コルセットで締めつけて良いですか?
トリガーの男性3人は報酬を受け取りにギルドへ。白狼の2人はミリカさんを置いてお昼をとりに、近くの定食屋へ行った。
わたしたちは、ギルドの前にある、女性冒険者御用達カフェ「SAO」に入る。
御用達とあり、ある程度大人数で座れる席もあり、ミリカさん、リシィさん、トリガー3人娘とわたしの計6人は座り、ランチメニューを頼んだ。
「えっと、ミリカさん、モデルの話どこから聞いたんですか?」
わたしはトリガーの3人をチラッと見ながら質問する。エリーさんたち3人は顔の前で手を合わせて、ごめんなさい、と唇で合図してきた。
まあ、ミリカさんに詰め寄らられば、言わないわけにいかないだろう。わかる。気持ちはわかる。
「でもねー、ミリカさん。ライラさんやルリアさんたちにもわたしは声かけてないよ。」
リシィさんが援護射撃をしてくれた。ミリカさんは、そうなの?という顔になったが、しばらくすると
「ルリアはいいのよ!人妻なんだから!」
と叫ぶ。どうも、先越されたことはまだ根に持っているみたいだ。
「でも、今回のコンセプトはデビュタント、成人の儀のドレスだものねー。」
と、一番言いづらいことをリリさんが言ってくれる。
「わたしたちだってギリ10代だからセリちゃんに頼まれたけど。」
さらにエリーさんが追い討ちをかける。
「成人‥。」
「うん、ミリカさん、もう10年以上前でしょ?」
スピカさんがとどめを刺した。コラコラ、わたしでも言いにくいことを、なんて恐れ知らずな3人娘だ。
3人娘の言葉にミリカさんの頭が真っ白になった。
「おばさん、おばさん‥。」
と呟く。いや、誰もそうとは言ってないよう!
その後、ミリカさんはランチを半分も残して、1人お店を出てしまった。
「どうしよー。」
とリリさんが言うが、リシィさんは大丈夫と強くうなづいて、立ちあがろうとしてたリリさんの肩に、ぽんと手を置いた。
その後、私たちは夕方に服飾工房である、リハーサルの予定について話をしてギルドに戻った。
翌週の週末1日目、街はたくさんの屋台や出店がもうすぐ始まる祭りの準備に賑わっている。元は秋の豊穣と収穫を神様に感謝したことが始まり、とされている。
祭りが始まると、あちらこちらでパレードや催しが始まりは。
服飾工房では、まず午前中は古着のリメイクや、街の人でも購入しやすい規制服のドレスを着たわたしたちが、チラシを配りながら午後のショーの宣伝をする。
今までは成人の儀の時、お金がないと古着をただ購入するだけだった。しかし、ここでわたしは前世の記憶の中からリフォーム、リメイクという考えを引っ張り出した。下町の女の子は、古着をリメイクしたドレスを見て、自分もやってみたい、と目を輝かせていた。
古着のリメイクは、春までの半年間に服飾工房で銅貨一枚でお願いすることができるようにした。また、希望者には、ワークショップも開くことを考えている。
また、規制服の方もオーダーメイドのドレスと違い、銀貨一枚以下で購入できることを知り、商店街で働く女の子からかなり注目されている。
そして午後、広場の舞台の上で、いよいよショーが始まる。ここでは、学院の女の子や貴族の女の子、裕福な家庭の子たちが楽しみにしている、デビュタントのドレスだ。
学院の授業て、ダンスやマナーを習い始めた。今まで、ろくにやってこなかったわたしは、はっきり言って落ちこぼれだ。しかし、今日はアンナやなぜか参戦してきたアイラ、他にも数名の学友を募り、ショーでドレスを披露する。ここからはヒールの高い靴、コルセットで締め付けるウエスト、ととてもではないがトリガーの面々にはお願いできない。
足をガクガクさせながらも、わたしは彼女たちといっしょに、服飾工房自慢のドレスを着る。客席には、すでに着替えたリシィさんが、冒険者の女性たちやギルドの人と他人事のような顔でら見ている。
後から聞いたところでは、ルリアさんたちに
「リシィたちは出ないの?」
と聞かれたらしい。午前、午後通しで出ているのはわたしだけで、午前のパレードは冒険者とリシィさんたち。午後は学院の友人がモデルになった。
シリカはデザイナー兼メイクと着付け担当で、わたしのウエストをさっきからギュウギュウに締め上げている。肋骨が折れる〜!
リシィさんたちは、コルセットやヒールの高い靴のことを知った途端に、ショーのモデルに関しては丁重にお断りしてきたらしい。わたしには有無も言わせなかったのに!
「どうよ?セリナに合うと思って、デザインしたドレスは!」
シリカは自信満々だ。薄いピンクにたくさんの小さな花の刺繍、そしてリボンが蝶のように舞ったドレス。背中のウエストには大きなリボンが結ばれている。裾にはフワッフワのレースのフリル。可愛すぎる〜!これはどう見ても、成人というより七五三っぽい。
しかし、そんなわたしの心配をよそにアイラが予想外の演出をしてくれた。濃紺の大人っぽいドレスを着たアイラが指先をう上に向けると、舞台の上にたくさんの花びらが舞い始めたのだ。
観客の人はその様子に、大きな歓声を上げている。
さすが、侯爵令嬢。魔力量も質も半端ない。
観客席のスピカさんたちも、リシィさんたちもこの様子に見入っているのがわかる。服飾工房の人も一瞬目を奪われていたが、さすが商人。そのあとは、身の前に金貨がちらついているようだ。
午前中のパレードと言い、午後のショーと言い、服飾工房が仕掛けたドレスの発表は大成功。翌週の週末、服飾工房で仕事をするマリーさんの弟子たちが、コナンパンで朝食をとるわたしのところに、注文が殺到しているとの報告に来てくれた。
今回わたしが提案したのは、実際の人に着てもらうモデルという考え方。既製服、リメイク、そして今まで不可能と思われていたドレスのデザインの実物化だった。最後の一つは、前世の家庭科教師というより、大学卒業の時の論文が役に立った。ありがとう教授!




