強襲
要塞都市フィルドの陥落から数時間が経った。
アーヴィルやスレイたちが占領後の後始末に追われる中、サキルの影武者を務めていた『名もなき者達』の密偵が、擬態の術を解いてサキルと入れ替わる。
「……無事の帰還、何よりです」
暗がりから囁くネレネスの従者の言葉に、サキルは無言で頷き、自らの身なりを整える。
フィルドの要塞自体は連合軍の武力によって攻略された。
しかし、城内の最奥に追い詰められたはずのフィローレ一族は、まるで最初から存在しなかったかのように姿を消しており、誰一人捕えることはできなかった。
部下たちは「秘密の抜け道か」と困惑していた。
ただクレイグがタシュアの手によって空間の狭間へと連れ去られる現場をその目で確かめていたサキルにとって、それは何ら驚くべきことではない。
フィローレの一族郎党すべてが、タシュアもしくはフォーユのによって丸ごと空間の彼方へ連れ去られたのだと容易に察しがついた。
サキルは何食わぬ顔で自室を出て、熾炎隊の幹部たちが集う作戦会議室へと足を踏み入れる。
室内にはスレイをはじめ、隊の主力を担う将校たちが地図を囲んで今後の補給線や占領政策について議論を交わしていた。
「よぉ、サキル。お前の隊は無事だったか?」
スレイが右手を挙げ、普段の調子で聞いてくる。
普段のように言葉や言い方は粗野だが、そこには仲間への思いやりが溢れていた。
「ああ、やはり一定の被害はあったが、それも想定内だ」
故にこそサキルもいつもの冷徹な面持ちでそれに応る。
影武者が何を理由に会議を抜けたのかは予め聞いていた。
「今は俺の隊のことは良い。それよりも会議はどう進んでいる?」
「ああ、今回の戦いで俺ら熾炎隊と綺蓮隊はそれぞれの半数以上の兵が戦死もしくは戦闘不能の多大なる被害があった。だからこの場は他の連合の奴らに任せて両隊はここから撤退することで意見は一致している。この後の連合会議でもそう言うつもりだ」
アーヴィルがそう答える。
「ああ、それがいいだろう。俺にも異論はない」
「ただ他にも決めなくてはいけないこともある。まずはーー」
サキルは軍師として今後の戦後処理や各部隊への采配を下し始めた。
それと同時にサキルは自分がいない間の情報も巧みに聞き出し、自分がいなくなる前とのズレを埋めてゆく。
表面上、サキルがここ数日部屋を空けて異空の攻防へ身を投じていたことなど、誰一人として気づいていないはずだ。
とはいえ用心に越したことはない。
露骨な聞き方はせずに、断片的に聞き出してそのピースをまとめてゆく。
そして会議はあらかたまとまり、最後に自分がいない間に得た最も大きな情報について話し合うことになる。
「我々とは別方面でケルディカ、レデス、ローウェン、レイゼフの四カ国の連合軍が鎮圧に動いたレルフォの乱も少し前の我々同様に乱を起こしたレルフォ一族を居城まで追い込んでいると聞く」
もう一つの連合軍の乱も終息に向かっていることが知らされており、これが『再厄』の動きを掴むための大いなる議題だ。
「ただ戦の最中には『破滅者』やメレーシェル……『夢魔』とミリーレテ……『隷魔』もいたと聞いたが、奴らが本気を出せばそのような結果にはなってないだろうーーこの戦場と同様に」
「……ああ、そうだな。奴らは明らかに手を抜いている。まるで勝つことが目的ではなく、戦を起こすことそれ自体が目的だとでもいうように」
サキルがまとめた概要に、アーヴィルが頷く。
「それは今までこのウィスレの裏で暗躍してきた時と変わらぬように思えるが、今回はーーいや、スロイデルの時からというべき、その意味合いは全く異なる」
