エンクローズ村へ
パインが男村へ着くと、アルドと1人の男が口論していた。
ゼット:「だから、何度言ったら分かってくれるんだ?
おれは、パインに会いたいだけなんだよ。」
アルド:「優勝者の知り合いだといっても通すわけにはいかないのだ。」
パイン:「まさか?ゼット、ゼットじゃないか?」
自分の名前を呼ばれ、ゼットが振り向く。
ゼット:「おぉ、パイン、やっと見つけたぞ。」
パイン:「なんで、ここにいるんだ?
いや、別の場所で話そう。
アルド、当然一緒に中には入れないよな?」
アルド:「パイン殿以外を入れるわけにはいきません。」
パイン:「だよな、、、」
パインがどこか話せる場所を思案していると、門の内側からシェリルがやってきた。
シェリル:「パイン、いたのか。
パインの知り合いが来ていると聞いて来たのだが。」
パイン:「シェリル、いいところに、、、どこか静かに話せるところは無いか?」
シェリル:「内密の話がしたいのか?」
パイン:「あぁ、そうだ」
シェリル:「分かった、ついて来い。」
シェリルはそう言うと、ずんずんと歩いていく。
2人はシェリルの後についていった。
そこは、飲み屋だった。
まだ、日が高いため店はやっていない。
シェリルは店主に内密の話だというと、2階へと上がっていく。
2人はその後に続く。
シェリル:「ここの店主は、私と血の繋がりがある。多少の無理は聞いてくれる。」
パイン:(へえ、血の繋がりを知っているってことは、
自分の産んだ男の子の情報を得ていたってことだよな。
放りっぱなしでは無いということか。)
パインはアマゾネスの別の一面を見たような気がした。
3人は席に着くと、ゼットが小声で話しかけてきた。
ゼット:「パイン、彼女の前で話していいのか?」
パイン:「あぁ、全て話してある。力のこともな。」
ゼット:「そうか、お前がそこまで信用しているなら問題ないな。」
ゼット:「自己紹介しよう、俺はゼット、パインと同じ村の出身で親友だ。」
シェリル:「私は、アマゾネスのシェリルだ。パインはこの子の父親だ。」
そういうと、自分のお腹をさすった。
ゼットはパインの方を向くと。
ゼット:「お前、結婚したのか?」
パイン:「いや、色々と事情があってな、、、。
その件についても、後で話す。
とりあえず、お前がここにいる理由を教えてほしい。」
ゼットはそれを手短に説明した。
パイン:「なるほど、時期的に見て大会の後に山を越えたと考えるのが妥当だろうな。」
そう言うと、自分のこれまでの行動を話した。
ゼット:「そうか、サラフィムとバスラというやつが元凶で、国を取り仕切っていると。
その仲間が村に来たということは、まずいな。」
パイン:「あぁ、村に戻って、今までのことを話さないと。」
ゼット:「すぐに、もどろう。」
シェリル:「私も一緒に行っても良いか?」
思わぬ申し入れにパインとゼットは驚いた。
パイン、ゼット:「えっ!」
パイン:「何を突然言い出すんだ。」
シェリル:「私も力になりたいのだよ。」
パイン:「ここを離れても問題ないのか?」
シェリル:「子が宿れば問題は無い。」
ゼット:「しかし、その身体では、、、」
シェリル:「ん? アマゾネスは産む直前まで戦っている。
なにか問題でもあるのか?」
ゼット:(アマゾネスに安静などと言う言葉は無いのだな、、、)
ゼット:「いや、ない。」
パインは少し考えると、シェリルを立たせ、自分も横に立つと
その大きさを確認するように見た。
パイン:「なんとかなりそうだな。」
ゼット:「おい、パイン、本気で連れて行く気か?」
パイン:「あぁ、母親に会わせたいんでな。」
ゼットは唖然としたが、パインの魔法ならばなんとかなるだろうとも思っていた。
ゼット:「そうか、わかった。」
こうして、3人はエンクロウズ村へと向かう準備を始め、
準備が整うと直ぐに出発した。
その頃、サラティアのバスラの元へ調査隊からの報告が届けられた。
バスラはそれを眺めていた。
それには、日付と数字が書かれているのみだった。
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5 2 1 2 1 2
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これはサラフィムが好んで使っていた伝達方法である。
事前に設問を設定しておき、回答のみを記載するというものであった。
これは万が一敵の手に落ちたとしても意味が判らないようにすることが
目的であった。
しかし、設問以外のものについては連絡することが出来なかった。
今回の設問は以下の通りだった。
・現在の人数
・村を発見できたか。1=未発見。2=発見。
