NO,10ギルドのオリバー
ここ王都でガーダーになったのが16歳の誕生日だった。
適性試験を受け、希少種……ゴリラの獣人である俺は、その膂力と敏捷性が認められルーキーとしては
異例のNO,10という上位ギルドに配属され、3ヶ月間の訓練を経てサランドル·ダンジョンに初めて潜る事となる。
マリアガ王国で1人前の男と認められた瞬間だった。
あれから6年……おもにダンジョンでの討伐任務をこなし続けた俺は、席次を順調に上げていきNO,10ギルドの
7席という地位を任せられるようになった。
討伐隊の隊長であり、あと1つ席次を上げれば大隊長となり王都マンダカルの2層目に住宅も与えられる。
10万人いるガーダーの上位700名に与えられる栄誉であり、引退後の職選びの幅も大きく広がるのだ。
昨日は、3日前からサランドル·ダンジョン中階層となる森林地帯24階層まで潜り、今回の討伐任務となる
巨大な岩もやすやすと両断する大鎌を持ったカマキリとヤドカリを掛け合わせたような魔獣【ストーンリッパー】
を予定数討伐し魔石と巨大鎌を無事回収を終え、20階にある転移盤にパーティーの5人が乗った時だった。
足元がぐらぐらと揺れ、壁や柱が激しく軋みだす。
「オリバー隊長!地震です!!」
シューシャが俺の腕に捕まり、叫び声を上げる。
「みんな乗ったな!?転移するぞ!!」
言い終わる前に俺は転移盤に魔力を通すと、いつもの浮遊感に身体が包まれる……
そしていつもの見慣れたダンジョン入り口に到着するはずが、時空の狭間から投げ出されたオリバー隊の5人は
着地するはずの床が無く両脚が宙をかき、捕まる物を求めて両腕を伸ばす。
その両手も空をかき衝撃に備えようと身体を丸めた瞬間、上腕に粘性の糸が絡みつき上へと引き上げられる。
「アドラーありがとう、助かった……みんなも無事か?」
壁から張り出した岩棚に平貝の獣人であるアドラーの足糸で引き上げられ難を逃れていた。
上空を見上げるとぽっかりと口を開けた火口から青い空が眺められる、ここがダンジョン内であることは間違い
ないようだ。
「いったい何が起こった?ここは何階層だろう?」
「火口まで4階層ほどか!?登れるか?」
暗闇の中、隊員たちの会話が聞こえる。
するとはるか地中から、尋常でない魔力の奔流がダンジョン内を禍々しい赤に染めながら噴き上がってくる。
大きな岩がぶつかり合う音、様々な魔獣の咆哮とともにまるで質量を持った魔力に足元が浮き上がる。
「みんな!飛ばされるぞ身を守れ!!」
そう言いながら目の前にいたシューシャの頭を抱え丸くなる。
「【シェル!】」
アドラーのスキル、シェルで覆われた5人は魔力の奔流に突き上げられ火口から投げ出される。
そしてそのまま為すすべもなく傾斜を滑り落ち、砂埃が収まりかけたころに上を見上げる。
ダンジョンのあった丘は火山のように隆起し、火口からは魔力と土煙が延々と噴き上がり続け、まるで溶岩のように
空を赤く染めていた。
「助かったのか?」
「ああ……なんとかな……急いでギルドへ戻ろう、報告しなければ……」
シューシャの手を取り立たせると、方角を確かめるように辺りを見渡す。
「ダンジョン内に取り残された人たちの救助はいいのか?」
「ルイーズ、武器は持っているのか?みんな飛ばされて丸腰だ……周りを見てみろ、上層部の魔獣たちも飛ばされて
もたもたしていたら襲われるぞ」
滑るように麓まで駆け下りると、誰かが乗ってきたのだろう馬車を見つけ興奮しきっている馬をなんとか宥めると
襲いかかってくる魔獣たちを無視して王都へと戻り報告を済ませる。
すでに厳戒態勢がひかれギルド総出での避難民の誘導と魔獣の駆除のための哨戒に全ガーダー交代制で当たっていた。
そして翌日はギルド番にシューシャを残し、オリバー隊の4人で王都東側の草原を哨戒に当たっていると……
どこからともなく声が振ってくる。
「“草原から東に80ドラン、東街道から西に60ドランの地点に9匹のバルホーンが潜んでいるガーダーは急行せよ”」
どこから聞こえているのか?と思わず天を仰ぐオリバー。
「近いな……みんな行くぞ!」
駆竜に乗ったオリバー隊の4人が東街道へと駆ける。3台の馬車をすぐに発見するが、見たことのない武装に身を包んだ
男たちが長い槍を最後のバルホーンに3方向から突き立てている場面だった。
オリバーたちは駆竜から降り、付近を警戒しながら商隊へと近づく
「NO,10ギルドのオリバーだ。大丈夫か?怪我人はいないか?」
「はい、大丈夫です……この方達のおかげで……」
商隊の代表者と思える初老の男が、黒い武装の男たちに視線を向ける。
「そうか、ずいぶんと優秀な護衛を雇っていたのだな」
「いえ、護衛に雇ったわけではないのですが……護衛をお願いしたいと話したのですが、言葉が通じなくて身ぶり手ぶりで
ここまで同行してもらったわけです」
「彼らが噂のサムライという人たちか……?」
オリバーはギルドで話を聞いていたが、その姿を見たことがなかった。
話をしようと数歩近づいたところで、バルホーンの魔石を抜いていた彼らの手が止まり一斉に殺気を向けられる。
10人ほどいる彼らは全員が黒髪、黒目の人間であり、希少種のゴリラの獣人であるオリバーが魔獣に見えているのか
もしれないと、人族のシューシャを探すがギルド番に置いてきたことを思い出す。
「ありがとう……助かったよ」
満面の笑みを浮かべ、片手を上げて見る。なんとか伝わったのか、彼らの槍を持つ手が緩んだようだ。
そしてオリバーは王都の方を指さし“歓迎する”とマリアガ式の敬礼で左胸に拳をあてる。
その時、再び天から声が聞こえ、空に向かって火球を撃つようにと指示される。
意味がわからず首を傾げながらも、サムライたちに背を向け火球を3発上空へと放った。




