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神の山の民  作者: 夢之中
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アマゾネスの領地

パインはシェリルの肩に掴まりながら歩いていた。

シェリル:「傷は痛まないか?」

パイン:「なんとか大丈夫。」

シェリル:「そうか、ところでパイン、全ての試合を見ていたのだが

    私に何か言いたいことはないのか?」

パイン:「・・・」

シェリル:「私はアルドをよく知っている。あの程度の動きを追えないはずはない。

    さらに、バスラの件だ。一体何を隠している?

    アマゾネスは大会の優勝者に従うし、たとえ外で重罪を犯していてもアマゾネスが守る。

    いいかげん話してくれても良いのではないか?」

パインはしばらく考えると口を開いた。

パイン:「わかった。まず少し休憩させてくれ。その後で話そう。」


しばらく歩くと複数の家が見えてきた。

アマゾネスの村に着いたようだ。


パインを見ようと人々が集まってきた。

周りを見回すと全ての人々は屈強と呼ぶにふさわしい筋肉を持っていた。

その筋肉美にしばし我を忘れた。

アマゾネスは思ったより話好きなようで、パインは質問攻めに苦戦していた。

話してみて判ったことだが、アマゾネスは竹を割ったような性格をしており

話していて気持ちがよかった。


シェリル:「そろそろ解放してもらえないか?

    傷の手当もしなければならない。」

そう言うと、パインを連れて近くの家の中へ入っていった。


この家はシェリルの家らしい。

こじんまりとした家だが1人で寝るには大きすぎるベットが目に付いた。

その大きなベットにパインを横たえると傷を見始めた。

患部に触れられると激痛が走った。

しばらく触診すると、シェリルが言った。

シェリル:「どうやら骨折はしていないようだ。

    薬草を貼って休息していれば直るだろう。」

パイン:「ありがとう、シェリル。

    ところで、今夜私はどこに泊まればいいんだ?」

シェリルはちょっと頬を赤らめて答えた。

シェリル:「優勝者の家は無い。好きな家で寝ればいいんだ。

     準備の出来ている家は扉に花が飾られている。」

パインはその言葉を聴いて意味を理解した。


次の日、パインはシェリルに椅子に座るように言うと、自分も座り静かに話し始めた。

パインは神の山の民の話をすると、魔法が使えることを話した。

シェリルは初めはそれを信じなかったが、実際に魔法を見せると、それに驚いた。


シェリル:「これは信じないわけにはいかないようだな

    この件は、万が一の事を考えて他の者達には秘密にしておこう。

    アマゾネスが口外することはないが、どこに耳があるかわからないからな。

    この話はこれで終わりだ。」

パインはシェリルの気遣いに心より感謝した。



バスラはサラティア国に戻ると、その足でサラフィムの元へ向かい、事の次第を話した。

サラフィム:「そのような者の話を聞いた覚えがある。

     まさかとは思うが、少し調べさせてくれ。」

サラフィムは自室に戻ると先祖の記録を調べ始めた。

そしてついに山の神の民の記述を発見した。

バスラを呼び寄せるとそれについて語りだした。


サラフィム:「異端者狩りについて聞いたことがあるだろう。」

バスラ:「魔の者を封印したという話ですか?」

サラフィム:「そうだ、しかし魔の者というのは脚色にしかすぎないだろう。」

バスラ:「でしょうね。」

サラフィム:「この魔の者は手を触れずに物を動かせたそうだ。」

バスラ:「まさか!」

サラフィム:「我が祖先の記録にはそう書いてあるのだ。」

バスラ:「魔の者が生きており、それがパインだということですか?」

バスラ:(たしかに、今思い返すと弓の試験のときの矢の軌道もおかしかった。

    普通なら知っていても良いことを知らなかったりということもあったし、

    シェリルの報告では国の歴史を調べたりという行動も。

    そして、あの試合の件。)

