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黄泉渡り伊織 ーー関ヶ原で滅した六千の魂を抱く巫女ーー  作者: 結城謙三


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NO,100ギルド

急に取り乱し車椅子で走り出そうとする大谷吉継にエディが慌てて駆け寄る。


「ヨシツグ!一体どうしたんだ?」


「エディ!魔獣だ……魔獣が来る」

知っている単語を並べ、検問所を指差しみんなを中に入れろと身振りで伝える。


「落ち着くんだヨシツグ!魔獣が来る………  …………………  ……………分かるか!?」


「何を言っているのか分からないが、僕を検問所まで連れて行ってくれ」

少し迷ってから、頷いたエディが車椅子の背に付いた取っ手に手を掛け検問所に向けて駆け出す。


『もしかしたら、ヨシツグの能力はシャーマンのように未来を予期できるのか?』

あまりのヨシツグの必死さに、この時のエディはそんなことを考えていた。


自分が生まれた村を何の見返りも求めずに救ってくれた男、魔法も知らず魔力の付与も無い

鉄製の武器であれだけの魔物を狩っただと? 9人いたとはいえ、1人の怪我人も出さずに?

NO,5ギルドの精鋭9人を集めて同じ事が出来るだろうか? 魔法を使わずにただの鉄製の武器で……

おそらく全員が無傷では難しいだろう……よほど優れたリーダーがいなければ。

そんなことを考えながら、検問所へと近づいていくと大きな荷物を抱えた人々とすれ違う。

みんなが疲れ果てた顔をしているが、なんとか王都へとたどり着いた安堵からか笑みも垣間見える。

初めて王都を訪れた子供たちは目を輝かせながら、高層の建物や食欲をかき立てる様々な屋台に目を奪われている。

そして車椅子を押すエディが目に入ると、嫌な顔一つせずに大きな荷物を抱え道を開けてくれる。

この善良な人々を守らなければならない……ガーダーとして命を賭けてでも。

また思考があちこちへ逸れているな、と自覚しながら、検問所横の詰所の窓から中を覗き込むーーエディ。

治安局員の青い制服の背中が見え、木製の窓枠をノックする。


迷惑そうな表情で振り返った局員の顔が、エディと吉継だと分かるとわずかに緩む。

急いで立ち上がり、扉を開けエディと吉継を詰所へと招き入れる。


「エディ、よく彼を連れてきてくれた!呼びに行かせたんだが、出掛けたと聞いてな探していたんだ」


「そうだったのか?ギルドを案内したりしてな……ところでカイルなにかあったのか?」

エディとカイルと呼ばれた治安局員2人の顔を交互に見ながら、話の内容を探る吉継。


「ああ、じつは彼の同郷だと思われる兵士が次々と現れてな……対応に苦慮していたのだ」


「そうか……ヨシツグの予想通りという訳か、それでその人たちは今は何処に?」

吉継の肩に手を置きながら、話を続ける。エディ


「検問所の横に簡易なテントを張って休んでもらっている」


「ヨシツグわかるか?お前の仲間たちが、この王都に来ているらしい……」

エディがそう言うと、首をひねりエディの目を見てうなずく……


「……魔獣が来る……みんなを早く中へ」


「それなんだが、確かに魔獣たちが王都へ向かっているという報告も入っている。

そこでヨシツグ……王都の防衛戦に協力すると言うならば、王都へ入ることを許可するとハリス局長

より言われているが、どうする?」

正確にはセルザ将軍の指示で最前線で戦うという条件なのだが、カイルは直属の上司の名を出し言葉を

濁すのだった。


「僕たちも魔獣相手に戦えと言っているのだな?」

再び首をひねり、エディにそう尋ねると黙って首を縦に振る。


「みんなと相談しなければならないが……ここから逃げる時間もあてもない安寧の地の保証もないのでは、

戦うより選択肢がないだろう?僕たちの戦はまだ終わっていないということだ……」

壁に貼ってある地図を見ながら、日本語でそう答える。吉継


「ああ……戦おう!」

ブランデン語でそう答えると、ホッとしたように顔を見合わせるエディと局員。


「では、NO,100ギルドの使用許可を得ている。自由に使ってもらって構わない」


「ちょっと待て、ギルドの使用許可って?いったい何人いるっていうんだ?」

エディが目を丸くしてカイルに問う。


「見たらわかるさ……それに村民に連れられて今でもどんどん増えているからな……

どうやらここまで村民の護衛をしながら一緒に来ているようだ」


「なるほど、そういう事情で追い返すわけにも無碍に扱うわけにもいかないということだな」

納得したようにうなづき合うエディとカイル。


そしてカイルに先導され、検問所の横の細い通路を使い外へと歩いていく。

懐から白頭巾を取り出し被りながら、身体を捻りエディに「自分で歩く」と告げる。




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