「つまり戦を扇動するのではなく、奴らそのものが敵対勢力として相対していることだな。だからこそウィスレ七国が手を組んだわけだ」
サキルの言葉の続きをアーヴィルが継ぐ。
今度はサキルがそれに頷いてさらに続ける。
「それらが示すことはただ一つ。あくまで俺の考えだが、敵は目的に近づきつつある可能性が高い。ならば奴らは今まで通りの戦と戦に暇を挟む余裕をくれるとも限らない」
その言葉の一言一言に力を込め、皆の目を均等に見ながら言う。
戦の終結直後で、皆傷ついた後ーーだからこそ告げなくてはならない。
「今回の戦の戦傷を癒すことに注力して欲しいところだが、『再厄』はその隙間を狙ってくる可能性がある。くれぐれも油断はしないようにしてほしい」
その言葉に皆が頷く。
サキル自身も右眼を白瞳にしたまま、警戒を怠らない模を示している。
故にこそ視えた。
何者かが近付いてきておりーー
「伝令!! 報告いたします!!」
軍幕がばさりと音を立てて開かれ、汗と泥にまみれた伝令兵が転がり込むように駆け込んできた。
切迫した大声が、室内の緊張感を一気に跳ね上げる。
「何事だ、落ち着け!」
スレイが即座に一歩前へ出て伝令兵を制する。伝令兵は荒い息を吐きながら、両手で固く握りしめた書簡を掲げた。
「ケルディカ、レデス、ローウェン、そしてレイゼフの四国が鎮圧に向かわれていた『レルフォの乱』についての緊急報告です!」
レルフォの乱。ウィスレを揺るがしていたもう一つの大規模な反乱であり、四国の名だたる猛者たちが総出で鎮圧にあたっていた戦線だ。サキルは鋭く目を細め、
「……戦況はどうなった。鎮圧は完了したのか?」
「は、はい! 戦闘そのものは完全に終結いたしました! 我が軍の勝利……反乱軍は全滅いたしました! ですが……っ!」
伝令兵は一度固く口を結び、血の気が引いた顔で衝撃的な事実を口にした。
「反乱の首謀者たるレルフォ一族は……降伏を拒絶。主だった幹部から幼子に至るまで、血族の全員が……その場で自害を遂げました! レルフォの血筋は、一人残らず絶滅いたしました!!」
「――なっ!?」
その場の誰もが息を呑んだ。
熾炎隊の面々の顔に、戦慄が広がる。
あまりにも異様で、あまりにも徹底された一族の死。勝利という言葉とは程遠い、胸の悪い静寂が作戦会議が行われている天幕を重く支配した。
サキルだけが、その報せの奥に潜む、あまりにも不気味な「手繰り寄せられた糸」の気配を察し、冷徹な眼光で瞳を深く細めていた。
一族郎党の集団自害による絶滅――あまりにも異様で救いのない報告に、作戦会議室は凍りついたような重苦しい沈黙に包まれていた。
スレイが息を呑み、アーヴィルが眉根を寄せて押し黙る。誰もがそのおぞましい凶報の余波に思考を奪われ、室内の空気は澱のように重く沈殿していた。
だが、その重苦しい静寂の中、サキルの冷徹な思考だけは別の異変を敏感に捉えていた。
右眼の白瞳――風の気流と自らの視野を擬似共有し、大気の流れが触れる万物の挙動や微細な違和感を遠近問わず視界に映し出す特異な能力。その風を媒介とした知覚が、天幕内を巡るわずかな空気の乱れを通じ、目の前の伝令兵の纏う「異様さ」を冷徹に浮かび上がらせていたのだ。
違和感の始まりは、見覚えが全くなかったことである。
サキルは常日頃から軍師として、自軍の兵たちはもちろんのこと、今回の要塞都市フィルド攻略戦に帯同している『綺蓮隊』や他のゼルグ軍の将兵であれば、ほぼ全ての顔と名前、所属、その容姿の特徴を余すところなく記憶に叩き込んでいる。記憶力そのものが彼の戦術眼を支える武器の一つだからだ。
だというのに、膝をつく目の前の伝令兵の顔立ちには、記憶の糸が一本たりとも繋がらなかった。見慣れぬ顔――その事実だけでも、戦時下における警戒心を跳ね上げるには十分だった。
