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黄泉渡り伊織 ーー関ヶ原で滅した六千の魂を抱く巫女ーー  作者: 結城謙三


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大谷吉継隊

「……あの村を救うことで、僕らがなぜここにいるのかが分かるかもしれない

しかし無理はしないでくれよ いくぞ!」

木立に背を預け、動きの止まっている狼に照準を合わせると息を留め引き金を絞る。


“パーーーーンッ”乾いた音とともに、狼が倒れる……戦いの火蓋が切って落とされた。


音のした方へと残りの狼が振り向き、一斉に走り出す。

吉継は次弾を装填しながら、槍隊を前へと弓の2人にはさらに引きつけるようにと指示を出す。


槍の5人が定められた地点で横に並ぶ、それを避ける素振りも見せずに突っ込んでくる5頭の狼。

「突けっーーー!」

5本の槍が突き出される、1頭の肩口に深く突き刺さり、2頭は横に逃げかわす。

上へと跳んで逃げた1頭に跳ね上げた槍がしなりながら胴を打ちつけ、もう1本の槍が空中で横腹を抉る。

急制動で槍の射程の外で止まった一際大きな個体が、吉継の2発目の弾丸を額に受け倒れる。


「弓は後ろの猪頭を!」

吉継は銃身をかるかで扱きながら、檄を飛ばす。


横に逃げていた2頭は、様子を見るように頭を低くして距離を取り唸りを上げる。

緑の小人の群れが、醜悪な顔をさらに醜く歪め槍隊へと迫っている。

しかし彼らの予測よりもはるかに長い槍の穂先が、危なげなく緑の小人を串刺しにしていった。

遅れて合流した2体の猪頭はすでに何本かの矢が突き立っており、槍隊の連携とさらに襲いくる矢に

為すすべもなく巨体を地に沈める。


それを見た2匹の狼は踵を返し、林の中へと消えていくのだった。


突然の静寂のあと、ふ~~~っという吐息が漏れる まだ息のある個体にとどめを刺すと

大谷吉継の周りへと集まる。


「思ったよりも手応えがありませんでしたな……」

穂先を拭いながら、ただ一人の東軍だった大前時治が軽口を叩く。


「いや、殿の指揮が的確だったからだ……1対1なら苦戦していただろう、狼には勝てなかったと思うぞ」

湯浅五助が獣たちの死骸に目をやる。


「では行ってみますか……話ができるかは分かりませんが、君たちはここにいて下さい警戒されますから」

大伴兼興の肩を借り、集落へと向けて歩き出す吉継。


しばらく待ったあと、大伴兼興が台車を引いた若い男たち数人を伴い戻ってくる。

「殿はどうした?」


「村の中で話をしている……」


「話せるのか!?」

若い男たちの中には、同じ人間のようだが髪の毛が赤や茶色と黒髪は1人もおらず瞳の色も青や緑と多彩だ。

しかしもっと驚いたのが尻尾や耳が生えた者たちまでが混ざっており7人が目を剥き凝視する。


「話せない……何を言っているのかまったく分からんが、殿が言うにはこいつらの肉を食うから

持ってきてくれということだ……」

そう言いながら、猪頭の死骸を台車に乗せる兼興。


「これを……食うのか……?」

気味が悪そうに猪頭の腹を石突きでつつく大前時治。


それぞれが台車に乗り切らなかった獣を担ぎ、集落へと着くと門は明け放たれ人々の笑い声が聞こえる。

そうして8人が入っていくと、広場に集まっている住民らに拍手で迎えられ、座るようにと手を引かれ

大きなテーブルの長椅子へと腰を下ろす。


何かを話しているが、当然何を言っているのかはまるで分からず、彼らの着ている服も日ノ本で見た

南蛮人の服装と似てはいるが、ずいぶんと粗末なものに見えた。そして湯浅五助が大谷吉継を探すと

離れたテーブルで白いひげの老人と座っており、まるで言葉を理解し合っているかのように見えた。


広場の中央に目をやると、数人の男たちが手際よく猪頭を捌き血抜きのために木に吊るしていた。

女たちは石でかまどを組み火を熾しているのだが……その指先から火が灯っているように見え

湯浅五助は目の錯覚だろうと目を擦る。


その時、大谷吉継はひたすら住人たちの話を聞いていた。

隣の老人だけでなく、離れた場所で作業している者、家族や友人と話し込んでいる者、行動と表情から

話の内容を予測し繰り返される単語を拾い、言葉の意味を推測していった。


そうして8人の元へと戻ると

「どうやら、明日の朝一番で避難のために王都へと向けて出発するらしい、それに僕たちも一緒に来いと

言ってくれている……明日以降、さらに強力な魔獣が押し寄せるらしいからな」

大谷吉継の言葉に顔を青くする8人だった。





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