バスラ:「たしかに思い当たる節があります。」

サラフィム:「そうか、私の仮説はこうだ。

    封印された魔の者達は生きており、何らかの方法、たとえば山を越えるとかにより

    封印を突破したということだ。そして何かの目的のため動いていると。」

バスラ:「いくつか疑問があります。

    あれだけの力を持ちながら易々と封印された件、

    今まで封印を解かなかった件、

    あの封印を壊さずに突破した件。」

サラフィム:「これはあくまで私の推測だが、魔の者達は今程の力を持っていなかったのかもしれん。

    封印を壊して外に出ることは死に繋がる。

    その為その力を強化することに時間を費やした。

    そして山を越える力をつけたため、山を越えてきた。

    目的は、そう、復讐かもしれない。」

バスラ:「確かにそれなら納得がいきます。

    あの力を多くの者が持っていたなら、それは脅威に値する。

    これは緊急に調査の必要があるかと思います。」

サラフィム:「そうだな、、、

    封印を破壊する方法では、こちらの動向が筒抜けになる。

    山を越える調査隊を派遣するしかなさそうだな。

    バスラ、極秘に調査隊を派遣できるか?」

バスラ:「はい、早速調査隊を向かわせます。」

サラフィム:「ならば、わしの手の者達も使え。」

こうして魔の者の村を探すべく調査隊が派遣されることとなった。



大会優勝から1月後、パインの傷も完全に癒え痛みも消えていた。

パイン:「シェリル、そろそろ長老と話しをしたいのだが。」

パインは朝食を食べながらシェリルに話しかけた。

シェリル:「わかった、早速手配しよう。」

そう言うとシェリルは手紙を書き始めた。

手紙を書き終わるとそれを持ち、パインに「一緒に来い。」と言うと、

さっさと出て行ってしまった。

パインはその後を追った。


パインはこの1ヶ月、傷の痛みもありほとんど家の外へ出られなかったが、

短い外出の時も子供を見かけないことが多少気になっていた。

パイン:「そういえば、子供を見かけないのだが。」

シェリル:「ああ、そのことか、いずれ判る。」


そう言うと一軒の家の中に入って行った。

中に入ると、そこは鳥で一杯だった。

この時代の通信手段は人力が一般的であったが、一部の金持ちは伝書鳩を使った。

もともとはアマゾネスが通信手段として使っていたものだが、

村を出たアマゾネスがそれを商売にするようになった。

まだその数は少ないため一般的ではなかったが、いずれ一般的になるであろう事はわかった。

シェリルは1羽の鳥の足に手紙を付けると空に放った。

鳥は上空を旋回すると森の奥へと飛んでいってしまった。


シェリル:「これで長老に会える。

    明日、長老のところへと向かうぞ。」

パイン:「ありがとう。」

シェリル:「さて、気がかりも無くなった事だし帰って子作りに励むとしようか。」

パイン:「・・・。」

パインは別の意味で優勝者が屈強である必要があると考えるようになっていた。


次の日、パインとシェリルは女村へと向かっていた。

それほど遠い距離ではなかったが森は深く、シェリルがいなかったら、

これほど短時間で着くことは出来なかっただろう。

そして、木々の間から丸太で作られた砦のようなものが見えた。

入り口は1箇所しかないようだった。

シェリル:「ここが女村だ。優勝者でも正等な理由が無ければここへは連れて来ない。」

そう言うと、入り口の傍の穴に近づき、何かを話すと扉が開いた。


シェリル:「入るぞ。」

そういってシェリルは扉をくぐって行った。

パインはその後に続いた。


中に入ると、そこには沢山の子供達がいた。

パイン:「なるほど、子供達はここにいたのか。」

シェリル:「そう、子供はこの女村で育てられる。

    その昔、優勝者が子供を襲う事件があってからこうなったのだ。

    優勝者といえど、子供に危害を加えるようであれば、処刑されるからな。

    くれぐれも変な気は起こすなよ。」

パイン:「そんな趣味はない。」

そういうとパインは苦笑いした。


子供達は物珍しそうな顔をしてこちらを見ていたが近づいてくるものはいなかった。

シェリルに聞くと、どうやら子供は男に近づいてはいけないと教えられているとのことだった。


2人は村の中央にある家に入った。

そこには、長老と呼ばれるアマゾネスが座っていた。

その女性の筋肉は若いアマゾネスには劣るものの見事なまでに隆起していた。

顔に皺がなければ長老といわれても信じられなかっただろう。


パイン:「まさか、彼女が長老なのか?」

シェリル:「ああそうだが、それがどうした?」

