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黄泉渡り伊織 ーー関ヶ原で滅した六千の魂を抱く巫女ーー  作者: 結城謙三


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30/44

駆竜

5人がギルドへと戻り、2階にある執務室のソファーに腰を掛ける。


[実を言うとヨシツグには予知能力のような物があるのかと思っていたよ]

お土産に持たされた獣乳に砂糖と玉子を混ぜ合わせてパンを浸し焼いたデザートを早速広げながら通訳を

する伊織。


「そんなものは無いな……遠くが見えて、聞こえるだけだ。ご覧のように戦うこともできない」

車椅子に座ったまま、自分の太腿を両手で叩く。


[戦えなくても、その目は大変な戦力になるだろう、ユアサの声が届く距離によっては戦い方の根本が変わる。

それをどうやって国王や上層部に認めさせるかだな……]


「エディ、打刀の1本を国王に上納しようと思う。それで謁見の打診をしてもらえないだろうか?」

湯浅五助の腰に差された【孫六兼元】をちらりと見る吉継。


[いいのか?国王も将軍も剣には目が無いからな、許しはでるとは思うが……]


「あまり時間がないからな、エディすぐに動いてもらえるか?謁見には僕と湯浅君、通訳として伊織殿……

それとムサシもだな」


「いや、俺は国王様なんて偉い人に会いたくはないんだが……」


「ムサシ……君が来てくれないと伊織殿が来てくれないだろう?すまぬが頼むよ」

“うんうん”と横で頷く伊織。


[じゃあ行ってくる、出来るだけ早く戻る]

猫科の獣人であるエディの細く長い尾が“パシンッ”と空気を打ち、執務室を後にする。


「さて、やっておきたいことはいくらでもあるが……ムサシと伊織殿はエディが戻ってくるまで休んでおいた

ほうがいいだろう、階上に宿泊できる部屋がいくつもあるそうなのでそこを使ってくれたまえ」

ようやく横になれると言いながら、ムサシの手を引き執務室を出ていく伊織。


「湯浅君、僕たちはここに集まっている戦力の把握をしなければならない、もっとも大事なことは誰がどんな

付喪神による能力を持っているのか……まずはそれからだな」



         〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


NO,100ギルドを出たエディは西門前の広場の増え続ける避難民たちの間を横切り、すぐ横にあるNO,2ギルドへと

駆け込む。カウンターで身分証を提示し2階の執務室へと上がるとギルド長のゴルドと対面する。


「エディ、お前も異邦人を集めた部隊を任せられて大変だろうが、困ったことがあったら何でも言え……

力になるぞ」

虎の獣人であるゴルドが太い葉巻を加え、紫煙を燻らせる。


「ありがとうございます。言葉は通じませんが気のいい連中ばかりのようでなんとかやっていけると思います」


「そうか……聞く所によると魔法も使えないということだが、戦力になるのか?」

“ギロリッ”と大きな眼球だけを動かしエディを睨む。


「詳しいことはまだ言えませんが、この戦いに彼らがいることで大変な助けになるかもしれません、その報告に

王城へ行きたいのですが、駆竜を一頭貸してもらえませんか?」


「ほとんどが哨戒に出ているはずだが、2,3頭は残っているだろう……これを持って裏の厩舎へ行け」

その場で書類にサインをするとエディの前に差し出す。

「マリアガ王国最速の獣人である、お前が駆竜に乗るとわな……まだ傷は癒えていないのだろう?

無理はするなよ」


書類を受け取り頭を下げるエディ。

例もそこそこに踵を返すと、練兵場の奥にある厩舎へと急ぐ。


「すまない、急いでいるんだ!」

そう言い書類を渡し、鞍のついている一頭に飛び乗るエディ。

駆竜の首をひと撫ですると、ギルドの外階段を一気に駆け上がる。

駆竜という名がつけられているが、長く細い脚に羽毛に覆われた身体が載っており長い首に丸みのあるクチバシ

のついた頭は竜というよりも翼の退化した大型の鳥類のようである。

ギルドの屋上まで出ると、助走をつけギルドの裏手の通りを飛び越えて魔獣解体所の屋上へと着地しさらに加速する。

強靭な脚力と広く長い尾が、文字通りの飛ぶように走る機動力を実現し、地上を馬で王城まで移動する半分以下の時間

で到着する。


衛兵にセルザ将軍への面会を求めると、王城の離れに急遽設営された【王都魔獣対策室】へと行くように指示される。

有事のため敷地内を駆竜で入ることを許可され、北門の横に設営されたテントでセルザ将軍との面会を待つ。


「待たせたなエディ……」

大蜥蜴の獣人であるセルザ将軍の冷たく鋭い目がエディに向けられる。


「この状況では仕方ないさ、手短に話すが例の異邦人の代表者がパイス国王への謁見を望んでいる……

彼らの剣を上納したいそうだ」


「その剣はそれほどの価値がある物なのか?」


「ああ、我が国にはない製法で鍛え抜かれた剣だった。どれだけ魔力を流しても耐えられそうだったな……

それよりも価値があるのが、その代表者であるヨシツグという男の目だ!千里眼といいとてつもなく遠くの物を見る

ことができる、きっと役に立つぞ」


「わかった。国王には時間を作って頂く……それよりもエディ、この戦いが終わったらNO,1ギルドに戻ってこないか?

傷も癒えたのだろう?」

細く長い舌を出し入れしながら、エディの目をじっと見るセルザ。


「ああ、考えておくよ……じゃあギルドに戻って連中を連れてくる。それと将軍の権限で4人分の王都2層1層への

立ち入り許可も頼む」





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