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神の山の民  作者: 夢之中
33/34

決戦

公開処刑当日の夜が明ける前、パインは宿を密かに抜け出すと、

闇に紛れて城壁の外へと向かった。

宿にはアルド一人が静かに瞑想していた。

日の光が窓を照らすとアルドは静かに目を開き、

そして、ゆっくりと立ち上がると部屋を後にした。

宿を出るとそこにアマゾネスの族長達が立っていた。

アルド:「族長、何故ここに?」

族長:「シェリルから話は聞いた。

   我々は、もうアマゾネスではない。」

アルドはその言葉を聞いて全てを察した。

アルド:「そうですか、分かりました。」

アルドは族長に耳打ちすると救出作戦の説明を行った。


族長:「なるほど、我々のやるべきことは分かった。

   それでは、公開処刑の場へ向かうとするか。」

そして、全員そろって歩き始めた。


それは、城壁の外にあった。

兵士達が巨大な円を描くように並べられており、

その中央には木でできた処刑台のようなものが配置されていた。

まだ、時間があるというのに、多くの見物人もいるようだ。


アルド:「それでは手はず通り。」

そう言うと、2人が1組となり、ばらばらに散っていった。

アルドは族長と同じペアとなった。


アルドは所定の位置に来ると、空を見上げた。

海側から山側へ向けて雲が大きく動いている。

風上の方の空には黒雲が覆っていた。

アルド:(昼頃には雨が降りそうだな。)

アルドと族長は地べたに腰を下ろすと、静かに瞑想を始めた。


しばらくすると、城門から兵士を引き連れてバスラが現れた。

バスラ:(ついにパインを倒すときがやってきたか。

    あの試合のことは思い出すだけで腹が立つ。

    目に物見せてくれるは。)

バスラは城壁を背にして一段高くなった立ち台の上に上がると

兵士達に命じて多くの槍を持ってこさせた。


バスラ:「準備も整ったな。

    それでは主役の登場といこうか。

    おい、囚人を連れて来い。」

兵士:「了解しました。」

兵士がその場を後にし、しばらくすると荷台が檻になった

馬車が現れた。

見物人のあいだでどよめきが起こった。


その声に反応し、アルドはゆっくりと目を開ける。

馬車と檻が目に入った。

その檻の中には人が横たわっていた。

目を凝らしてみると、ゼットと思われた。

馬車はそのまま兵士達の間を通り抜けると中央へと向かい

円の中心へ到達しそうな距離まできた。


アルド:「よし、作戦開始だ。」

族長:「本気で行くから覚悟しろ。」

すると、突然族長がアルドに向かって大声で怒鳴った。

族長:「貴様、愚弄するきか?」

そして、アルドに殴りかかった。

突然の喧嘩に見物人はそこを離れるように移動していく。

止めに来た兵士達をも殴り倒すと争いを拡大していった。


バスラは、立ち台の上で馬車の移動を眺めていた。

馬車が所定の位置へ到着したとき、その目線の奥で

見物人が大きく移動しているのを確認した。

原因の中心を凝視すると、2人が争っているのが見えた。

バスラ:(ついに動き出したようだな。)

バスラは横を向き兵士達に指示を与える。

バスラ:「すぐに、収拾するのだ、殺してもかまわん。」

視線を戻そうとしたとき、別の場所で争いが始まっているのが

見えた。

周りを見回すと、その争いの数はいたるところで起きていた。

バスラ:「まさか、陽動か?」

檻の方へと目を向けると檻の上に立っている者を見つけた。

バスラ:(いったいどこから?)

同時に立てかけてあった槍を手に取ると、力を込めて

その者に向けて投げた。


すこし前、パインは空の上にいた。

そして、檻が円の中心に停止したタイミングを見計らって、

飛行のイメージを解除した。

そして、自由落下に身を任せる。

ある程度落下したところで、減速するイメージを思い浮かべる。

落下速度が急激に減速する。

そして、檻の上に着地すると、すぐに意識を集中した。

自分を中心に檻の回りに風が舞い始めた。

そして、目の前に見えたバスラが槍を投げたのが見えた。

パインは、風を出すことに集中しすぎたため、

目の前に近づいてくる槍を避けるタイミングを逃していた。

パイン:(まずい、間に合わない、、、)


