悪夢再び
3人が村に入ると、村人が見当たらないことに不安を感じた。
ゼット:「いったい、何があったんだ、誰もいないじゃないか。」
パイン:「なにかおかしい。とりあえず、村長の家に行ってみよう。」
ゼット:「そうだな。警戒は怠るなよ。」
パイン:「ああ」
周囲の家を見ると、ところどころに焼けたような焦げ跡があった。
3人は、周りに気を配りながら、村長の家へと向かった。
村長の家に近づくと人の話し声が聞こえてきた。
ゼットが恐る恐る中を覗くと、そこには多くの村人がいた。
ゼットは胸をなでおろすと中へと入って行った。
パインとシェリルもその後に続く。
ゼット:「村長、いったいなにがあったのですか?」
一斉にゼットに注目する。
村長:「ゼット戻ったか。パインも一緒じゃな。」
村長はシェリルに気がつくと、
村長:「ん?そちらの方はどなたかの?」と言った。
パイン:「彼女はアマゾネスのシェリルです。
魔法についても全て話しています。」
村長:「そうか、お前が信用したのなら、わしらも信じねばならんな。」
シェリル:「シェリルです。お見知りおきを。」
そう言って、挨拶を交わす。
パインは神妙な顔で村長に尋ねた。
パイン:「ところで、なにがあったのです。」
村長:「2日前の夜に襲撃を受けた。」
パイン、ゼット、シェリル:「!!」
3人は驚いた。
パインは、深刻な顔つきになると、村長の次の言葉を待った。
そして、村長が2日前のことを話し始めた。
その日の夜は、雲も多く漆黒の闇に包まれていた。
敵は、その闇に紛れて南からこの村に侵入したらしい。
我々がそれに気がついた時には、南に住んでいた10人もの村人がすでに殺されていた。
村人の1人がそれに気がつき、警鐘を鳴らした。
全ての村人は定期的に行われていた訓練通りに動いた。
そして、我々は反撃に転じた。
1人が敵の動きを止め、その他のものが止めを刺す。
敵の人数が少なかった為、勝負はすぐについた。
3人の敵は、複数個所から同時に発火して焼死した。
最後の1人は拘束して捕らえたが、捕らえられた直後に舌を噛んで自決した。
その後、他の敵がいないかの捜索が行われたが発見できなかった。
後に判ったことだが、殺害された村人はまったく抵抗をした様子が無かったことから、
殺すこと自体が目的であったと思われる。
もし尋問などが行われたなら、直ぐに大勢は逆転していただろう。
さらに、魔法に関する本、そして村人が持っていた魔晶石の指輪や首飾りが無くなっていた。
襲撃者の武器を調べるとバルディア国の紋章が刻まれていため、
すでに死亡している身元不明者と同じ手の者と考えられた。
そして、今後の対策が検討されていたところに3人が入ってきたというわけだ。
黙って聴いていたパインは、今にも泣きそうな顔をすると口を開いた。
パイン:「私のせいだ。すまない。」
ゼット:「パイン何を言うんだ、そんなことあるわけ無いだろ。」
シェリルは神妙な顔をしてパインを見つめた。
村長:「何があったのだ。まずは話を聞こう。」
パインは今までに起こったことを出来る限り詳しく話した。
村長:「なるほど。サラフィムとバスラか。そやつらが裏で動いているというのか。
それから、話を聞く限り、お前のせいではない。」
パイン:「・・・」
村長:「誰が調査に行ったとしても、
アマゾネスの長老様の話を聞く為に大会に出場しただろう。
娘さん、シェリルと言ったかの?」
シェリル:「はい」
村長:「シェリルさんから見て、バスラという男は強いのだろう?」
シェリル:「ええ、やつは強い。残念ながら私では勝てないかと。」
村長:「なるほど、それほどまでに強い相手なら、魔法を使わなければ我々に勝機は無い。
つまり、誰が行っても魔法を使ったということだ。
それを不審に思い、ここの調査が行われることになる。
遅かれ早かれ同じ結果になったということだ。
パイン、もう悩むな。やるべきことは他にある。
死んでいった仲間のためにも今は行動する事だけを考えるのだ。」
パインはしばらく黙っていたが、何かを決意したかのように、
パイン:「わかりました。私に出来ることは何でもやります。」と言った。
村長:「今回の襲撃の件、サラフィムとバスラという奴らが絡んでいることには
間違いないだろう。
しかし、証拠がない。証拠をさがすのだ。
パイン、ゼット、2人でこの襲撃の首謀者をつきとめ、
