第10話 ダンジョン・鉱脈の洞穴攻略後編
これでまたうっかり動きすぎたことはなくなったな。
そう思っていたが、ゴブリン・アーチャーの血液でツルハシの持ち手を滑らせてしまい、前に倒れながら飛ばされていく。
しまった! 瞬発力を強くした上に地面を蹴ったから、前に飛んでしまう!
そう思いながら落下の衝撃に備えて身構え、構えてから数秒で地面に背を叩きつけられてしまった。
背中からくる衝撃に激痛が走り、俺はうめき声をあげる。
「ってぇぇぇ……!」
俺はうめき声をあげながら転がり、俯けながらあたりに漂う鉄さび臭さを感じてしまう。
うぅ……さっきので感じていなかったが、頭を勝ち割った触感がまだ手にあるし、血生臭さで胃液がこみ上げそうだ。
そう思いながら起き上がり、背中の痛みを和らぐために詠唱する。
『無力神トリグラフの名の元に命ずる。傷を治す光を放て! 小回復!』
詠唱し終えると緑色の光が発せられ、そのまま背中に当てると背中の痛みが和らいでいく。
ふぅ……ゴブリン・アーチャーとの戦闘で余計なダメージを受けてしまったが、謎の弓とゴブリン・アーチャー死体を売れば臨時収入を得ることができそうだな。
そう思いながらゴブリン・アーチャーが持っていた弓を拾い、じっと見ながら考える。
う~ん、弓をじっくり見ても詳細が全く分からないな。
鑑定系の能力は持ってないからどうやって見れば今のところ分からないし、これらはアヴィドに見せてからにしよう。
そう思いながら弓矢とゴブリン・アーチャーの死体をボックス内に収める。
アイテムをボックス内に収め、ツルハシを肩にのせながら鉱石に近づく。
ざっと見れば結晶に見えるが、回収して見れば分かるか。
そう思いながらツルハシを構え、ひび割れがありそうなところを目掛けて力いっぱいに振り下ろす。
ツルハシの先端がひび割れに刺さり、ひびが広がって砕けて散る。
結晶の欠片が足元に転がりきて、俺は慌てて後ろに下がりながらつぶやく。
「おっと、少し危ないな」
俺はそう呟きながら転がってきた結晶を拾い、全て『アイテムボックス』のボックス内に収めていく。
足元に転がった結晶の欠片を数分で集め終え、画面に表示されているアイコンの内結晶のアイコンをタップする。
すると結晶のアイコンから名前が表示され、俺は表示された名前を読み上げる。
「えっと、クール鉱石?」
俺はそう言いながら名前の次に概要を見る。
何々……クール鉱石は氷の魔力がしみ込んでおり、砂漠の遠征の冷却材として使われている。
なるほど、弾丸すれば属性攻撃を行えそうだな。
そう思いながら見るのをやめ、再びランタンを持って歩き始める。
***
鉱脈の洞穴を探索してから早五時間ぐらい経ち、今は壁を背に座っている。
あれから様々な魔物と遭遇し、そいつらを小魔盾や『肉体能力強化』を駆使して倒してきた。
ゴブリン・ファイターやゴブリン・ソードマン、動く白骨遺体・スケルトン、体が人間で頭部が犬の形をした怪物・コボルト、ぼろマントを羽織った小人・ノッカーだ。
今『アイテムボックス』のボックス内には採掘した鉱石と魔物の死体だけだ。
ボックスに入れれば自動的に解体されると思っていたが、そのまま保留されていくらしい。
だけどボックス内だと時間が経たず、死体や素材を腐敗せずに済むからありがたい。
マァ、渡すときに死体が現れたら驚きそうだな。
そう思いながらパンを頬張り、今まで採掘した鉱石の名前と概要を読み取る。
〇灰鉄鉱石……鉱石の中で多く取られており、剣や鎧などの装備やのこぎりやトンカチなどの道具の元になっている。