アルド達はその時兵士達と戦闘中だった。

止めに来た兵士達を殴り倒すと、それを見ていた兵士達が

つぎつぎと加勢に来たため、乱戦状態となっていた。

アルドがハンマーを振り回すと、複数の兵士が吹き飛び

戦闘不能状態となった。

その姿は兵士達から見ると鬼神そのものであった。

円の内側へと移動すると、徐々に檻へと近づいていく。

戦いながら檻の方を見ると丁度パインが降り立ったところだった。そのとき、視線の先にバスラが槍を投げようとするのが見えた。

狙いがパインだと知ると、とっさに兵士が持っている盾を奪い

槍の軌道上に投げた。

次の瞬間、槍と盾が激突した。

槍は盾を貫いたが、軌道を変えるとパインの足元に突き刺さった。

パインは横目でアルドを見ながら意識を集中していく。

風の強さが十分な強さになると、次の行動へと移った。


バスラは、槍の行方を確認していた。

檻の周りには、すでに竜巻の様に風が舞っていた。

バスラ:「くそ、はずしたか。

    邪魔者の排除が先か。」

そう言うと両手に槍を持ち、あたりを見回した。


パインは檻の天井に付いた蓋を開け、檻の中に飛び降りた。

ゼットは動かない。

パイン:(生きていてくれ。)

そして、ゼットの頬にそっと触れてみた。

暖かかった。

パインはすぐに目隠しをはずすと、他の拘束を解いていく。

そして最後の拘束を解いている最中にゼットが目を開けた。

ゼットは、パインを見つけると口を開いた。

ゼット:「パイン、すまない。」

パインはその声を聞いて安堵した。

パイン:「何を言うんだ、友達だろ。」

パインは手を休めることなく拘束をはずした。

パイン:「そんなことより、今は脱出が先だ。

    動けるか?」

ゼットはゆっくりと起き上がると体を動かした。

ゼットは、体中が痛かったが動かないところが無いことを確認

すると答えた。

ゼット:「ああ、動かないところはない。

    大丈夫そうだ。」

パイン:「よかった。

    すぐに脱出しよう。」

そして2人は、檻の上に上がるとバスラとは逆の方向の風の壁に

穴を空けるとそこから外へとでた。

周りを見回すと、アルドとアマゾネス達がパインの元へと

集結しているところだった。

パインはアマゾネス達が参戦していることを

このとき初めて知った。

「なぜ?」と考えようとしたが、今はその時ではないと思い

その考えを押さえ込んだ。


バスラは苛立っていた。

邪魔者を排除するつもりで多くの槍を遠投していたが、

動きが早く的確に狙うことができないでいた。

兵士達が邪魔で狙いにくかったのも原因のひとつだった。

そして、バスラは一つの結論へとたどり着いた。

バスラ:(そうか、何でこんな簡単なことに

    気がつかなかったのだ。)

そう考えると、近くの兵士達に槍を運ぶように指示を出すと、

次々に投げた。


アマゾネス達も善戦していた。

老いたとはいえ、その動きは常人の動きを越えていた。

複数の兵士達を手玉にとり、そして1人、また1人と確実に

戦闘不能状態にしていった。

そして、当初の作戦通りにゆっくりと、バスラから見て反対側の

檻の近くへと回り込んでゆく。

応戦しながらパイン達が風の渦の中から現れるのをみた。

そして、胸を撫で下ろした。

次の瞬間、腹部に焼けた火箸を差し込まれる様な感覚を感じた。

そして、兵士ごと倒れこんだ。


パインはアマゾネスが兵士ごと槍に貫かれるのをその眼で見た。

パインがそれを呆然と見つめていると。

その先で、また一人のアマゾネスが兵士ごと串刺しになった。

それを見ていたアルドが叫ぶ。

アルド:「渦の後ろに回りこめ!!」

その声で、アマゾネスも兵士達も我先にと渦の後ろへと

逃げ込もうとしたが、容赦なく降り注ぐ槍の雨に敵味方関係なく

貫かれて行く。

パインはそれを呆然と見つめていた。


作戦は次のようなものだった。

アルドが陽動し、敵の注意を引く。

この時、パインはアマゾネスの参戦は知らなかった。

パインは上空で待機し、檻の上に降り立つ。

そして、風によって檻を守る。

ゼットを救出後、バスラの反対側へと脱出する。

弓矢などの遠距離攻撃は乱戦に持ち込めば、

味方に当たることを考えるとありえないとの結論に達していた。


ゼット:(バスラ、なんてやつなんだ。)

