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神の山の民  作者: 夢之中
32/34

ゼットが休みを終え、宮廷に戻ると警備長から警備員の組合せ

についての変更を告げられた。

説明によると、この1週間で各班の状況を確認出来たので、

班編成を変更するとのことだった。

ゼットとアイラの組合せは3週間後に連続で5日間だった。


ゼットとアイラはこの件について話し合っていた。

ゼット:「あの部屋を調べた直後の編成変更。

    書棚を調べたのがばれたのか?」

アイラ:「どうだろう?

    犯人が我々だと判ったら、捕まえるんじゃないかな?

    情報が漏れるのは問題が大きいからね。」

ゼット:「確かにその通りだな。

    とすると、まったく気が付いていないか、

    気が付いているが犯人を特定できていない。

    というところだろう。」

アイラ:「私もそう思うよ。」

ゼット:「最悪の場合を考えて、警戒して動くことにしよう。」

アイラ:「そうだね。そうしよう。」


そして1週間がたった日の夜。

サラフィムが私室で書き物をしていると、バスラが部屋を訪れた。

バスラ:「例の品、ついに手に入れました。」

サラフィム:「おお、ついに手に入ったか。」

バスラ:「こちらでございます。」

そう言うと、1冊の本と複数の指輪、首飾りを差し出した。

サラフィム:「しばらくこの本を読ませてもらおう。

      すまんが、下がっていてくれ。」

バスラ:「わかりました。」

バスラが部屋をでると、サラフィムはその本を捲り読み始めた。


次の日、バスラはサラフィムの私室へと呼び出された。

サラフィム:「本を読んで判ったことがいくつかある。

      まず、魔法の元となるのはこの石らしい。

      この石と同じものがやつらの体内にあるようだ。

      そして、指輪や首飾りの石を持つことによって、

      その力が大きくなる。

      精神集中によって発動され、

      その効果は範囲のようだ。

      その距離が近いと発動範囲は大きいが、

      距離が離れるにしたがって、範囲が狭くなる。」

バスラ:「なるほど、色々と策はありそうですな。」

サラフィム:「石が体内にあるということは、

      もし人に直接埋め込んだら魔法が使えるように

      なるのか?

      色々と試したいことも出てきた。

      バスラ、なんとしても捕まえるのだ。

      意識をなくしてしまえば反撃をされることはない。

      奴らの力を手に入れることができれば、

      我々が世界を手中に収めることができるのだ。」

サラフィムは何か呟きながら、バスラに背を向けると

歩き回りながら何かを考えている様子だった。

バスラ:(これは、面白い展開になってきた。

    また戦えるということだな。)

バスラは将軍と言う地位は手に入れたが戦えないことに不満を

感じていた。

バスラ:「わかりました。」

サラフィムの返事がない。

どうも、自我の世界に入ってしまったようだった。

バスラは、しかたなく部屋を後にした。


バスラは1人の警備兵に目星をつけていた。

侵入が発覚した直前に不審な行動をした者は何人か

いたが、アマゾネスと同じ班であったのは1人だった。

アマゾネスの気質から考えて自らこのような行為に及ぶことは

考えにくいが、パインが裏にいることを考えると、それを排除

することは出来なかった。

バスラ:(やはり、拘束する場合は2人同時か?

    いや、万が一にもアマゾネスが無関係だった場合を

    考えると、アマゾネスとことを構えることになる。

    これは傭兵全体を敵にまわす事と同じだ。

    やはり、これは極力避けるべきだろう。)


そして、2週間が流れゼットとアイラが同じ班になる日が

やってきた。

最初の2日間は、ゼットも警戒を緩めていなかった為、

サラフィムの私室の調査を断念していた。

そして、3日目にサラフィムの私室の見回りを終え、

外に出たとき。アイラに耳打ちした。

ゼット:「アイラ、今日はやるつもりだ。

    前回と同じでいこう。」

アイラ:「わかった。気をつけてね。」

そう言い、しばらくアイラと一緒に歩くと、

ゼットが「すまないが、小用にいかせてくれ。」と言った。

アイラはそれを承諾し、1人で巡回を進めた。

ゼットは、サラフィムの私室へと戻ると中を物色し始めた。


アイラが西の塔の階段を登っていくと、そこには警備長が

1人で立っていた。

アイラ:(まさか、嵌められたの?

