけど」


そんな彼の納得の返事を聞きつつ、李紗は自分がしてる事に気づく。真っ赤に顔を染め、慌てて離れつつ虎鉄に謝った。


それに照れながら返す虎鉄は赤面する李紗の頭をポンポンした。



「あ、でもお世話になりました。師匠から学んだ剣術。もっともっと鍛えて強くなってみせます!」


「ああ、期待してるよ」






ルナアークとグレーテルに泣きながら手を振るリィリス。


アレクサンドリアに残ると言った三人以外の面々で帰路を目指すのであった。






虎鉄達の仲間にリィリスが加わった。


リィリスは白魔法を全て使える上、召喚魔法も使う。

《カーバンクル》や《フェンリル》、等の中位種に限られるが。




その晩は結局野宿となった。


李紗は初めての野宿に興奮していたが、先輩方とこれまた初めての酒を煽ってからは静かになった。


夜な夜な、眠れないらしいリィリスと少し話をした虎鉄。


「李紗さんは私の騎士様です」


彼女はそんな事を虎鉄に零していた。


リィリスは、華麗に剣舞を見せる李紗の姿に亡くなった姉達を重ねたらしい。

元々儀式云々の前から二人支え合っていたことも影響しているのだろう。


いつだったか李紗がしたらしい騎士叙勲の真似事が結構効いてるのかもしれない。





李紗がそんな風に誰かに慕われていることに、彼氏として仲間として誇らしく思ってしまう。


あそこで酔い潰れているのがそうだなんて、ちょっと考えたくないけど。



「だから私、虎鉄さんには負けませんから」


おっと、これはどういう展開だろうか。


もしかして、リィリスは李紗の事をそういう目で見てるのかな。

なんて、思ってしまう虎鉄。


少し面倒くさいことになりそうだと、遠くを見つめた。




「うぅ……、頭痛い……」


翌日、李紗は二日酔いを起こしていた。


そして、『怠いから歩きたくない』と言って虎鉄におんぶをせがんでいたり、なんとか歩き始めたと思えば彼の腕にしがみついていたり。


元々甘えん坊を拗らせていたのだからそれが発現し始めているだけかもしれないが。



心臓が持たないからやめて欲しい……。



「いい加減にしなさい……!」


「……あぅ」


怜奈のチョップが李紗の頭に刺さった。


「辛くても自分で歩く!甘えない!」


「…………は〜い」


「ハイは伸ばさない!」


ほんと、どちらが姉か分かんねえな。


「ありがとうな、怜奈。もう少しで心臓爆発するところだった」


「あまり甘やかしちゃダメだから」


「まあ適度にな」


「もう、甘いんだから」



そんなやり取りをしていると後ろから鋭い視線が飛んでくる。


リィリスだった。


その目は『李紗さんというものがありながら、怜奈さんにまで手を出すのか』と言っていた。


鬼気迫るものがあった。


「ひぃっ……」


ついそんな情けない声が出てしまう。


けど横から李紗が歩いてきて『リィリスちゃん、いい子いい子』と頭を撫でられると顔を和ませていた。


「なあ、聞いてくれ。リィリスがな李紗を狙ってるっぽいんだ。そして俺を目の敵にしている。どうすればいいと思う?」


と、怜奈に恋愛相談的なものをした。


「……はあ。知ってたわよ。でもそれ、虎鉄がリィリスも落としちゃえば済む話じゃない?(棒)」


しかし、凄くテキトーに、しかも棒読みで返されてしまった。


「それは無いだろ!」


「じゃあ、自分で何とかしなさいよ!」


呆れ顔で睨まれてしまった。


「ほんと、騒がしいなお前ら」


竜矢まで呆れ顔である。

流石想い合ってる二人。心做しか呆れ顔がそっくりだった。





そんな風にやいのやいのと騒ぎつつ、先輩方に少し注意されつつ、村までの道を進んで行く一行。




アレクサンドリアを離れ、一ヶ月ほど掛けてようやく帰り着いたギルド。


「おう!よくぞ帰ってきた」


ギルマスが出迎えてくれた。



それから宴会だと騒ぎ始め、俺たち四人はアレクサンドリアでの事とリィリスの事を話した。


「そうか、色々と大変じゃったな」


「ええ、本当に。あ、初めまして!李紗と申します!」


その場の雰囲気で返事をして、初見だった!と自己紹介をする李紗。


見知った子に初めましての挨拶をされてしまったギルマスは、少し複雑そうだった。




宴会が始まった。


今回も豪勢な料理とお酒が沢山出てきた。



「皆の無事を祝って、乾杯!」



そんなギルマスの掛け声と共に皆一斉に杯を挙げた。


李紗がよく食べる。

