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2.昨日を知っている男

見たことのない男が現れた。

こんな男は、確かに昨日まではいなかった。

さえない中年男。

白髪交じりの髪で、くたびれた服を着ている。


「私の未来を占ってほしい。」


男はそう言って、椅子に腰かけた。

私はいつものように占ってみた。

しかし数分後の未来も数十年後の未来も見えない。

数十年後の未来がない人でも、数分後の未来は見えるはずだ。

この男には、どちらの未来もないのだ。

まるで時が止まってしまったように。


男は小さく笑って、

「やっぱり、私の未来は見えないんだね。」

「君も昨日を覚えているんだろう?

私も、昨日も明日もどうなるか、知っているよ。」


私は、驚いて固まった。


男はしばらく黙っていた。

いつものように、子供のはしゃぐ声、店主の怒鳴り声、楽師の曲も聞こえる。

男は、じっと考え、そしてぽつりと言った。


「......迷っているんだ。

この先に進むと、とても不幸になる人がいる。

できればその人が幸せになるようにしたい。

だけどそれは、運命に逆らうことだ。私にはそれが出来ない。

どうしたら救われるのか、わからなくて先に進めないんだ。」


「君ならどうする?」


難しい質問だ。私は、占い師であって、人生相談は得意じゃない。


「不幸なことは、そこら中にあります。

でも嬉しいことだって、同じようにあるんです。

辛いことがあったって、生きていれば、いつかは忘れられると思います。

人によってかかる時間は違うでしょうけど。

私も両親が亡くなって、独りぼっちになったときは、神様を恨みました。

でも今ではこうして、穏やかに暮らしています。」


「生きていれば......。そうだね、占い師さん、ありがとう。

占いじゃなかったけど、これ相談料。助かったよ。」


「ありがとうございます。」


男は人混みの中へ消えていった。

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