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モデルやってもいいですか?

学院に入って半月が過ぎた。今のところレイトさんに聞いていたようないじめには遭っていないし、わたしの周囲でも見かけない。

まあ、そこそこ身分の高いお嬢様たちの、ちょっとしたイザコザは見かけるが、ラノベの悪役令嬢みたいで可愛いものだ。


ルームメイトのアンナも「ですわ。」と言った口調で話すので、お嬢様というのはああいうものなのかもしれない。今週から選択授業の見学が始まり、仲の良い子たちがグループで歩く姿を見かける。アンナもお茶会やパーティーに誘ってもらいたいなら、ああいう令嬢と仲良くなれば良いのに、なぜか彼女はいつもわたしと一緒にいる。


選択授業の見学で、わたしが化学を見たいと言ったら、女子は他に誰もいなくて、わたしたち2人だけだった。アンナはといえば、将来有望な男性と知り合えるチャンスかも、と化学の授業を取ろうか、と真剣に考えていた。他にも数学や経済学、乗馬、剣、天文、魔法学というクラスばかりなのに、楽しそうに着いてきた。

まあ、いいか。

女子の大半は、手芸や音楽、詩、園芸、料理、演劇と言った女性らしい教室を見て回っている。魔法学は貴族の嗜みなのか、男女半々だった。

結局、わたしは化学と乗馬、魔法学を選んだ。アンナは乗馬は怖かったのか、化学と魔法学、そして園芸を選んていた。演劇は、自分が舞台に立つと思うと恥ずかしくて、見学だけで終わった。履修することはなかった。


化学と魔法学は共通するところがあり、なかなか興味深い。少しでも回復魔法を多く覚えて、1人でも多くの冒険者を救えるようになりたい。

乗馬は前世からやってみたかったので楽しみだ。

選択授業は毎年変えられるので、来年は剣もやってみたい。


選択科目が決まり、初めて乗馬のクラスに行くと、女子はわたしの他に3人いた。2人は地方の領主の娘だった。貴族でも地方になると、どうしても移動手段が限られる。自分で馬が乗れたら便利、と考えるようだ。もう1人は会ったことのある少女で、まさかこんなところで、会うとは思わなかった人だ。


「ごきげんよう、サイレント侯爵令嬢アイラ様。」

わたしが背中から声をかけると、アイラは驚いて振り向いた。アイラはわたしがギルドの受付嬢であることも、アルカナの孫であることも知っている。普段は違うクラスなので、滅多に会わないと思ったのだが。それにしても、なぜ乗馬?馬車が似合うようなご令嬢の中のご令嬢なのに。