そして、その違和感は風と共有した視覚によって、単なる疑念から確信へと変貌を遂げる。
泥と汗にまみれ、膝をついて肩で息をしている兵士。
一見すれば、死線をくぐり抜けて凶報を届けに来た哀れな伝令そのものに見える。
しかし、男の吐息や皮膚を撫でる大気の流れを捉えると、そこに感じるのは並の兵卒など遥かに凌駕する、底なしの血の匂いと、他者の命を喰らい尽くしてきた獣のような濃密な殺戮の残滓だった。
擬態の術か何かによって表面上はいくらか隠されてはいるものの、纏う空気の重みまでは欺ききれない。気流を震わせる男の存在感は、あまりにも禍々しく歪んでいた。
何より決定的なのは、風が捉えた男の肉体の挙動だった。必死に息を乱す演技の合間に、男の肩や背中の筋肉には微塵の疲労もなく、吸い込み吐き出す呼吸の芯には乱れ一つない。大気の揺らぎは、男がいつでも獲物の喉笛を狩れるような冷徹な余裕と緩みに満ち満ちている事実を如実に告げていた。
……息が上がっている割に、脈動と呼気に乱れがない。それに、大気を震わせるこの気配は。
サキルは机上の地図からゆっくりと顔を上げ、冷え切った眼光をその伝令兵へと据えた。
「おい、伝令」
サキルの低く冷え切った声が、静まり返った室内に刃物のように落ちた。
伝令兵は俯いたまま、怯えたように肩を細かく震わせて「は、はッ」と従順に応じる。
「貴様、所属と名を名乗れ」
淡々とした、しかし有無を言わせぬ詰問だった。
伝令兵は微かに息を詰まらせたが、すぐに取り繕うように上擦った声を上げた。
「じ、自分は……ゼルグ本軍、伝令第三班の――」
「嘘を吐くな」
サキルの冷徹な一言が、男の言葉を無慈悲に切り裂いた。
作戦会議室の空気が張り詰める。スレイが訝しげにサキルを見やり、アーヴィルが鋭く目を細めた。
「俺は今回の戦に帯同したゼルグ軍、そして綺蓮隊の全兵士の顔を記憶している。第三班の伝令兵も全員把握しているが、貴様のような男は登録名簿のどこにも存在しない」
「……っ」
「さらに言えば、四カ国連合軍が動いたレルフォの戦線からの急報を、なぜゼルグ軍の伝令兵が単独で届ける? 他国の伝令隊を介さず、我が軍の伝令が直接持ち帰る筋道など存在しない。……貴様、一体誰だ?」
逃げ場のない論理的な詰問。
サキルの指摘を受け、スレイが弾かれたように大剣の柄に手をかけ、アーヴィルが即座に抜刀の体勢を取った。
室内を取り巻く空気が、凶報への戦慄から一瞬にして臨戦の殺気へと反転する。
見破られた伝令兵は――ゆっくりと、震わせるのをやめた。
俯いていた顔が、徐々に持ち上がる。その唇が、耳元まで届かんばかりに醜悪に吊り上がっていた。
「ケッ……つまらねえな。軍師殿の記憶力ってのは伊達じゃねえってわけか。もうちっと怯えて混乱する顔を見てからバラしてやろうと思ったんだがよ」
ボキボキ、メキメキと、骨が軋み肉が膨張する不気味な音が静寂を破った。
伝令兵の泥にまみれた皮膚が、まるで陽炎のように歪み、音を立てて剥がれ落ちていく。
そこに現れたのは、青白い若者の姿などでは断じてなかった。
顔中から首筋、露出した腕にかけて無数の古い傷跡を刻み込み、野獣のような獰猛な眼光をぎらつかせた、筋骨隆々たる巨漢――。
ただ立ち上がっただけで作戦会議室の天井を押し上げるような、圧倒的な暴力と殺戮の気配が部屋の隅々まで満ちあふれた。
「なるほどなァ……。あのタシュアの変態野郎が、必死になって俺の目から隠そうとしていた『最高傑作』ってのは……てめえのことだったのかよ」
ーータシュア……!? まさか、こいつが……!
