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黄泉渡り伊織 ーー関ヶ原で滅した六千の魂を抱く巫女ーー  作者: 結城謙三


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異世界と侍

月·水·金曜日の更新となります。

注文した料理が湯気を立てて運ばれてくる。

“話の途中ですが、温かいうちに食べましょう”

そう身ぶり手ぶりで伝える局員、ここまでの大谷吉継の話をどれほど理解したかは不明だが

たどたどしい吉継の話を真剣な表情で聞いていた様子からも、治安局員の3人は友好的な対応を

してくれていると感じられた。


局員の3人が食べる様子をじっと見つめる、9人の侍たち……

彼らの知る食事の形式とはあまりにもかけ離れ、作法がまるでわからなかったのだ。

テーブルの真ん中には大皿に盛られた、拳ほどの大きさの岩のような物が積み上げられており

その周りには、焼いた魚や肉、見たこともない野菜や黄金色の球体や小判型の料理が並べられ

そして各々の前には平べったい皿に入れられた汁物が置かれた。

局員の食べる様子を見ていると、大皿から岩のようなものを取り齧りついたり、千切って汁物につけたり

半分に切って肉を挟んだりと、それぞれが好きなように食べており特に作法などないように見えた。


「美味そうに食べますな〜?わしらも頂いてみますか?」

湯浅五助が岩のような物に手を伸ばした。 


テーブルの上の物があらかた片付き、湯気の立った黒い液体が運ばれてくる。

「存外に美味かったですな」

「ええ、あの岩のような物はパンというらしく主食のようですな」

「あのパンを携行するのならば、戰場で飯を炊く煙が立たず重宝しますな」

「野菜を生で食べるのには驚きましたが」

「わたしはあの黄金色の油で揚げた肉や芋を気に入りました」

腹も満たされ、気が緩んだのか感想を言い合うが、全員が“コーヒー”と呼ばれる黒い液体には

顔を顰めながら閉口していた。


そして局員に促されるように、軽い咳払いののち話の続きを語り始めるーー大谷吉継


「とにかくその場所は、見渡す限りの畑で撒いたばかりの小麦も背が低く見通しが良かった。

そして僕の目は遠くの人間の顔を見分けることができ、あの丘の上に槍を持った兵がいる……

おそらく西軍だと湯浅五助に伝えると五助は走りながら、その男に向かい叫んだ」

とうてい人間の声が届く距離ではない、なのに丘の上の男は振り返り声の主を探し始めた。

そして五助の声に導かれるように合流することができ、このように7人を見つけることができた。

しかし不思議なことに五助の声は、目的の人物に声を届けることができるが、すぐ後ろにいる僕には

何も聞こえてこなかった。

こうして9人になった僕らは、さらに仲間を探していると狼らしき群れを見つける。

奇妙なことに狼だけでなく、緑の皮膚の小人や猪の頭に大きな身体の二足で走る生物も混ざっていた。

その群れは僕らの存在に気づくことなく、はるか前方を左から右へと横切っていく……


「もしかしたら、あっちの方角になにかがあるのかもしれません……行ってみましょう」

9人のなかでもっとも身体の大きな、ここにいる大伴兼興が僕を背負って走りだす。

しばらく走ると、食い荒らされた人間の死体が転がり、この先に人間の集落があると確信する。

予想した通り、遠くに木杭に囲まれた集落が見え男たちが槍や農具で杭の隙間から応戦している。


「急ぎましょう!」

大伴兼興が“ぐんっ”と加速する……ここまで小さくはない自分を背負い走り続け、息を乱すことなく

さらにみんなの前を走る?どういうことだ?驚愕する大谷吉継だが、今は目の前の獣の退治が先だと

切り替えると、全員の武装を確認する。

打刀が4振り、脇差しが5振り、長槍が5竿に弓が2張り……そして種子島が1丁

そして獣の数が、角の生えた狼が6頭、緑色の皮膚をした醜悪な小人が20人ほど、二足歩行の猪が2頭


「いったい奴らは何なのでしょう?あのような生き物は聞いたこともありません」

吉継を背負ったままの大伴兼興が、息も切らさずに問う。


「それを今から確かめようじゃないか……ここに降ろしてくれ」

身を低くして、茂みに隠れる9人 集落を見ると数本の杭が倒され入り込もうとする狼を男たちが必死に

押し返していた。


「一応確認するが、あの獣たちを退け集落の人間を助ける……それでいいのだな?」

大谷吉継が白頭巾の前を開き、全員の顔を見る。

8人が黙って頷くのを見て、集落へと向き直る。


「時間がないようだ……種子島を僕に任せてくれ、弓は湯浅五助と掛井俊成、大伴兼興は打刀を持って

我らの守りを頼む、あとの5人は槍衾だ狼がそこの木を越えたら一斉に突き出してくれ。

もっとも足の速いであろう狼から片付けるぞ」

種子島を受け取り、火種を仕込む……異臭に反応したのか一匹の狼が鼻を上にして空気の匂いを嗅ぐ。




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