と、心の中でく苦笑した。

他の女子が2人仲良く話していると、アイラとわたしはどうしても取り残される。


初めは、馬との触れ合いなど、基本的なことを説明される。自分の背よりも大きい馬は、近くで見ると結構怖い。

2人1組で馬とスキンシップを取るよう言われ、アイラは渋々わたしと組んでくれた。ありがとう。


「あなたも伯爵家の娘なら、ギルドの受付嬢なんておやめになったらいかがです?」

アイラが小声で話しかけてきた。

「申し訳ございません。祖父の意向なのです。」

わたしがそう答えると、アイラは目を丸くしてわたしを見た。

「でも、次期侯爵夫人となる方がギルドでお仕事なんて。」

おっと、アイラはテイルのことも知っていたのか。

「そのお話は、残念ながら無かったことになりました。」

そう、学院に来る前にテイルはわたしの気持ち考えて解消してくれたのだ。

「あ、あら残念でしたわね。」

アイラはそんな話をしながらも、馬の首を優しく撫でている。器用なお嬢様だ。

お互いニッコリ微笑みながら、微笑ましく馬に触れているが、話している内容は、他の人には聞かせられないような、なかなか辛辣なものだ。

「アイラ様は第三皇子殿下とのが婚約のお話があるとか。」

わたしも負けじとやり返してみた。

これが貴族の令嬢たちのやり取りか、と思いながら。

アイラは本来なら皇太子殿下の婚約者候補だったが、皇太子が地方の伯爵令嬢と懇意になり、王都にいた貴族のご令嬢たちは全員振られたらしい。

そこで、次は第二皇子、第三皇子と婚約者候補や、婚約者が変わって行く。全て政治絡みだと思うと、なんか気の毒になる。

皇太子を射止めた地方の伯爵令嬢の親は、してやったりと言ったところだろ。

「私の祖父母は、とくに貴族に拘りはございませんので。」

今日の最後の課題は、馬にブラシをかけることで終わった。早く乗りたい!


週末1日目の朝、わたしはギルドの入り口並ぶ冒険者たちに唖然となった。

「何?この行列‥。」

わたしはギルドの裏から中に入り、すでに出勤しているリシィさんに尋ねる。

「あー、あれな。前回セリナに会えなかったからって、今日を狙ってきた冒険者が、集まってきちゃったのよ。受付嬢冥利に尽きるわね!」

リシィさんが呑気に答えた。


前の週末はマリーさんの服飾工房に行ってからギルドに行ったので、あまり冒険者には会えなかった。翌日は冒険者の依頼はお休みで、報酬を受け取りに来る人と、事務作業だけだった。そのため、あまり冒険者と再開することのない2日間だった、ら


しかし、わたしがギルドに戻っていることを知った冒険者が、週末目当てに予定を変更して集まってきたらしい。そんな人気プラモの販売日じゃないんだから。


わたしが受付席に着くと、なぜかわたしの受付に長蛇の列ができる。

「こちらならすぐに受付できますよー。」

ルリアさんが叫んで誘導する。

初めて受付する冒険者の中には、ここに並ぶものなのか、と思った人もいるようだ。ただ、わたしの列が長くなることには、他に理由があった。一人一人、依頼を受けて終わりではなく、何かと話しかけてくる。

「セリナー、大きくなったなー。」

一カ月でそんなに変わらない!

「セリちゃん!今度お嬢様のお友だち、紹介してよー。」

こっちが紹介して欲しいわ。

などなど、みんな一言二言。そのままミリカさんの番になった時、後ろから、パーンという大きな音がした。

「はい、冒険者の皆さん。ここはギルドの受付です。おしゃべりがしたければ、外にいる商店の女将さんたちに声をかけましょう!」

と、バンさんが持っていたハリセンのようなものを机に叩きつけて言った。

バンさん、ジルさんに似てきたね!

ようは、みんな久しぶりのわたしと話したかったらしい。


「それにしても、今日は冒険者の方多いですね。もう掲示板の依頼、ほとんどないです。」

ルリアさんと一緒に受付窓口に座っていたミセリさんが言った。彼女はわたしとすれ違いで、ここに入った新人受付嬢。年はわたしと同じ15歳。

まだ、ひと月経ってないので、ルリアさんが付いて指導している。

ミセリさんの言葉にルリアさんも、他の人も苦笑している。


依頼の受付が終わったのはお昼過ぎだった。午後は依頼終了の報酬を受け取りに来る人ばかりだ。

「お昼行こう!とリシィさんに誘われ外に出ると、ちょうどトリガーと白狼のメンバーが話をしていた。トリガーは昨日の夕方大きな依頼を終えて、報酬を取りに来ていた。

「白狼さん、まだいたんですか?」

リシィさんに言われ、ミリカさんがグルンと首をこちらに向ける。??

「ひどいじゃない、みんな!」

えっ?何?

「聞いたわよ!ファッションショーのモデルのこと!どうしてわたしを誘ってくれなかったの?」

ミリカさんの叫びに、わたしたちは一瞬無言になる。


しばらくして、

「えっと、ミリカさん。モデルやりたいんですか?」

わたしは恐る恐る、ケントさんたちの顔色を伺いながら尋ねた。









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