その言葉と、立ち上る異様な強奪と殺戮の気配に、サキルの脳裏でクレイグから得ていた情報が激しく結びついた。
あらゆるものを力ずくで奪い去り、破壊し尽くす男
――『再厄』の一角、『破滅者』バルア。
タシュアと同じ災厄の組織に身を置く怪物が、まさに今、目の前に立っている。クレイグの話に聞いていたその凶悪な存在が、自分を名指ししてここに現れたという事実に、サキルは内心で激しく息を呑んだ。
「貴様が……『破滅者』バルアか」
「ほう、俺の名を知ってやがるのか。話が早くて助かるぜ」
バルアは喉の奥から濁った笑いを漏らす。
サキルの胸中に、煮え滾るような衝動が突き上げていた。
あの凄惨な過去、奪われた仲間たち、そして父たるナバの命――タシュアが仕組んだ地獄の底に、同じ『再厄』であるこの男はどこまで関わっていたのか。自分の復讐の標的として、どこまでこの男を切り刻むべきなのか。
今すぐにでも胸ぐらを掴み、その口を割らせ、復讐の真相を問い質したかった。
だが――できない。
今は『熾炎隊』の陣中、アーヴィルやスレイをはじめとする将兵たちがすぐ側にいるのだ。
ここで己の私怨や『再厄』との因縁を露わにすれば、これまで必死に隠し通してきた自らの出自や過去、軍師としての立場すべてが瓦解しかねない。
公の将兵の前で、私的な復讐の問いを投げかけることなど許されない。
喉元まで出かかった問いを力づくで呑み込み、奥歯を噛み締めるサキル。その瞳に一瞬だけ滲んだもどかしさと葛藤を――目の前の獣は見逃さなかった。
「……ハッ、何を押し殺してやがる?」
バルアの口元が、サキルの胸中を完全に暴き立てたように醜悪に歪んだ。
男は掲げた左手を無造作に開いてみせる。
その掌の上に、ゆらりと立ち上ったのは――禍々しく揺らめく、冷徹な『青い炎』。
「ッ……!?」
その炎を目にした瞬間、サキルの脳裏に、かつてすべてを焼き尽くされたあの夜の記憶が鮮血のように蘇った。
どうしてこの男がナバと同じ青い炎を使えるのか。
偽りの冷徹さなど一瞬で吹き飛ぶ。サキルの両目が、怒りと殺意によって燃え盛るように見開かれた。
「貴様ッ……どこでその力を!!」
「いい顔だ、サキル。そうやって牙を剥かねえと面白くねえ」
サキルの剥き出しの憎悪を心底楽しそうに受け止めながら、バルアは嗤う。
「どれほどの極上品なのか、まずは一口『味見』といくかねえ!」
巨漢が地を踏み抜いた。
踏み込みの一歩だけで作戦室の頑強な床板が爆砕し、強烈な衝撃波が室内の書類や地図を巻き上げる。
男の手にはいつの間にか血錆の浮いた無骨な大剣が握られており、それは疾風すら置き去りにする速度で、サキルの首めがけて横一文字に薙ぎ払われた。
単純にして絶対的な質量。触れるものすべてを叩き潰す暴威。
「サキル!!」
アーヴィルが吼え、全身から紅蓮の炎を噴き上げながら割り込む。極限まで白熱させた剣身で、巨漢の刃の軌道を下から強引に切り上げた。
ガギィィィィンッ!!