そして、この惨劇が二度と起こらないようにするのだ。」
パイン:「しかし、この村の事は?また襲撃があるかもしれません。
それに無くなった品物の件も気になります。」
村長:「この村の事は、残った者でなんとかする。
無くなった品物は、特に問題は無いだろう。
唯一気になるのは魔晶石だが、魔法を使えない物には無用の品だろう。
今回の襲撃で山を越えられた者も亡くなっている。
もうお前達以外には、セシリアしか残っていない。
セシリアは病弱であるし、それにやさしすぎる。
いま外に出れるのは実質2人しかいないのだ。」
村長はパインの反応を待った。
パイン:「・・・」
パインは何が正しい選択なのか分からなかった。
村長はああいっていたが、今回の原因はやはり自分にあるという
気持ちは拭いきれなかった。
しかし、今は行動する以外の道が無いことも分かっていた。
パインが悩んでいると、シェリルがパインの肩に手をおいた。
シェリルの方を見ると、シェリルとゼットと目が合った。
2人は黙ってうなずいた。
パインは、村長の方を見ると自分の進む道を決めたのか、
「わかりました。」と答えた。
それを見ていた村長は、ゆっくりとした口調で話し始めた。
村長:「シェリルさん、すまないが、この2人のこと頼んでもよろしいかの?」
シェリル:「もちろん。」
村長は頷くと話を続けた。
村長:「2人とも何度も言うようだが、良く聞きなさい。
魔法を使う上で冷静さは重要だ。常に落ち着いて行動するように。
特に魔晶石を使うときは慎重にな。」
パイン、ゼット:「はい、わかりました。」
この後、パインはシェリルを連れて母親の家へと向かった。
母親の無事を確認すると、シェリルを紹介した。
母親はシェリルを快く迎え入れてくれた。
そして母親にシェリルとの出会いなど、旅先での出来事を話した。
母親はパインの幼い頃の話や旅立った後のことを話した。
シェリルは、パインの父親が幼い頃に亡くなっていたことを
この時に初めて知った。
惨事の後ということもあり、亡くなった原因については聞かなかった。
夜も更け、2人がベットで横になっていた。
シェリル:「パイン、おきているか?」
パイン:「ああ、起きている。なんだ?」
シェリル:「パインの父親は、何で亡くなったんだ?」
パイン:「そのことか、実は詳しい話は知らないんだ。
事故だったと聞かされているが、その事故について聞いても
村の誰一人として、その場にいなかったから判らないと言うんだよ。
前から気にはなっているんだけどな。
そろそろ寝よう。明日出発だからな。」
シェリル:「わかった。」
そして、2人は目を閉じると眠りについた。
次の日、3人は葬儀に参加していた。
10人の遺体とともに襲撃者の遺体が並べられている。
村人は最初はこのことに反対したが、
村長は「死した者に罪は無い」と言って一緒に葬るように村人を説得した。
村人もその気持ちに応じた結果であった。
パインはそれを見ると改めて思った。
パイン:(村長の気持ちも判るが、
サラフィム、バスラ、この2人だけは断じて許すわけにはいかない。)
葬儀が終わると3人はすぐに村を後にした。
パイン達が村に到着した頃、南の断崖の前に1人の男が立っていた。
その手から鳥が放たれ、そして旋回すると南へと飛んでいった。
???:(頼むぞ、無事届いてくれ。)
男は鳥を見届けると、目の前に立ちはだかる断崖を見上げた。
???:(なんとしてもこの品をサラフィム様にお届けしなければ。)
そう決意すると慎重に登り始めた。
サラフィムとバスラの所にこの報が届いたのは、パイン達が葬儀に参加している最中だった。
バスラ:「サラフィム殿、殲滅には失敗したようです。」
サラフィム:「そうか、あの者達が倒されたということか。やはり脅威だな。」
バスラ:「生き残りが1人、魔法に関する品々をもって山を越えると書いてありました。」
サラフィム:「なに、魔法に関する品か。それがあれば対策も立てられるかもしれん。
よし、その品を入手するために、捜索隊を派遣するのだ。
今回は極秘でなくていいぞ。遭難者の救出ということでいいだろう。」
バスラ:「パインのやつの動向も気になります。宮廷と元老院の警備を増強しましょう。」
サラフィム:「そうだな、警戒しておくことに損はないな。
警備の方は、お前に任せたぞ。」
バスラ:「承知しました。」