○赤火鉱石……火の魔力が染み込んだ鉱石で、魔力を流せば火を纏わせる事が出来る。
○緑風鉱石……風の魔力が染み込んだ鉱石で、魔力を流せば風を纏わせる事が出来る。
○黄土鉱石……土の魔力が染み込んだ鉱石で、魔力を流せば土を纏わせる事が出来る。
○蒼雷鉱石……雷の魔力が染み込んだ鉱石で、魔力を流せば雷を纏わせる事が出来る。
○爆熱石……衝撃を加えると爆発する鉱石で、魔力を纏わせれば爆発することはない。
○魔結晶……像魔・ゴーレムの核になる結晶で、魔力を流せば操作することが出来る。
俺は入手した鉱石を見ながら思う。
いや~ざっと五時間ぐらい潜ったが、これほど大量に取れれば色んな兵器や属性攻撃を行えそうだな。
そう思いながら『アイテムボックス』の画面を閉じ、ランタンとツルハシを持って立ち上がる。
さて、五時間ぐらい潜っていたから、そろそろここから出るか。
入ったのがざっと午前十時くらいだから、今は午後三時くらいになってそうだな。
そう思いながら出入り口に戻ろうとすると、奥からいびきが聞こえ出す。
俺はそれを聞いて首を傾げる。
何だ? もしかして奥に何かがいるのか?
そう思いながらいびきがする方向に歩き出す。
武器はツルハシと小魔盾のみだが、『肉体能力強化』で瞬発力と俊敏性を強化して逃げれば良いだろう。
そう思いながら歩いていると、いびきをかいている魔物と美しい景色が映っていた。
そこは鉱脈の洞穴の奥である湖で、水面が隙間から漏れている光りを反射して静寂な雰囲気を感じそうだが、静寂をかき消すいびき声が響いていた。
額に赤い宝石が埋め込まれた毛むくじゃらの巨獣で、大きないびき声を上げながら寝ていた。
俺は岩陰に隠れながら書物を取り出して確認する。
確かあれはカーバンクルと呼ばれる魔物だが、書物に書かれているのは子リス程度のサイズで、湖にいるのは最大で大人三人ぐらいのサイズだぞ?
もしかして新種の魔物とかそんな感じじゃないよな? どんな能力を持っているか分からないから、ここは逃げた方が良さそうだな。
そう思いながら湖から離れて行こうとするが、奥から詠唱の声が聞こえ出す。
『疾風神ストリボーグの名の元に命ずる。空気の塊を放て! 空気塊!』
詠唱が終わると奥から空気の塊が俺に向かってきた。
俺はそれを見て慌てて驚いてしまう。
「うわっ! 危なっ!?」
俺はそう言いながら慌てて避け、空気の塊に直撃せずにすんだ。
しかし足を滑らせ、湖まで転がり落ちてしまう。
俺はそれを見て叫んでしまう。
「し、しまったぁぁぁぁぁ!?」
俺はやってしまったと思いながら叫び、そのまま湖にダイブしてしまう。
それを見た俺は慌てて右手を湖に向けて詠唱する。
『無力神トリグラフの名の元に命ずる。攻撃を防ぐ魔力の盾を生み出せ! 小魔盾!』
詠唱し終えると盾が現れ、俺は盾の縁を掴んで湖の着水を防ぐ。
ふぅ、湖に落ちずにすんで良かった。
このまま落ちたらずぶ濡れになってしまう所だったな。
そう思いながら盾の上に乗り、一息ついて安心する。
さて、『肉体能力強化』を使って湖の浜辺に戻ろうか。
そう思いながら『肉体能力強化』の画面を開こうとすると、空を裂く音が聞こえ出す。
この音は確か矢が飛ぶ音だったはず……って、まずい! このまま見逃したら――!
そう思いながら『肉体能力強化』の画面を開こうとするが、間に合わず矢が巨獣の片に刺さってしまった。
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