帰途の野宿でお酒を飲んで二日酔いを起こしたことを思い出した彼女は酒を飲まないと決めていた。

リィリスもいるし。

けれど、その我慢は十分と続かず。

結局飲み始めてしまっていた。


俺も仕方ないから一緒に酒を煽った。


竜矢と怜奈は飲み比べを始めた。

当然、怜奈の圧勝だった。


そんな二人を後目に酒を飲みながら李紗を見つめた。


「虎鉄くん、どうしたの」


「いや、薄紫色の髪、移っちゃったなって改めて思ってさ」


「その代わり、虎鉄くんは黒紫色になったね」


「そうだな。俺、自分の髪色がずっと嫌いだったんだ。だからその……好きな人の頭がそんなで、最初は凄く戸惑ったんだけど……」


「どう、似合ってる?」


「ああ、凄く」


「えへへ、嬉しい。虎鉄くんがこの色を嫌いにならなくて良かった」


「ほんと、今更元の髪色に戻りたいなんて虫が良すぎるよな」


「じゃあ、そんな虎鉄くんは、同じくらい私の髪色だった黒紫を好きになってくれればいいよ」


「……ん、そうする」


そう言って互いの髪に触れながらそんなことを話す二人。


そしてその手を動かして互いの頬に触れ合った。


「えへへ、大好き」


「……俺も、だ」






「……ねえ、私達。負けてる気がするんだけど」


「そうだな。リア充オーラプンプンだな」


「嬉しい気持ちはあるけど、こうも見せつけられるとね」


「自分達が寂しく思えるな」


「私達もリア充なのに!」


「俺達もリア充なのにな」



「ああ、もう飲もう飲もう。ビールのお代わり!」


「俺もだ!」


「こんな事なら恋人関係の解消なんてするんじゃなかった」


「まあ、二人で決めたことだから仕方がないよ。それとも付き合い直すか?」


「そうしたいけど、それじゃあ結局パーティはバラバラになると思うの。だからやるんだったら……」


「二人の関係を解消する、か?あの二人を見てそんな事出来る?」


「…………無理」


「だよなあ。じゃあ」


「そうね、また付き合いましょうか」


「おう!よっしゃ……!」






「私だけ除け者なんですか……」


二人一組でイチャつき合っているため、リィリスは話に混ざれない。


「そんな事ないよ〜、おいで〜」


寂しそうなリィリスを見て、酔っ払い李紗が手を差し出した。

リィリスの手を取ると、そのまま彼女を膝の上に乗せる。

そして、尚もお酒煽る李紗。


けれどリィリスフィルターはそんなことでは曇らない。


「李紗さん、綺麗です」


「えへへ〜、ありがとう。リィリスちゃんも可愛いよお〜」


李紗は酒を飲みつつ、リィリスを褒め撫でる。



虎鉄はちょっとしたヤケで酒を煽る。

折角、良い雰囲気だったのにリィリスに邪魔されてしまったからだ。

竜矢と怜奈がその事で虎鉄をからかう。





今夜も賑やかなパーティだった。





宴会が終わり、今度は五人で手を繋いで帰る虎鉄達。


帰宅してみれば、ホームが改築されて新しくなっていた。


間取りこそ変わらないものの、まるで引っ越してきたかのような気分だった。


そんなホームに五人で雑魚寝をした。もはや皆で飲んで帰ってきた時の定番だった。




「なんでまたこんな事に……」


翌日、相変わらず飲んだ記憶が残らない怜奈が一番に起きて、三人を叩き起して昨晩の話を聞く。


宴会時の話を聞いた怜奈はニマニマしつつ李紗をからかっていたりした。


「よくもまあ、竜矢の目の前でそんなものを見せてくれたわね!でもお陰で竜矢とまた恋人になれました!ありがとうございます!」


「……いひゃいよ。れいあ」


ほっぺたぷにぷにの刑だった。




ホーム内で同居している事もあり、恋人とは言っても『決められたルールを守って節度あるお付き合いを!』を守らなければならない。



「私は別に。まだそんな、こと、する気ないから大丈夫」


「まだってことはいつかはするってことでしょ?それは困る」


「大丈夫。少なくともここで、その、子どもを作ったりはしないから」


「よし、言ったわね。言った以上はきちんと守りなさいよ」





けれどその次の朝

李紗が寝惚けて虎鉄の布団に潜り込んで寝ていたことから、怜奈は李紗の言葉を信じなくなった。


リィリスをロフトで寝させるつもりだったのだが、やめ。

李紗と怜奈とリィリスの三人は居間で。虎鉄と竜矢がロフトで寝る事となった。



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