第4話:大失態
「へ、変なところ、触らないで!」
「貴様、子ども……いや、女か?」
一瞬、騎士の手から力が緩められた隙を突き、私は思いっきり足を振り上げた。鋭いエッジ付のブーツの攻撃だ。
さすがの眠れぬ騎士も額に重い一撃を食らい、「ぐはぁっ!」とよろけた。いや、よろけただけなのかと文句を言いたくなったけれど、今はそれどころではなかった。私は柔らかい体を活かして、相手の筋肉の塊のような腕からするりと抜け出した。
「ま、まて……!」
「あなたのせいでデビューが台無しよ! 覚えてなさい!」
前後不覚になっている騎士に小悪党のような捨て台詞を吐き捨て、私は王城の廊下を走り去る。
廊下の先にチカチカと光る明かりが見えた。先行していたホリーからの合図だ。
悔しくてたまらないが、私は振り返ることなく任務遂行を優先した。
誰の足跡もない城下町の銀雪を、クロウス伯爵家特製の魔導ソリが走る。
ホリーが乗っているのは、ハンドル付きの二輪ソリ。動物のトナカイがモデルになっているらしく、操縦ハンドルが角のように無駄に雄々しい。
一方、私が乗ってるのは、四輪のソリ。ホリーの二輪ソリの隣に接合されていて、聖魔法の魔力を注ぐパーツが付いている。
ソリは雪煙を上げながら軽快に滑るけれど、私にとっては無念の敗走だった。プレゼントはきちんと贈ってきた。だから任務は達成したけれど、完璧な仕事に大きな傷を付けられたことには違いない。
「くぅぅぅっ! なんなのよ、あの騎士ぃっ! なんで私の聖魔法が効かないのよ!」
「お嬢様……責任を感じるので、時間外労働と労災の申告は控えておきますね」
「そこはちゃんと申告してぇぇっ!」
おんおんと泣き叫ぶ私の声が、冬の夜空に吸い込まれていく。
「あの男、絶対に許さない!」
***【騎士】
「侵入者っていうけどさ、サンタクロースだから大丈夫だよ。父上も怒ってなかったでしょ?」
「……はい。むしろ、サンタの邪魔をしたことに難色を示されました」
聖夜の翌朝。
俺は国王陛下に侵入者の報告をし、その後お仕えするルベル殿下の部屋に戻った。幸いお咎めなしで事なきを得たが、俺はもやもやとした気持ちを抱えたままだった。
「王国民はサンタクロースが大好きだからね! 君だって、聖夜にプレゼントをもらってたでしょ?」
ルベル殿下は無邪気な笑顔を見せながら、プレゼントの箱を開けている。以前から欲しがっておられた架空の騎士の模型だ。サンタクロースはいったいどうやってその情報を得たのだろう。
「そうですね……。帝国に渡るまでは、それが当たり前でしたが……」
「ミカエル」
「あ……失礼いたしました」
ルベル殿下に名を呼ばれ、俺は無意識に険しく寄せられていた眉の角度を緩めた。
(聖夜にプレゼント、か。俺は一生忘れない。大切なものを奪われたことを)
俺は剣の柄を強く握りしめた。漏れ出しそうな復讐心を抑え込むかのように。
ここまでが漫画の第1話の内容となります。
続きも楽しんでいただけますと幸いです。