   とりあえず、手はずどおりにするしかないか。)

アイラは、ゼットが小用に行った事を説明した。

その後、警備長は色々と質問をしたが、

最初に「これ以上は答えられない。」と言って無言を通した。

嘘を嫌うアマゾネスが秘密を守るために使う言葉だった。

それを知っていた警備長は質問をやめ、バスラの元へと

連れて行った。


その頃、ゼットは物色を終え、サラフィムの私室を出た。

そこで目にしたのは、玉座の間を埋め尽くす兵士達だった。

後方には、弓矢を構えている者達もいる。

ゼットは、物色中の音が外に聞こえないようにしていたが、

それが裏目にでたのだった。

次の瞬間、突然頭に衝撃を感じると意識を失った。

兵士がゼットに近づくと、ゼットの持ち物を調べ始める。

そして右腰の袋の中を見ると「ありました。」と言った。


確保の報を受けると、バスラはすぐにサラフィムの元に

報告にいった。

サラフィム:「そうか、捕まえたか。

      手足の拘束と目隠しを忘れるな。

      魔法は、イメージのようだからな。

      見えないものに魔法の効果は現れん。

      魔晶石さえ奪えば、魔法の効果もそれほど

      遠くまで及ばないだろう。

      ゼットというやつを囮にしてパインをおびき寄せ、

      2人とも始末しろ。

      わしは明日から、しばらくの間バルディアを

      離れることにする。

      あとのことは、お前にまかせる。」

バスラ:「承知しました。」

バスラは、サラフィムの私室をあとにするとゼットの元へと

向かった。


ゼットは目隠しをされ全身を拘束された上、四方を鉄格子で

囲まれた檻の中にいた。

ゼット:(うっ、頭が痛い。)

ゼットは体を動かそうとしたが、まったく動かなかった。

ゼット:(体が動かない。いったい何が?)

ゼットは意識を失う前のことを思い出そうとした。

ゼット:(そうか、部屋を出たところで殴られて、

    気を失ったのか。)

ゼットが様々な事を考えていると、突然声がした。

バスラ:「どうやら目が覚めたようだな。」

声が反響してどこから話しているのか判らなかった。

ゼット:「バスラ?」

バスラ:「お前には、もうひと働きしてもらう。

    パインをおびき出す囮としてな。」

ゼット:「パインがお前ごときに遅れをとる事は無い。」

バスラ:「その格好で、威勢がいいものよな。

    さて、お前の処刑は明後日の昼に決まった。

    辞世の句でも考えておくことだ。」

そして、バスラが離れていく足音が耳に残った。

ゼット:(パイン、、、すまない。)

間もなくして、ゼットの公開処刑の告知が行われた。


アイラはバスラの元でも沈黙を通していた。

これ以上質問しても意味が無いと考えたバスラは、しかたなく

アイラを解放した。

アマゾネスと事を構えるのは危険と判断したためだった。

アイラは官舎に戻り、ゼットの公開処刑のことを知ると、

この件をすぐに手紙にしアルドの元へと飛ばした。


パインとシェリルは、バルディアの王宮前でこの件を知り、

そして宿に戻ると対策を検討し始めた。

パイン:「ゼット、、、こんなことになるなんて、、、」

シェリル:「いまさら悔やんでも仕方が無い。

     どうやって救出するかを考えよう。」

パインは少し悩んだが、もう進むしか道が無いと結論付けた。

パイン:「ああ、そうだな。」

シェリル:「ゼットが捕らえられている場所がわからない以上

     明後日の公開処刑で救出する以外ないだろうな。

     わざわざ公開処刑にするということは、お前を

     おびき出したいと考えているのだろう。

     場所も城壁の外側ということは、決戦を望んでいるの

     かもしれん。

     さらに一般の人間を巻き込んだ場合、

     村の討伐の口実にされかねない。

     捕まえたいのか、あるいは殺したいのか?

