1枚の紙
その日の夜、ゼットとアイラがペアを組んで西側(玉座に向かって左側)の巡回をしていた。
警備は、3班6人で行われ、1班が詰め所待機、
残りの2班が城の東側と西側をおよそ1時間間隔で時間をずらして巡回している。
玉座の位置は城の中央に位置しており、両方とも確認するよう指示されていた。
このため巡回経路から考えると、サラフィムの私室は30分間隔で1回巡回されることになる。
自分達の巡回時に直ぐ調査を始めれば、最高1時間近く調査できることになるが、
途中で他の巡回者と遭遇する可能性があるため、安全を考えると15分程度であった。
これまでの巡回を鑑み、アイルが巡回を行い、
ゼットがサラフィムの部屋を調べるという役割を事前に決めており、
万が一、他の巡回者等と遭遇した場合は、小用に行ったと説明することにしていた。
これは、アイラが疑われることを避ける意味もあった。
ゼット単独の行動であり、アイラは関係無いということにするためだ。
ゼットとアイラは、サラフィムの私室にいた。
ゼット:「さて、じゃあ、ここからは別行動だ。よろしく頼む。」
アイラ:「気をつけてね。」
そう言うと、アイラは部屋を出て行った。
残ったゼットはパインの情報を元に書棚を調べ始めた。
アイラは、西の塔を巡回していた。
そのとき、階段を降りてくる者がいた。
アイラは、ランタンを向ける。
降りてきたのは警備長だった。
アイラ:「警備長、いったいどうしたのですか?」
警備長:「この上で幽閉されているものが病気でな。
定期的にチェックしているんだ。
ん?ゼットはどうした?」
アイラ:「小用に行っています。」
警備長:「そうか、分かった、お前は巡回を続けてくれ。」
アイラ:「分かりました。」
そう言うと、警備長は階段を降りて行った。
ゼットは、書棚にあった紙の束の中の1枚の紙に注目した。
そこには、日付とともに以下の文字が書かれていた。
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人数
発見
接触
魔法
交戦
作戦移行
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気になったのは、日付がエンクローズ村が襲撃を受けた日に近かった事と
「魔法」という文字だった。
ゼットは、考えた。
ゼット:(この言葉を作ったのはエンクローズ村だったはず。
村の歴史では異端者狩りまでの1年間、交流があったと聞いているが、
今までその言葉を聞いたことはない。
それに、接触、交戦という文字、、、。
襲撃に関係ある情報であることは間違いないだろう。)
ゼットは、その内容を書き写すと懐にしまった。
ゼット:(少し時間がかかってしまった。今日はここまでにしておこう。)
そう考えると、サラフィムの私室を後にし、便所へと向かった。
そして、巡回ルートを逆に回りアイラと合流しようとした。
その時、突然声をかけられた。
???:「おい、お前何をやっている。」
ゼットが声のする方を見ると、警備長が立っていた。
ゼット:「すみません、急にもよおしまして。小用を、、、。」
警備長:「ずいぶん長い小用だな。」
ゼット:(長いって事は、アイラに会ったのか?)
ゼット:「すみません、実は急に腹の調子が悪くなりまして、、、。」
警備長:「そうか、体調管理も仕事の1つだと覚えておけ。
わかったら直ぐ巡回に戻れ。」
ゼット:「わかりました。」
ゼット:(ふう、便所を経由しておいて、助かったぜ。)
ゼットは、アイラの元へと戻ると巡回を続けた。
その日の作業が終わり官舎で夕方まで寝ると、
次の日が休みのため外出許可をとった上で、
パイン達が宿泊する宿へと向かった。
アイラの休みとずれていたため、一緒に行動することは出来なかった。
ゼットが宿へ到着し、手紙を受け取ると予約されていた部屋へと入っていった。
そして、隣の部屋との壁に耳をつけて、話し声が聞こえるかを確認した。
パインとシェリルの声が聞こえることを確認すると壁を3回叩いた。
すると2回叩く音が聞こえた。
少し待つと、4回叩く音が聞こえたので、5回叩いた。
パインとゼットは子供の頃に空き家を利用して遊んでいた。
この時の扉を開く合図だった。
家に入りたい者が扉を好きな回数叩く、中の者がその回数から1を引いた回数叩く。
今度は、中の者が好きな回数叩く、入りたい者がその回数に1を足した回数叩く。
これで、外の者を確認していた。
5回叩いた直後、外の雑音が聞こえなくなった。
ゼット:「パイン、聞こえるか?」
パイン:「ああ、聞こえる。」
声が聞こえることを確認すると、サラフィムの部屋で見た紙のことを話した。
3人は、この情報を暗号の解読用ではないかと考えた。
パイン:「人数は、襲撃者あるいはエンクローズ村の人数と考えられるが、
人数の後に発見があるので、襲撃者と考えられる。
発見はそのままエンクローズ村の発見。
接触は村人との接触があったどうか。
魔法は村人が魔法を使うかどうか。
交戦は戦闘になったかどうか。
そして、作戦移行はそのままの意味として考えていいと思うんだが。」
シェリル:「そうだな、敵の行動を頭の中で考えてみよう。
私が彼等の立場なら、まず村を発見したら、まず様子をみるだろう。
万が一見つかった場合は、何かしらの理由をつけて村に入り込み、
村人が魔法を使うかを確認する。
村人がいきなり攻撃してきた場合は交戦する。
そして、魔法を使う場合は、作戦移行して襲撃する。
大まかな流れはそれで合いそうだな。
サラフィムが持っていたことも考えると可能性は高い。」
ゼット:「ああ、俺の考えも大体同じだ。」
パイン:「襲撃の首謀者はサラフィムだと考えてよさそうだな。
あとは、サラフィムを捕らえて問いただすしかないな。」
ゼット:「そうなるだろうな。」
パイン:「ゼットはもう少しサラフィムを探ってくれ。
私達はサラフィムを捕らえる算段を練る。」
ゼット:「わかった。」
ゼットは話の最後にこの紙を処分すると告げ、
その部屋に一泊すると朝早く宿を後にした。
夜になってサラフィムが私室に戻ってきた。
そして部屋に入り書棚を調べた。
サラフィム:(やはりな、誰かがこの部屋に侵入している。)
直ぐにバスラを呼び寄せる。
バスラ:「何事でしょうか?」
サラフィム:「この部屋に侵入したものがいる。」
バスラ:「なんと、、、パインの手の者でしょうか?」
サラフィム:「いや、それは判らんが、書棚を調べていたようだ。」
前回パインが進入した後に違和感を感じていたサラフィムは小さな目印を付けていた。
目印を付けたうえで、その目印を合わせるように置いておいたのだ。
もしその目印がずれていたら誰かがそれを移動させたというわけだ。
サラフィム:「ここに警備長を呼んでくれ、聞きたいことがある。」
警備長が来るまでの間に、書棚の資料以外に移動されたものがあるかを調べ、
書棚以外には無いことを確認した。
バスラと警備長が来ると、サラフィムがこの部屋に最後に来た日以降の
警備について確認していった。
そして、バスラと警備長に指示を与えると仕事に戻るように言った。