前方の風の渦が突然無くなった。

ゼットがパインの方を見ると、パインの顔がみるみると

形相を変えていくのが分かった。

バスラを擬ししていた。

右手に持った魔晶石が光輝くのが見えた。

そして、パインの眼が赤く充血し、そして血の涙を流した。

ゼットは血の涙を見た瞬間フラッシュバックした。


それはゼットが幼かった頃の記憶だった。

ゼットは村の外れの崖の傍にいた。

何故ここにいたのかは思い出せなかった。

周りには数人の大人がいた。


上を見上げると日の光が降り注ぎ、まぶしかった。

大人たちは畑仕事をしているようだった。

そのとき、地面が大きく揺れた。


エンクローズ村では地震はそれほど珍しいものではなかったが、

今回の揺れはいつもより大きかった。

ゼットは、その場にへたり込んでしまった。

揺れが収まり、大人たちが近づいてくる。

その時、一人の大人が叫んだ。

大人:「まずい、上を見ろ!!」

大人たちが上を見上げるのが見えた。


ゼットが崖の上を見上げると、パラパラと小石が落ちてくる

のが見えた。

壁に亀裂が入り今にも崩れそうだった。


1人の大人が近づいてくる。

そして、ゼットの元に来ると立ち止まると同時に

自分の周りが暗くなった。

上を見上げると、巨大な岩が落ちてくるのが見えた。


次の瞬間辺りの音が掻き消えると同時に、大人の手が光輝いた。

しばらくすると、辺りが急に明るくなった。

そして何かが砕ける散るような音がした。

自分の周りを避けるように、小石がぱらぱらと降ってくるのを

眺めていると、傍にいた大人がゆっくりと倒れるのが見えた。

倒れた大人はピクリとも動かない。

周りの大人たちが近づいてくる。

そして、倒れた大人の周りに集まってきた。

ゼットは突然抱きかかえられた。

その時、倒れた大人の顔が見えた。

その顔は、紛れもなくパインの父親だと確信した。

そして、その目からは赤い涙が流れていた。

大人の手で目を覆われるとその先のことは思い出せなかった。

そのあまりにも強烈な恐怖のため、

記憶の底に封印されたのだろう。

この瞬間まで、思い出すことは無かった。


ゼット:(そうだ、パインの父親はあの時、死んだのだ。)

ゼットは、全て思い出した。

そして、パインに抱きつくと、大声で怒鳴った。

ゼット:「やめてくれー!!」

パインにはゼットの声は届かなかった。


バスラは、何が起こっているのか判らなかった。

突然、地鳴りが鳴り響いたと思うと、兵士の持っていた無数の

矢が空中に浮いているのを目にした。

次の瞬間、その矢が自分目掛けて飛んできたのだ。

とっさに床においていた盾を手に取ると、目の前に構えた。

矢は、むなしく盾にはじかれて落ちて行く。


アルドは、それを呆然と眺めていたが、盾を構えるバスラを

見ると猛然とバスラに向けて走った。


その時、アルドの後ろではバスラが投げていた槍が浮かんでいた。アルドは走った、そしてバスラの斜め横まで来ると、

巨大なハンマーを振り回し始めた。

そしてハンマーを投げた。


バスラは盾に身を隠しながら笑っていた。

バスラ:(この程度の攻撃、この盾で防ぎきれる。)

そう思った瞬間、金属と金属がぶつかる音がしたと当時に、

盾が吹き飛ばされた。

目の前には、無数の槍が飛んできていた。

その1本はバスラの頭目掛けて飛んできていた。

バスラは、反射的に後方へと飛んだ。

この時、バスラは逃げなければ、苦痛を感じずに死ぬことが

出来ただろう。

しかし槍はバスラの逃げる方向へとホップした。

そして、その体を貫いた上、城壁へとめり込んだ。

バスラは複数の槍で貫かれながら城壁に磔になった。


次の瞬間、パインの持っていた魔晶石が真っ二つに割れた。

同時に浮いていた槍が下へと落下した。

そして、パインが力なく崩れ落ちた。

ゼットは倒れるパインを受け止めると、静かに横たえた。


アルドは、バスラに止めを刺そうとバスラに近づいた。

その時バスラはまだ生きていた。

バスラは、アルドを見ると息も絶え絶えに言った。

バスラ:「いっ、いずれ、、、サラフィム殿が、、お前達を、、、

    倒す、、、だろう、、、」

そして、バスラは絶命した。

バスラの死を見ていた兵士達は、恐怖し、

そして戦意を失っていた。


アルドはパイン達の元へ戻り、パインを抱き上げると、

アマゾネスの村へと歩き出した。

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