パイン:「いや、老人とは思えない筋肉だ。」

シェリル:「筋肉はアマゾネスの象徴だ。これが無くてはアマゾネスとは呼べない。」

パインは納得するしかなかった、そしてアマゾネスが最強と言われる根拠を見た気がした。


シェリル:「長老、彼が優勝者のパインです。」

長老:「おう、よくきた。歓迎するぞ。

   しかし、その体格でよく優勝できたものだ。

   今回の大会は強豪揃いだと聞いていたのだが?」

シェリル:「彼は力ではなく、速さなのです。」

長老:「なるほど、力のみでは勝てないか、当然だな。」


長老:「さてパイン殿、何用でここへ来られたのかな?」

パイン:「異端者狩りについてご存知のことを教えていただきたい。」

長老:「異端者狩りか、その件については前の長老から言い伝えを聞いている。

   で、何ゆえそれを求めるのか?」

パインは魔法以外の事について全てを正直に話した。


長老:「なんと、ボトム村の生き残りがいたとは。

   彼等はエンクロウズ村と共に封印されたと聞いていたのだが。

   まあいい、で、そのときの言い伝えを話せばよいのだな。」

パイン:「はい、よろしくお願いします。」

長老:「これは異端者狩りの部隊にいたアマゾネスが伝えたものだ。

   彼女は異端者狩り後、村に戻り生涯を女村で過ごしたそうだ。

   それでは言い伝えをそのまま話すとしよう。」

長老は一呼吸おくと話始めた。


長老:「私達は緊急召集命令により王宮前に集合していた。

   部隊長が現れるとボトム村に進軍する旨と伝えた。

   何が起こっているのかが判らなかったがそれに従うことにした。

   進軍前にボトム村とエンクロウズ村を繋ぐ洞窟の案内人を探した。

   それを発見すると直ぐに進軍が開始された。

   道中で部隊長に話を聞いた。

   部隊長は詳細は知らないが、ボトム村とエンクロウズ村の村人の討伐だという。

   エンクロウズ村の住民は神の山の民と呼ばれ、不思議な力を持っているとの

   噂があったことは知っていたが、それが国の脅威になるとは思っていなかった。

   村に到着すると、村の入り口に1人の老人が立っていた。

   しばらくすると、いきなり部隊長が老人を切り殺した。

   そして「全員殺せ。」と叫んだ。

   私を除く全員が一斉に村に入って行った。

   村人は一切の抵抗をせずに殺された。

   私はこれは一方的な虐殺ではないと考えた。

   アマゾネスとしてはこれは許されない行為である。

   私はこれは見届けなければならないと思いながら村を進み洞窟に入った。

   途中、村人らしき遺体を発見したが抵抗した痕跡は見当たらなかった。

   洞窟は深かった。進んでも進んでも出口はなかった。

   そして広い空間に出た。

   部隊長が「右から2番目の通路だ。」と叫ぶと、一斉にそこへ向かった。

   先へ進むと通路が燃えていた。

   そして炎のこちら側から部隊長が弓で村人を射ているのが見えた。

   炎が消えると一斉にその先を目指した。

   そこには木で出来た足場のようなものがあり、燃えていた。。

   その上には穴が空いており、その先には空と木が見えた。

   村人は武器を持ち戦っていた。

   何故、不思議な力を使わないのだ。なぜかそう思わずにはいられなかった。

   次々と村人達は倒れていった。

   最後にゼットと名乗った若者が部隊長との一騎打ちを行い、そして敗れた。

   殺される瞬間、足場の上の穴の方向を見ていたように思えた。

   そちらを見ると穴が塞がっていた。

   部隊長はそれを見ると撤退の指示を出した。

   部隊が戻ると、この件に関して様々な噂が流れていた。

   魔の者が現れたというものが殆どだったが、宮廷祈祷師の陰謀論もあった。

   私はこの件を一方的な虐殺と考え、アマゾネスとしてはこのままここに

   留まることはできないと思い、村に戻ることにした。」

長老:「これがこの村の異端者狩りに関する言い伝えの全てだ。」


パイン:(なるほど、大まかな流れは今までの内容と同じということは、

    事実と考えてもよさそうだ。あとは宮廷祈祷師の陰謀論だけか。

    いずれにしろ宮廷祈祷師のところへ再び忍び込まなければならないのか。)


パイン:「ありがとうございました。」

そう言うとしばらく長老と談笑した後に女村を後にした。


パインはサラフィムの動向を調査しながらその機会を待った。

執政官という立場ゆえその動向は公にされており、それは容易なことだった。

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