・村人との接触はあったか。1=なし、2=あり。
・村人は魔法を使うか。1=使わない。2=使う。3=不明。
・交戦状態にあるか。1=交戦なし。2=交戦中。
・次作戦への移行。1=なし、2=あり。
バスラ:(なるほど、村を発見し、接触はなし、魔法は使う、
交戦はなし、そして次の作戦へと移行するか。)
サラフィムはバスラに事前に指示を与えていた。
もし、村人が魔法を使うなら、殲滅しろと。
バスラは、それを眺めながら考えた。
バスラ:(2日前か、すでに殲滅作戦が開始されている頃だろう。
成功すれば次報が来るはず。来なければ失敗ということだろう。
失敗した場合、次の手を打つ必要があるな。
サラフィム殿と相談するか。)
バスラは私室をでると、サラフィムの元へと向かった。
パイン、ゼット、シェリルの3人は、ボトム村のあった場所に来ていた。
シェリル:「これが封印か。
この模様に意味はあるのか?」
パイン:「観光は後だ、いそぐぞ。」
シェリル:「あぁ、わかった。」
シェリルはいつの間にか立場が逆転していることに気がついたが、
これもまたいいものだなと思っていた。
3人以外誰一人いないことを確認し、シェリルに「抱きつけ」と言った。
シェリルはそれに従う。
パイン:「これから力を使う。到着するまで声をだすな。わかったな?」
シェリル:「わかった。」
パイン:「よし、いくぞ。」
パインは、腰の袋から首飾りを取り出した。
その先にはこぶし大の石がぶら下がっていた。
それを首にかけ、石を握り締めると、意識を集中し始めた。
シェリル:(なんだ、パインの体が熱くなってきた。)
次の瞬間、聞こえていた鳥の鳴き声、風、その他の音が掻き消えた。
シェリル:(音が聞こえない。これが魔法なのか?)
数秒後、脚に重さを感じなくなると、空に浮き上がった。
シェリルは驚いたが、パインに全てを任せると決めていたため、
パインの体を抱きしめる力を少しだけ強めると目を閉じた。
どのぐらいの時間が経ったか分からないが、かなり長い時間だった。
突然重さを感じ、そして周囲の音が聞こえてきた。
シェリルは目を開けると、周りを見回した。
そこは森の中だった。
シェリル:「ついたのか?」
パイン:「ああ、ちょっと疲れたのでここで少し休憩だ。」
そう言うと、パインは座り、魔晶石の首飾りを袋にしまうと、
木の幹に寄りかかり眠ってしまった。
ゼット:「魔晶石を使ったので疲れたんだ。」
シェリル:「そうか。」
2人はパインの傍に座ると話し始めた。
シェリル:「ところで、魔晶石というのはなんだ?」
ゼット:「パインが首からぶら下げていたのが魔晶石だ。
魔法の力を大きくしてくれるのだが、その分疲労の蓄積が多いのが欠点なんだ。」
シェリル:「それを使わなければ、私は来れなかったということか、、、」
ゼット:「半分当たりで、半分ハズレ。
パインの力なら2人運ぶぐらいなら魔晶石は使わなくてもできる。
パインは自分の周りに霧を発生させながら飛んだんだ。
空を飛んでいる時は、下から丸見えになる。
普段はそれを避けるために夜間に飛ぶんだが、今回は少しでも早く行こうと昼間に飛んだ。
そこで、周りに霧を発生させて見えないようにした。」
シェリル:「下から見たら雲にしか見えないというわけか、、、」
ゼット:「その通り。」
シェリル:「魔法とはすごいものだな。ゼットもできるのか?」
ゼット:「んー、まったく同じ事をやれというなら、残念だが俺には無理かな。
俺の場合、魔晶石を使ったとしても、パインの半分にもならないかな。
あいつの魔力は村で1番だ。あいつに勝てるのは、武術ぐらいだしな。」
それを聞いて、シェリルはアマゾネスの血が騒いでしまった。
シェリル:「武術をやるのか?すまないが、かるく手合わせ願いたい。」
ゼット:「いいよ、やるかい?」
そして、2人は立ち上がると一礼して試合が開始され、長い攻防が繰り返された。
ゼットは腹を狙わないように気をつけていた。
シェリルはそれに気がつくと後ろに下がり口を開いた。
シェリル:「まて、もうやめよう。これ以上やると、危険だ。」
2人とも息が切れていた。
ゼット:「ああ、そうだな。
それにしても、アマゾネスは強いな。
こんなに強いやつが沢山いるんだろうな。」
シェリル:「ああ、私などそれほど強いわけではない。
真ん中ぐらいだろう。
それでも、アマゾネス相手にこれだけ戦えるのなら
隊長クラスになれるぞ。」
ゼット:「いや、次に戦場でアマゾネスに会ったら、逃げるとしよう。」
シェリル:「それが正解かもしれんな。」
2人は大声で笑った。
2人が腰を下ろし、しばらくすると、パインが目覚めた。
パイン:「んー、少し寝たり無いがなんとかなるだろう。そろそろ行くか。」
そう言うと、3人は村へと向かった。




