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黄泉渡り伊織 ーー関ヶ原で滅した六千の魂を抱く巫女ーー  作者: 結城謙三


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スレイプニル

そして滑り込むようにゴンドラが2層目西口へと停車すると、エディを先頭に木製の階段を降りて行き

最初のゴンドラに乗っていた15人と合流する。


「凄い物に乗りましたな〜獣人や目や髪の青や赤い人にも驚きましたが、この街や馬よりも速く走る

この籠にも……本当に驚かされてばかりです」

年若い小姓のような少年が目を輝かせている。


「あそこにもっと驚く生き物がいますよ」

伊織が指差す方を見ると、普通の馬の倍以上はありそうな体躯に8本脚の巨大な馬が、鉄の檻で覆われた

荷台に大筒を載せた馬車を曳いている。


「「「「8本脚の馬!?」」」」

数人が驚きの声を上げる。


「ああ、あれはスレイプニルといってな王都でも10頭もいない聖獣だ。普通の馬より強くて速い……

そして何より賢い、ああやって戦車を曳いて王都を守ることが自分の役目だと理解しているんだ。

そういう契約をしているからな……」

エディが誇らしげに語ってくれる。


「契約?」

伊織が興味深そうに聞き返す。


「ああ、星草という魔力の込められた麦を人間が栽培し与える。その見返りにスレイプニルは王都を

守護するという、相互契約だな」


「近くに行って触ってみてもいいですか?」


「いや、近づいてもいいが触らせてはくれないぞ、契約したガーダー数人しか世話も騎乗もできない」


「そうなんですか?じゃあ近くで見るだけ……ムサシ行きましょう」

ムサシの手を引き、正面から歩いてくるスレイプニルの戦車へと近づいていく。


「伊織、あまり近くまで行くと危ないぞ……」


「……大丈夫ですよ」

伊織の前を通り過ぎようとしたスレイプニルが足を止める。

伊織の倍もありそうな背丈から首を曲げ、伊織の顔の前まで鼻を近づけ軽く鼻を鳴らすと舌を出し

伊織の頬にそっと触れる。

そのスレイプニルの首に手を回し、頬を寄せ合う伊織。


「おいおい、俺たちにも身体に触れさせないのに!?」

御者台に座るガーダーが驚き目を丸くする。


その様子を後方で見守っていたエディやカイルも顔を見合わせ合い

「いったいあの娘は何者なのだ?」

そう大谷吉継に問い掛ける。


少し迷ったあと、伝えられる言葉が見つからずに首を振り、肩をすくめる。

『いくら出雲大社の巫女だとしても、わずかな時間でこの世界の言語を話し、人に憑いている付喪神が見え

あのような獣にも懐かれる?我々が生き延びるにはあの娘が鍵となるだろうな……そしてムサシか……』

そう独り言ながら2人を見ていると、スレイプニルの首筋に手を伸ばそうとしたムサシが鼻先で突き飛ばされ

尻餅をつくと、息を呑むように見守っていた周囲の人々から“どっ”と笑いが起こる。

どこか塞ぎ込んでいた吉継も、この世界に来て初めて笑顔を浮かべていた。


スレイプニルの耳元に顔を近づけ、二言三言何かをつぶやいた伊織が首筋を叩くと、”ぶるっ”といななき

首を上げると名残惜しそうに振り返り、通り過ぎていった。


「伊織、あの馬になんて言ったんだ?」


「わたしの大事な友達をいじめないでって言ったの」

意味ありげに笑う伊織。


そして侍たちを乗せたゴンドラが次々に到着し、通りが溢れそうになってきたところでカイルが先頭になって

NO,100ギルドへと歩き出す。


「ムサシ、すまないがこの車椅子を押してもらえないだろうか?」

吉継がそう頼むとムサシは伊織が頷くのを確認してから戸田重政に代わって車椅子の取っ手を握る。

後続の案内にエディを残し、再び周囲の人々の注目を浴びながらカイルに続く吉継らであった。

西大通りと呼ばれる目抜き通りは、どこか緊張感に包まれ武装したガーダーたちが忙しなく往来しており

その間を避難してきたと思われる大きな荷物を抱えた民が、物珍しそうに辺りを見回しながらすれ違って行く。

しばらく進むと西門の検問所につきあたり、広場には避難民が溢れており、その喧騒の中を城壁に沿った通りを

左に折れ、そして最初に現れた建物にNO,100ギルドと書かれていた。


「大きな建物ね……こんな大きな建物が城壁に沿って100もあるということでしょうか?」

伊織が誰にともなく呟くと、それに吉継が答える。


「どうやら、そのようだ……ガーダーと呼ばれる兵士が10万人、このギルドといわれる施設に所属している」


中へと入ると、吉継が訪問したことのあるNO,5ギルドとまったく同じ作りで正面には横に長いカウンターが

設置されており右手にはテーブルや椅子が並べられた飲食スペースがあり、その壁の向こうには練兵所がある


「ヨシツグ、ここを自由に使ってもらって構わない、一応そこの飲食スペースの厨房には水や食料を用意して

あるが足りなければ言ってくれ、それと東西南北の検問所に訪れたヨシツグの同胞だと思われる者たちにも

ここに来るようにと伝える手筈になっている」

それを隣に立っている伊織に通訳してもらい、了解したと告げると伊織に通訳を頼みカイルに言葉を続ける。


「ここに魔獣の大群が押し寄せてくるのは知っているな?その後にはとんでもなく強大な魔獣がここに来るぞ」

顔色一つ変えずにヨシツグの言葉をカイルに伝える伊織。


「ああ……今でも散発的に下位の魔獣が現れている、巡回中のガーダーたちが討伐しているが徐々に数を増して

いるようだ。ヨシツグたちにも出動命令が発せられるかもしれないから用意だけはしておいてくれ」


吉継が頷くのを確認すると、思い出したかのように言葉を続ける。


「ああ、それとこのNO,100ギルドの責任者、ギルドマスターはエディになるから、彼に何でも聞いてくれ」





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