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第四話 踏み込んだ者 ②

 その夜、一人で神社を見に行った。

 閉店後、駐車場に車を止めて、神社の前まで歩いた。

 夜の神社は昼間より小さく見えた。

 みどり色のフェンスに囲われた中に、古びた鳥居と苔むした石畳、奥に小さな祠が見える。

 由来を記した看板も、賽銭箱もなかった。


 フェンスには鍵がかかっていた。

 南京錠だ。古びてはいるが、しっかりとかかっている。

 私はフェンスを両手で掴んで、中を覗いた。

 鳥居の向こう、祠までの石畳が薄闇の中に続いている。

 誰が管理しているのか。

 誰が鍵を持っているのか。

 フェンス越しに境内の奥を見ていると、微かに音がした。

 風もないのに、何かが揺れるような音だった。

 葉ずれとも違う。

 何かが、ゆっくりと動いているような音が、祠の奥から聞こえてくる気がした。

 私はフェンスから手を離した。そのまま踵を返した。

 翌朝、出勤して神社の前を通ると、フェンスの外側に供え物が増えていた。

 昨夜、私が来たときには何もなかった場所に、小さな皿が置かれていた。

 フェンスのすぐ外、鳥居が正面に見える位置に、丁寧に置かれている。

 皿の上に、一つまみの塩が盛られていた。

 私はしゃがんで、その皿を確認した。

 店で扱っている白い小皿と、同じ形をしていた。

 しかし裏を見ると、うちの店のバーコードシールが貼られていなかった。

 どこから来た皿なのか。誰が置いたのか。

 フェンスの鍵は閉まったままだった。中には誰も入っていない。

 しかし昨夜、私がここを離れた後、誰かがフェンスの外に皿を置いていった。

 昨夜、神社に来たのは私だけだったはずだ。

 分からなかった。


 チェッカーの女性が、事務所に来た。

「副店長、少しいいですか」

「どうぞ」

「名札のことなんですけど」

 彼女は言いにくそうに続けた。


「副店長の名札、少し薄くなってませんか。前より、文字が薄い気がして」

 私は胸元を見た。名札はいつも通りそこにある。文字も読める。

「気のせいだよ」

「そうですよね、すみません」

 彼女は出ていこうとして、ドアの前で止まった。

「あと、夢を見たんです。あの三人が出てきて」

「常連客の?」

「はい。夢の中で三人が並んで立っていて、私をじっと見てるんです。顔は見えなくて。でも声だけ聞こえて」

「何て言ってた?」

 彼女はしばらく黙った。

「次はあなただ、って」

 私は何も言えなかった。

「気にしすぎですよね」

 彼女は笑おうとした。

 うまく笑えていなかった。

「すみません、変なこと言って」

 ドアが閉まった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

続きが気になった方は、ぜひ次の話もお楽しみにしてください。


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