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神の山の民  作者: 夢之中
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古ぼけた本

バスラは自室で悩んでいた。

たった1ヶ月の間に調査隊は温存していた2部隊のみとなっていた。

この部隊は、サラフィムの手の者達で構成されていた。

バスラは、彼等の素性はまったく分からなかったが、

バルディア王国崩壊時に裏で動いていた者達であることは分かった。

そして戦闘能力においても、軍の中でも上位に位置するであろう事も。


帰還しなかった部隊が1部隊、他の部隊は帰還することはできたが

凍傷が酷く再度出発することはできなかった。

それは想像以上に山を越えることは困難であるということを意味していた。

しかしバスラは戻ってきた部隊の情報を元に道筋を狭めていくことが近道だと考えていた。


扉がノックされ1人の調査隊員が入ってきた。

バスラ:「なんだ?」

調査隊員:「第3調査隊の物と思われる伝書鳩が戻って参りました。」

第3調査隊は3番の道に向かい消息を絶った部隊だった。


バスラ:「なんと!!、で、何と書いてあった?」

調査隊員:「はっ、

    峰を越えた地点で滑落した。

    目の前に森が見える。

    動くことが出来ない。

    救援を乞う。

    以上です。」

そして、その紙をバスラに渡した。


バスラ:「なるほど、よし、残りの調査隊員を集めろ。」

調査隊員:「了解しました。」

こうして、3番に調査隊が派遣されることとなった。



その頃、エンクロウズ村の村長の家では村人達が集まり話し合いが行われていた。

村長:「で、発見された男の容態は?」

村人:「いま、ミカエラが診ていますが、衰弱が酷く助からないかもしれません。」

村長:「わかった。」

村長:「今日ここに集まってもらったのは、あの身元不明者のことだ。

   まず、見てもらいたい。

   これが、あの者が持っていた物なのだが」

そう言って、様々な品物が置かれていった。


村人:「この剣に刻まれている模様は?」

村長:「この模様はバルディア国の紋章だ。」

村人:「バルディア!!あの忌まわしきやつらか」

村長:「まあ待て、それはすでに過去のこと、当時の者達もすでにいない。

   それを調べるためにパインに行ってもらったのだ。」

村人:「しかし、村長。この100年間1度もやつらはここには来ていないのです。

   何かが起こっていると考えられないでしょうか?

   パインの身に何か起こったとか、、、」

村長:「そうだな、もう1人行ってもらうことを考えねばならんか。」

???:「私が行きます。」

一人の若者が名乗りを上げた。


村長:「ゼットか?」

ゼット:「はい。」

村長:「そうか、、、。」

ゼットは、カイルとエルの間に生まれた子供の子孫だった。

カイルの中ではゼットは友であり、そして英雄でもあった。

ゼットのことを忘れないために、子供にゼットと名づけ、

その名前を代々受け継がせていた。

ゼットはパインにこそ魔力で劣るものの武術では村一番であった。


村長は重々しくゼットに問いを投げかける。

村長:「祖先の名を継ぐものよ。そちに問う。

   その申し出は、恨みによるものなのか?」

ジェイ:「いえ、そのようなことはありません。」


この言葉に嘘は無かった。

異端者狩りは、はるか昔に起こった惨劇であり、

今もバルディアが同じことを考えているかはわからない。

協力しあえる間なら、それがお互いのために一番良いということを知っていたし、

そのことをいつまでも引きずっていたら、未来など無いということも判っていた。


名乗り出たのは、1番は親友であるパインの身を案じたこと、

そして、外の世界を見たいという気持ちだった。

村長:「うむ、この件ゼットに任せてもよいだろうか?」

村人達はそれに賛成し、ゼットの出発が決定した。

ゼットは身支度を整えると直ぐに村を出てパインの足取りを追った。

直ぐに情報は得られた。

パインと言う名前がアマゾネスの大会の優勝者の名前と同じだったからだ。

ゼットはアマゾネスの村へと直行した。



シェリルの家でパインがサラフィムの情報を吟味していた。

パイン:(どうやら3日後にバルディアからサラティアに出向くようだな。

    期間は、7日か。

    今回はバスラも一緒のようだし、今回を逃すと次はいつ訪れるかがわからない。

    忍び込むのは、このときしかなさそうだな。)


その時、シェリルが帰ってくるなり「パイン、話がある。」と声をかけてきた。

パインは、何事かと思い耳をかたむけた。


シェリル:「実は、あれが無いんだ。」

パイン:「?」

シェリル:「子供が出来たかもしれない。」

パインは最初こそ訳がわからない状況であったが、その意味を理解すると

自分が親になるという感覚に戸惑いもあったが、

次第に湧き上がる喜びを抑えることができなかった。

パインはシェリルの手を取ると、「ありがとう」と言った。

シェリルはそれに答えるように、「こちらこそ、ありがとう」と言った。

2人を祝福するように小鳥のさえずりが辺りを満たしていた。



次の日パインはバルディアへと向かった。

バルディアに到着すると、サラフィムとバスラが移動するのを待ち、

それを確認すると、その日の夜にバルディア城へと忍び込んだ。

目的はサラフィムの私室を探るためだった。

警備の兵の目を潜り抜けながら探索を続けた。

そして、左の塔の階段を登ると、その先に扉があった。

扉は上半分が鉄格子になっており下半分には小さな扉が付いていた。

すると、扉の内側から声をかけられた。


???:「だれじゃ?」

パイン:「・・・」

???:「衛兵では無いようだの。

    誰かは判らんが、ここにいるのは危険ゆえ、早々に立ち去るがよい。」

パイン:(この話し方、まさか国王なのか?)

