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黄泉渡り伊織 ーー関ヶ原で滅した六千の魂を抱く巫女ーー  作者: 結城謙三


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ゴンドラと王城

「伊織、この国の金なんか持っていないぞ?宿営地とやらになにか食べる物があるかもしれないな」


「ムサシ、何をしているのですか?急ぎますよ!」

引き摺られるように歩いていた伊織が、先頭の大谷吉継らに追いつこうと歩き出す。


目抜き通りを歩く異形の集団、ほぼ全員が具足を着け兜を被った者までがいる。

この王都のガーダーたちは、その職種によりそれぞれ好みの装備を身に着けるため侍たちのように

ほぼ統一された装備の集団を見ることは王都の民にはなく、大変な注目を集めながらの行進となる。

マリアガ王国には軍隊はなく親衛隊もいないのが注目を集める理由だろう、国の防衛やダンジョン

での資源採取に街の治安まですべてをガーダーが担ってきたためである。

対して郷土も仕えた主も違うはずの侍たちは、奇妙なことに統制がとれており、先頭の車椅子に座る

大谷吉継に続いて綺麗に3列となり真っ直ぐに長槍を立てたまま行進していく姿が珍しくそして美しくもあった。


検問所から目抜き通りをひたすら歩き、突き当たりまで進むと2層目への検問所にあたる。

その道を壁に沿って右に折れると城壁の頂上付近まで登ることができる木製の階段が現れる。


「ヨシツグ登れるか?」


「ああ……大丈夫だ。エディ僕の宿にいる仲間にNO,100ギルドの場所を教えて欲しい」

身振りを交えながら伝えると、エディは親指を立て「大丈夫」と笑ってみせる。

おそらくもう伝えているということなのだろう……実に段取りのいい男だ。

手摺りにしっかりと掴まり、エディの肩を借りて3階建て相当の高さまで息を切らしなんとか登りきると

城壁に沿った踊り場が現れる。

そして城壁に沿って廊下が延々と設置されており、その上に人が何人も乗れそうな籠が……浮いている?


「ムサシ!早く来て!凄い物があるわ!」

先頭の吉継らに追いついた伊織が大きな籠を見て目を輝かせている。


「伊織、ちょっと待て!子供じゃないんだから、そんなにはしゃぐな!」

人混みをかき分け何度も謝りながら、踊り場の伊織に追いつくムサシ。


「ムサシこれを見て、きっとこれに乗って行きたい所まで行けるのよ」


「駕籠搔きもいないのに、どうやって走るというんだ?」


エディが吉継らに籠に乗るようにと手で促している。

そのエディの横に伊織が立ち、いくつか言葉を交わしている。


「驚いたな〜!お嬢ちゃんはブランデン語を話せるのか!?」


「はい、巫女ですから……ではみなさんに通訳しますね」


「みなさん、これに乗って下さい2つ目の踊り場に停車したら地上まで降りて待っていて下さいね」

そう言うと混雑し始めた踊り場にいる男たちを籠の扉を指差し、入るようにと背を押す。

15人ほども入ったところで扉が閉まると籠がゆっくりと走り出し、徐々に速度を上げていく。


すると次の籠が踊り場に停車し扉が開く。

「大谷の御殿様、あれだけ乗っても大丈夫そうですから、わたしたちも行きましょうか?」

最初の籠を見送りながら、ムサシの手を引き籠へと乗り込む。

籠の中には両側に長椅子が備え付けられており5人づつほどが座ることができ、中央の空いた空間に

車椅子を置き、戸田重政が後の者たちにも申し送りをするようにと告げると扉を閉める。

すると“ふわっ”と浮遊感を感じたあとにゆっくりと滑るように走り出す。


「これはいったい、どのような絡繰りで走っているのでしょう?」

外の景色を眺めながら、戸田重政が誰にともなく聞いてみる。


「ゴンドラと言うそうです。廊下の中央に加速の魔石という物が敷き詰めてありまして、

この籠の下にも浮遊という性質を持った魔石が嵌め込んであるそうです。

それが反発しあって浮きながら馬よりも早く走るようですね」

伊織がエディから聞いた話をそのまま伝える。


「巫女殿は伊織といわれるのですな?いくつか質問をしてもよろしいかな?」

車椅子を挟んで対面に座る大谷吉継が伊織に優しく微笑みかけると黙ってうなづく伊織。


「先ほども聞いたように我らは関ヶ原で死んだ……なぜ今は生きているかのように腹も減るし、痛みも

感じれば眠くもなる、生きているということなのだろうか?そもそもなぜこの世界に?」


「……神の都合と言いますか、神の悪戯でわたしもここにいます。そしてみなさんの魂は再び肉体を得て

こうして話しているのです。間違いなく生きているということです」

御左口神の圧により、慎重に言葉を選びながら話す伊織。


「……神の悪戯だと?……今の我らの姿は関ヶ原で死んだときとは異なると思うのだが?」


「それは、それぞれの魂の記憶です。ほとんどの方が関ヶ原での開戦前の姿ではないでしょうか?」


「この世界は日ノ本とは言葉が異なる異国と考えればよいのだろうか?」

吉継の言葉が熱を帯び始め、車椅子を掴み身を乗り出しながら伊織に問い掛ける。


「いえ……日ノ本のあった世界には、どこにもエディのような獣人や魔法は存在しません

次元の違う世界ということです」

自分の名前が出たエディが“ぴくっ”と反応し伊織の顔を見る。


「と言うことは、どう頑張っても日ノ本へは帰れないと?……三成……」

力無く長椅子に座り込む吉継。


ゴンドラが減速を始め、最初の踊り場へと到着する。


「ここが2層目北駅だ。向うを見てみろ」

エディが伊織に説明し、指差す方を見ると大通りが拓け、その先に巨大な城の全貌が現れる。


「ほ〜う立派な城だな?大阪城には及ばないが、空を貫かんばかりに高いな……」

戸田重政が感嘆の声を上げる。


「あれが王城だそうです。ちょうどこの王都の中央に位置するようですね」

虚ろな目を王城へと向ける吉継の目には、王城の最上階からこちらを見ている者をはっきりと捉えていた。





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