     いずれにせよ罠が仕掛けられていると考えた方が

     いいだろう。」

そして、夜遅くまで救出作戦が検討された。


次の日の朝、突然部屋の扉をノックされ、2人はベットから

飛び起きた。

そして、シェリルに後方の警戒を任せると扉に向かって

声をかけた。

パイン:「誰だ?」

アルド:「俺だ、アルドだ。」

その懐かしい声はまさしくアルドだった。


パインは、注意しながらゆっくりと扉を開いた。

そこには、険しい顔をしたアルドが立っていた。

パインは廊下の警戒を怠らないようにしながら、

アルドを部屋に招き入れた。


アルド部屋に入るなり小声で呟いた。

アルド:「いったい何が起こっているんだ?」

シェリル:「それを話す前に何故ここに来たのかを教えてくれ。」

アルドはここに来た理由を手短に説明した。

それは、アイラからゼットが捕まり公開処刑されることが

書かれていた手紙を受け取ったためということだった。


シェリル:「そうか、手紙を出せたということは、

     アイラは無事なようだな。

     パイン、もうアルドにも全てを話して仲間になって

     もらうしかないだろう。」

パイン:「それしかなさそうだな。」

そう言うと、パインは3人を取り囲むように音を遮断した。

アルドは突然いままで聞こえていた音が聞こえなくなったため

困惑したが、シェリルが「だまって聞いてくれ」と言ったため、

それに従った。

パインは、今までのことを包み隠さずに説明していった。


アルド:「なるほど分かった。

    手伝ってもいいが、いくつか条件がある。」

パイン:「それはなんだ?」

アルド:「1つ目は、これ以上アマゾネスを巻き込まないこと。

    2つ目は、シェリルを村に返すこと。」

シェリルはすぐに反応した。

シェリル:「まて、2つ目の条件は飲めない。」

アルド:「いや、これは絶対だ。」

シェリル:「パイン、お前も何とか言え。」

パインは少し考えると、「わかった」と言った。

シェリル:「!!」

シェリルは、パインを驚いた顔で見つめたが、

パインの真剣な顔を見るとなにも言えなかった。

パインはシェリルを見つめるとゆっくりと口を開いた。

パイン:「これ以上かかわるとアマゾネスに被害が及ぶ。

    それに子供のこともあるんだ。

    すまないが、こらえてくれ。」

シェリルは渋々承諾するしかなかった。

3人の間で合意が得られると、すぐにシェリルは村へと

向かうことになった。

最悪の場合を考え、防衛準備をするためでもあった。

残った2人で、救出作戦の検討が行われた。

そしていくつかの案の中から1つへと絞り込んでいった。


その日の夕方、シェリルは女村の族長の前に畏まっていた。

そして多くの老いたアマゾネス達が回りを囲んでいた。

族長:「で、お前はパイン殿を置いて帰ってきたというのか?

   まあよい、それもパイン殿の意思なのだろう。

   しかし、アマゾネスの族長としては大会の優勝者を

   守らねばならん。たとえ命に代えたとしてもだ。

   子を産めぬ老いた者達で向かうとしよう。

   老いたとはいえ、並のものにはまだまだ負けんし、

   盾ぐらいにはなれるだろう。」

そう言うと、10人の名前を呼ぶ。

族長:「今のものは、私と一緒に死んでくれ。

   よいな?」

呼ばれた者達は、一斉にときの声を上げる。

しばらくして、族長は身振り手振りで静まるように指示する。

そして、少し間をおくと話を続けた。

族長:「呼ばれなかった者達は、若い者達と一緒に村を守る事。

   呼ばれた者は男村にでた時点で、追放処分とする。」

これは、アマゾネスを名乗ることが許されなくなる

ということだった。


黙っていたシェリルが突然声をあげた。

シェリル:「族長、私も連れて行ってください。」

族長:「それはならん、パイン殿の意思は絶対だ。」

シェリルは黙ったままだった。

族長はゆっくり、そして静かに言った。

族長:「お前はまだ若い、多くの子を産んで村を守るのだ。

   これは、族長しての最後の命令だ。」

シェリル:「わかりました。」

族長:「よし、武器を持って、すぐに出発する。

   いまから行けば、明け方には到着できる。」

そして、11人はアマゾネスを捨てバルディアへと向かった。

シェリルはそれを見守ることしか出来なかった。


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