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黄泉渡り伊織 ーー関ヶ原で滅した六千の魂を抱く巫女ーー  作者: 結城謙三


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オーク肉

エディが周囲の者たちとともに備前長船祐定に魅入られていると、ワゴンに乗せられた肉が運ばれてくる。

テーブルの中央に山盛りのパンが置かれ、各々の前に透き通ったスープと焦げ目のついた大きな肉が置かれ

熱々の湯気と肉の香りに思わず喉を鳴らす。


「伊織は獣肉はまずいんじゃないのか?巫女だろう?」

ムサシが伊織にそっと耳打ちする。


「ムサシ……郷に行っては郷に従えと言うでしょう?今まで隠れて食べていた物を、堂々と食べれるようになった

だけだわ、ところでこれはなんのお肉かしら?」


[これはオーク肉だ。ヨシツグの持ち込んだ魔石にもオークのが2つあったな、魔石よりも肉の方が高く売れる

唯一の魔獣だ]

ナイフで肉を大きく切り分け、パンに挟むと美味しそうに齧りつくエディ。


「あの猪頭の魔獣がオークというのか……2足歩行の生き物を食べるのは少し躊躇してしまうな」


「足が8本も10本もあるタコやイカを食べるんですからな、それに比べたら普通ですな」

豪快にオーク肉に齧りつきながら、満足そうに頷く湯浅五助


「それもそうだな……頂くとしよう」


「美味しい〜ムサシ!このお肉もこのパンというものも本当に美味しいわ、お替りしてもいいのかしら?」


[イオリ、このパンは食べ放題だからな好きなだけ食べるといい]

日本語がわからないはずなのに、妙に勘の鋭いエディがパンの入ったバスケットを伊織の前に置く。


全員が食事を終え、運ばれてきたコーヒーと呼ばれる黒い液体に伊織とムサシが閉口していると湯浅五助が

これを入れてみろと、獣の乳と壺に入った砂糖を勧めてくる。


「あらっとても美味しくなりました!この甘味は砂糖ではないですか?このような高級品が無造作にテーブルに

置かれているとは……この国はいったいどうなっているのでしょう?」


[イオリ、通訳を頼むお土産にその砂糖を持って帰ってもいいぞ]


「任せてくださいギルド長!」


[ヨシツグ……俺たちについてきたのは、なにか話があったんじゃないのか?]


「ああ、エディに頼みがある……この王都でもっとも高い場所に登りたいんだ」


[もっとも高い場所?それは王城の玉座の間だが、簡単に入れる場所ではないぞ?なぜ登りたいんだ?]


「僕は遠くを見ることができる、ゴンドラから見た王城の最上階からなら、ここに迫ってくる魔獣を誰よりも

早く見つけることができるんだよ」

コーヒーカップの縁を指でなぞりながら、王城の方へ視線を向ける吉継。


[ヨシツグ、目なら俺もいいぞ視力強化の魔法を掛ければ、かなり遠くまで見ることができる]


「では勝負してみようか?あそこの広場から子供の手を引いてこっちへ歩いてくる、青いシャツを着た女性が

見えるか?」

窓から顔を出しながら検問所を抜けた広場を指差す吉継。


[ああ見えるぞ]

同じように窓から顔を出し目を細めるエディ、遠見に自身のあるムサシも同じように顔を出すが首を振って

肩をすくめる。


「では女性の胸についている名札の色と文字を言い当てよう」


[バカを言うな!そんな物が見えるはずがないだろう!?獣人の俺が視力強化を掛けて見えない物が人間の

ヨシツグに見えるはずがないだろう!?]


カウンターまで行き、ペンと紙を借りるとテーブルに戻ってきた吉継が紙にブランデン語の文字を書く。

「青い名札にこう書かれている」


[センターパン?……この先にあるパン屋の名前だが……]

エディが窓から顔を出したまま、女性がこちらへ歩いてくるのを凝視する。


「もし僕が勝ったら、玉座の間に登るのに協力してくれないか?」


[たとえ登って魔獣が見えたとしても、ヨシツグの仲間たちに伝える術がないだろう?王城からNO,100ギルド

までどれだけ離れていると思っているんだ?]


「それなら心配いらない、ここにいる湯浅五助君は遠く離れた特定の人物に声を届けることができるんだ……

伊織殿になら分かってもらえると思うんだが」

お替りのコーヒーをもらって美味しそうに飲んでいる湯浅五助の肩を叩く吉継。


[それは本当なのか?]

エディが伊織を見る。


「本当ですね……【法螺貝】の付喪神が付いています。かなり遠くおそらく相手が王都の外にいても届けたい声を

届けることができるでしょう」


【そんな馬鹿な!?君たち侍にはみんなそんな馬鹿げた能力があるというのか?】


「そうですね〜全員に付喪神が憑いていますが、ほとんどが何の役にも立たない能力ですね……使い方次第です」

そんな話をしているうちに例の青いシャツの女性が3軒隣の花屋の前を通り過ぎて、こっちへ向かってくる。


[俺の強化した目でもまだ名札の文字までは見えないぞ……青いシャツに青い名札を見つけるだけでも無理だろう

……来たぞ……もうすぐ見える……センターパン……]

窓から頭を引っ込め、椅子に“どさりっ”と座るエディ。


[本当だったのか……とんでもない目を持っているんだな……]


「王城に登れるように骨を折ってくれるな?」

そう言い、用事は済んだと席を立とうとする吉継。


「大谷の御殿様!なにかご馳走して下さるのですよね?」

メニューを持った伊織が吉継を引き留める。





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