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黄泉渡り伊織 ーー関ヶ原で滅した六千の魂を抱く巫女ーー  作者: 結城謙三


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ギルド

脚の悪い吉継に合わせて、ゆっくりと前を歩くエディに着いていく。

かなりの距離を歩き、検問所のある外郭の城壁に突き当たると、広い通りを城壁に沿って左折する。

3階建ての同じような巨大な建物が一定間隔で並び、エディがそれを指差して“ギルド”と教えてくれる。


「ギルド?」

大伴兼興がオウム返しに聞き返す。


「そうギルド、NO,1、NO,2、NO,3……」

巨大な建物を通りの端から指差していくエディ。


「NO1、2、3というのは数だな……この巨大な建物はなにかを担う館で端から番号が振られているのだろう」

異常なまでに高い城壁の内側に広い通りを挟んで、まるでもう1つの城壁のように並び立つギルドの建物

そしてギルドの建物と建物の間は広い土地が拓けており、鉄板で目隠しをされているが、金属の打ち合う音や

大勢の人間が走り回る音、小さな炸裂音や、気合のこもった怒声までが中から聞こえてくる。

鉄板の隙間から、その熱気が溢れ出して感じられるほどだ。


そしてエディが“ギルドNO,5”と建物を指差しながら、その入り口への階段を登っていく。

中へと入ると、板張りの大広間となっており大勢の人が壁に張られた紙を真剣な表情で見ている。

そして人種も装備もばらばらだ。巨躯の戦士の隣に、子供のように小さな者が並び立っている。

真っ直ぐに進むと巨大なカウンターがあり、その右の端、何やら書かれた木札の下に着くとエディが手招く。

そのカウンターに置かれた金属製の皿の上をエディが“とんっとんっ”と指で叩くと、魔石のことだと察した

大谷吉継が懐から巾着を取り出し6個の魔石を置く。

それをカウンターの中にいるガッシリとした小男が片目にルーペを嵌め、1つ1つを手に取り目を凝らす。

そして紙片に何やら書き殴り、その紙を突き出す。

その紙を見たエディが、カウンター内の男に二言三言捲し立てるが、平然とした様子で首を振る。

その紙片をつまみ上げ吉継に向かい親指を立てるエディ。

“これでいいか?”と理解した吉継が首を縦に振ると、カウンター内から金属製の皿に乗った硬貨が突き出される。

金貨が1枚に銀貨が8枚乗った皿を吉継の前にエディが引き寄せ片目をつむる。

それを受け取ると巾着袋へと入れその重みを確かめる、この世界で初めて手にした通貨の価値を知りたくなる。

大広間の右手に長テーブルがいくつか置かれ、飲食を提供しているようだった。

吉継はエディにその場所を指差し「喉が乾いた」とブランデン語で伝えると。

エディはニッコリと微笑み、2人の前に立って歩き出す。


そして3人がテーブルに着くと、長い尻尾をなびかせた女の給仕が注文を取りにやって来る。

エディがメニューを見ながら「酒でいいか?」と言い、頷くと「エールを3つ」と注文する。


給仕が下がると、吉継がメニューの書かれた紙を穴の開くほどに凝視する。

その文面を脳内へと焼き付け、規則性を探していた。

すべては憶測だが、紙面の左側に料理名、その下に素材、調理方法が書かれており。

右側が値段で数字に単価なのだろうと推測できた。あとは機会があれば検証するだけである。

それを興味深そうに見ていたエディが、裏面もあるぞと裏返す仕草で教えてくれる。


注文したエールが運ばれてくると、取っ手のついた大きな器が氷で出来ていることに驚き

おもわず大伴兼興と顔を見合わせる。

エディがエールを手に取り、2人の器に“ガッツン!”と打ち合わせると、一気に半分ほどを飲み干す。

つられて吉継らも口をつけるが、殻を焦がしたような匂いに顔を顰め、おもわぬ苦味に驚くが

かまわず喉へと押し込むと、その喉越しと清涼感に喉を鳴らす。


「美味いですな!この氷の器がなんとも言えません」

“ドンッ”と器をテーブルに置く。ーー兼興


「もう一杯頼むか?」


「いえっ刑部の護衛がありますので」

2人のやり取りを面白そうに見ているエディが手招きで給仕を呼ぶと紙とペンを頼む。


「あんたらに必要なものは、まずは言葉だな?」

給仕の女性から紙とペンを受け取り、ペン先を舐める。


「まずは数字からだな……これが1だ。そして2、3、4」

そう言いながら指を折り、紙には4本の縦線が引かれている。

そして「5」と言うと4本の縦線の中央に横線が引かれる。

「6、7、8、9」

6で蓋をするように横線が引かれ、7で底に横線が引かれて綺麗な正方形が出来上がる。

一見すると漢字の“囲”のように見えるが横線が1本足りていない。

8で左上から右下へと斜めに線が入り、9で右上から左下へと斜線が入る。


10はどうなるのだろう?そう吉継が楽しげに見ているとエディが少し大きな声で“10!”と言い

✕の書かれた“囲”を0で囲む、その記号を指で叩きながら、もう一度“10”と言い、横に0だけを書き

これも10だと言う。

さらに縦線を3本に右横に0さらに4本の縦線に横棒を走らせると“35”と言いながら、両手の指を広げ3回

突き出してから右手の指を5本立てる。


「では、11は?」吉継が質問すると“0を書いて右横に縦線を1本”


「22だと?」縦線2本の横に0を書き縦線2本


「100はどうする?」エディが自信満々に2重丸を書く。


「と言うことは、1000は3重丸なのか?」

そう言いながら、エディのペンを借り、横に3重丸を書くと驚いた目で吉継を見る。エディ


「……なぜ分かったんだ?その通りだ」


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