パインは扉に近づくと、危険を覚悟で話をしてみることにした。


パイン:「もしや、国王様ですか?」

???:「いかにもと言いたいところであるが、すでに国王ではない。

    バルディア8世であることに違いは無いのだがな。」

パイン:「生きておられたのですね。」

バルディア8世:「なんとか生きてはおる。

    サラフィムのやつめ、国民のために余に生き恥をさらせとぬかしおった。

    人質にすることによって反乱を起こさせないようにしたかったのだろう。

    さて、何故ゆえにこのような所に来られたのだ?」

パイン:(なにか情報が得られるかもしれない。)


パイン:「国王様、異端者狩りについてご存知でしょうか?」

バルディア8世:「なんと、嫌なことを思い出させおる。

    先代の王からは負の歴史と聞かされておる。」

パイン:「負の歴史?」

バルディア8世:「国民には魔の者の討伐となっておるが、真実は違う。」

パイン:「といいますと?」

バルディア8世:「いや、この話はするわけにはいかないのだ。」

パイン:(負の歴史、もし私がボトム村の者と名乗ったら答えてくれるのか?)

パインは賭けにでることにした。


パイン:「実は私はボトム村の生き残りの子孫なのです。」

バルディア8世:「なんと!!、生き残りが居てくれたのか。

    それを知っただけでも少しは救われるというものだ。

    そなた達には本当にすまぬことをしたと思っている。

    国が無くなり、そしてボトム村の子孫と出会う、、、

    これも何かの廻り合わせかもしれんの。

    国王に代々語り継がれた話を話さねばなるまいか。」

そう言うと、国王は静かに話し始めた。


当時の王はバルディア3世であった。

好奇心旺盛だった国王は、神の山の民の噂を聞くと直ぐに興味を覚え、

一目見て見たいと思っていたが、宮廷祈祷師によってそれを止められた。

大臣と宮廷祈祷師は、彼等を魔の者と断定した上で捕獲を進言し、王はそれを許可した。

捕獲は失敗したが、封印には成功した。


しかし、その1年後、大臣が宮廷祈祷師を殺害する事件が発生した。

大臣はその後自ら命を絶っており、その遺書に宮廷祈祷師の命を絶つことと、

宮廷祈祷師の占いは全て嘘であり、真実は無い事が延々と書かれていた。


そして遺書の最後には、

「異端者狩りはわが国最大の汚点ゆえ、それを進言し国王様の名に傷をつけた者は死に値する。

我が命をもってこれを清算する。このことは内密に処理されることを切に望む。」

と書かれていた。


国王は悩み、告知することを望んだが、将軍達に押し切られ秘密裏に処理された。

後に宮廷祈祷師の家族は国を出たと聞いている。

その後、同じ過ちを犯さないように代々国王に語り継がれるようになったのだ。


バルディア8世:「しかし、私はその禁を犯してしまった。

    それが、この結果というわけだ。」

パイン:「その遺書というのは今もこの城にあるのでしょうか?」

バルディア8世:「残念なことだが、それは定かではない。

    あるやもしれぬし、ないやもしれぬ。」

パイン:「そうですか。それでは宮廷祈祷師の私室はご存知でしょうか?」

バルディア8世:「それは分からぬが、余の私室を使っているのではないか?

    あそこが一番安全な場所であるからの。

    玉座の横にある部屋じゃ。

    そろそろ見回りが来るころ、早々に立ち去るがよいぞ。」

パイン:「ご配慮感謝致します。」

バルディア8世:「うむ」

パイン:「それでは失礼いたします。」

パインはそう言うと暗闇の中へと消えて行った。

バルディア8世は、ボトム村の生き残りがいたこと、そして真実を話すことができたことに

胸の痞えが取れた気がした。


パイン:(遺書も見て見たいが、まずは宮廷祈祷師の私室を探ろう。)

パインは国王の言葉を信じて国王の私室へと向かった。


部屋には見張りはいなかった。

部屋に入ると、そこには何かの術式で使うような物が多数ならんでいた。

パイン:(どうやら、当たりのようだな。)

パインは本棚を見つけるとそこを調べ始めた。


そして、古ぼけた本を見つけた。

中を開くと、手書きで色々と書かれている。

それを読み進めると驚くべきことが書かれていた。


パイン:(これは、サラフィムの物に違いない。

    まさか、異端者狩りの時の宮廷祈祷師の子孫であったとは。

    さらには、バルディア村になる前の村長だと、、、

    一族の悲願とは、バルディアという村や国を取り戻すということなのか?

    これを読む限り、占い自体が偽りということになるな。)

パインは部屋の外に人の気配を感じたため、古ぼけた本を元の場所に戻すと城を後にした。


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