マナーの勉強しないとダメですよ!
アークさんたちとレイトさん、そしてわたしが話をしていると、列の後ろの方からミリカさんが飛んできた。
「ちょっと待った!504番君はウチのパーティーが欲しいんだけど!」
ミリカさんの勢いに、列にいた人がみんな固まっている。
「504?」
「あ、えっと君名前は?」
ミリカさんに追いついてきたケントさんとニックさんが、レイトさんに声をかけると、彼はわたしの背中にまたもや隠れながら
「レイト‥クレイ・アルファスト、と申します。」
とご丁寧に、フルネームで自分の名前を名乗った。
もちろん小声で。
「レイトくん、君を白狼が預かって育てたいと思います!ぜひウチに来てください!」
ミリカさんが右手を差し伸べて元気に挨拶をする。しかしその声に、
「そっちこそ、ちょーっと待ったー!」
とアークさんが叫んだ。
「レイトは、今セリちゃんから直接めんどー見て欲しいっつーて、ウチのパーティーに入ることになったんす。いくらエリートの白狼さんだって、横から掻っ攫うの良くないって思います!」
いやいや、アークさん。そこまで話はしてないから。
そんな様子を、ジルさんがため息をつきながら見ていた。ウー、またもや応接室に呼ばれる状況になってしまった!
「で?今度は何があったんだ。」
1人がけソファーには、窓を背にしてギルドマスターのジルさん。長いソファーには、白狼さん3人と、向かい側にアークさんとダンさん。そしてその後ろにわたしが立ち、わたしの背中にレイトさん。トリガーの女性人3人は、わたしの周りで、なんとなくレイトさんにちょっかいをかけている。
「えーっ、年上苦手なんですかー?」
わたしの説明を聞いてミリカさんが大声で話す。
「しかしなー、冒険者としてこれから働くなら、大人ともちゃんと付き合えないと。面接の時はなんとか話していたじゃないか。」
「あれは、その、たくさん練習、して。騎士団、受けられ、なかったから、仕事、しなくちゃ、って、頑張って、受けました。」
「でも、おウチ貴族なんでしょ?働かなくても。」
レイトさんの隣に立っているスピカさんに声をかけられる。はじめはちょっとビクついていたけど、わたしと同じ年下と分かったからか、それとも慣れたのか、
「ウチは田舎貴族で、そんなにお金持ちじゃないし、家には兄が2人いて、妹たちもいるから、ボクぐらいは王都で何か仕事しなくちゃって。」
レイトさんが頑張って答えると、
「エライ!」
とミリカさんが叫ぶ。
ミリカさん、年上のことよりもその大きな声が、たぶんダメなんだと思う。
「なるほどな。で、トリガーはコイツの面倒見られるのか?」
ジルさんがアークさんに尋ねる。
「面倒っていうより、俺たち同い年だから、ふつうに仲間が増えたーって感じて、やってけると思うんですよね。」
ダンさんがニカっと笑って答えた。ダンさんはアークさんが瀕死になった時に、ギルドに運んだ青年で、若いけど気が利いて、すごく面倒見がいい。ダンさんの答えに、アークさんもうんうん、とうなづいている。
「それにセリちゃんの紹介だもん、可愛がるに決まってるじゃないっすか!」
アークさん、なぜにそこでわたしが?と疑問の顔を浮かべたら、隣にいたリリさんが、
「命の恩人。」と答える。なるほど。
「でも、ミリカ姉さんが欲しいくらい、コイツ優秀ってことっすよねー。」
うん、対人関係以外はね。
「剣や魔法もすごいけど、俯瞰して物事見られるし、知識も高いから作戦立てるのとかにも向いてると思うんだよね。ウチのリーダーみたいに。だからリーダーに育ててもらったらどうかな?って思ったのよー。」
わたしはミリカさんが欲しがった理由を聞いて、なるほどとは思った。しかし、それ以前にまずは対人スキルをあげないと。
「大丈夫っす。これからオレら強くなって白狼さんたちみたいになるんで。その時までに、コイツがもう少しマシに誰とでも話できるようにします。で、すっごく作戦ないとできない迷宮にも入ります。そしたら、オレら無敵のSランクパーティーなるんで!」
アークさんが、ニカっと笑ってミリカさんに答えた。かなり、根拠の怪しい答えだけど。
「でもまあ、君たちトリガーがこれからドンドン強くなって、あと何年かして、貴族とかの護衛を任されるくらいになるまでに、彼にマナーを教えてもらうのもアリかもね。」
「確かに。もう少し、言葉遣いを学ぶのも大事だなー。」
白狼3人が大人の余裕でわらっている。流石、もうすぐアラサーになる大人のパーティーだ。今回は大人の余裕の白狼がひいて、余裕のない?まだドタバタ気味のトリガーがレイトさんを預かることになった。
「しかし、君たちだってもう17、18だろう?後輩もずいぶんと入ってきてるんだから、言葉遣いも勉強しないとダメだぞ。話す相手が目上なら、言葉使いにも厳しい人はいる。白狼が許しているが、本来ならもう少し大人の話し方を学びなさい。」
最後にジルさんがそう言って、トリガーは受けた依頼に、白狼は依頼を探しに下に降りて行った。