耳をつんざく金属音が炸裂し、火花が猛吹雪のように飛び散る。アーヴィルの剛腕をもってしても、その一撃の重さに足が軋み、床板を激しく削りながら数歩滑らされた。
「おらぁッ! 舐めてんじゃねえぞ野郎ッ!」
間髪を入れず、スレイが咆哮と共に上段から渾身の大剣を叩きつける。
同時に、サキルも白瞳で捉えた風の軌跡を瞬時に術式へ収束させ、煮え滾る怒りを乗せた不可視の衝撃波の刃を巨漢の死角である脇腹へと叩き込んだ。
ドォォン!!
スレイの剛撃とサキルの術が、寸分の狂いもなく巨漢の肉体に直撃する。
だが――直撃の瞬間、男の纏う異様な波動が物理的な衝撃を強引に喰らい、霧散させた。男の巨躯はわずかに数歩後退しただけで、致命傷どころか皮膚を浅く切り裂いた程度に留まっていた。
「はっ、威勢だけはいいじゃねえか。隊長殿に副官殿か?」
バルアは肩を鳴らし、鬱陶しそうに血の混じった唾を床に吐き捨てた。
だが、その眼はアーヴィルでもスレイでもなく、油断なく距離を取りつつも、瞳の奥に凄絶な殺意を宿しているサキルだけを、底なしに貪欲な光で捉えて離さない。
「いい目だ。死線と憎悪をくぐり抜けて研ぎ澄まされた、極上の獲物の目をしてやがる。……なるほど、あいつが大事に育てたがるわけだ」
「何が目的だ。ここを一人で落とせると思っているのか」
サキルが怒りを押し殺した冷徹な声で告げると同時に、作戦会議室の凄まじい破壊音を聞きつけた外の将兵たちの怒号と、駆け寄る無数の足音が周囲を取り囲み始めていた。
完全武装した熾炎隊と連合の精鋭たちが、瞬く間にこの天幕を幾重にも包囲しつつある。
だが、バルアの顔に焦りの色は微塵もなかった。
彼は天幕の外から響く無数の気配に鼻を鳴らすと、担ぎ上げた大剣を無造作に引いた。
「大軍相手に無駄骨折る趣味はねえよ。今日のところは、てめえの面を拝めただけで上出来だ」
バルアの身体の輪郭が、再び陽炎のように揺らぎ始める。気配を希薄化させ、包囲網の隙間を縫って離脱するための術が発動しかけていた。
去り際、バルアは獰猛な三日月のような笑みを浮かべ、サキルの喉元を指差した。
「ははっ、タシュアの野郎に伝えてやりてえな……てめえの宝物は、俺が横から丸ごと奪い取ってやるってよ。……とにかく次会う時は、お前の中の力ごとお前をいただくぞ、サキル」
喉を震わせる哄笑を残し、バルアの巨躯は霧が晴れるようにふっとその場から掻き消えた。
直後、軍幕を引き裂いて突入してきた兵士たちが武器を構えて雪崩れ込んできたが、そこには破壊された床板と、焦げ付いた空気の残滓が漂っているだけだった。
「……追うな! もう奴の気配はない!」
アーヴィルが兵たちを制し、苦々しげに剣を鞘に納める。
スレイもまた、痺れの残る両手を握り直しながら吐き捨てた。
「化け物め……あんなデカ物、一体どこから紛れ込んできやがった」
騒然とする作戦室の中で、サキルだけは右眼の白瞳を静かに収め、バルアが立っていた虚空を冷たく見つめ続けていた。
脳裏に焼き付いたあの青い炎と、男が残した嘲笑。
タシュアが育て、バルアが奪おうとするもの。
自分自身すら完全には把握しきれていない、自らの内に眠る「力」。
そして、『再厄』の怪物たちが、互いを出し抜いてまで自分を狙っているという事実。
レルフォの全滅という凶報、そして突如として姿を現した新たな災厄の影。
張り巡らされた悪意の糸が、確実に自分を中心に引き絞られつつあることを、サキルは骨の髄まで理解していた。




