第6話 トーコ
ルカと分かれ、執務室に戻ると、トーコがいた。
「あら。スガルさん。仕事上がり?」
「あぁ……」
彼女はのんびりと紅茶をすすっていた。
元々は情報部にいたというトーコは、掴みどころがなく、距離感が測れない。
「……」
「……」
黙って自席で事務処理をしていると、隣の席のトーコがニコニコとこちらを見ている。
「なんだ?」
尋ねると、トーコは頬杖をついた。
「聞いてほしい?」
「何を?」
「噂のこと」
「……知ってたのか」
俺はペンを置く。トーコは笑みを深めた。
「もちろん。有名よ?最強の魔法使いが仲間を見殺しにしたって」
「そうか」
「見殺しにしたの?」
「……」
今まで、俺にこんな風に聞いてくる同僚なんていただろうか。
困惑している俺に、トーコは見透かしたように言った。
「してないんでしょ?」
思わず息を詰める。
「……なんでそう思う」
「じゃなきゃ、楓があなたを受け入れたりしないわ。何があったの?」
トーコは質問を重ねる。
「……」
「元スパイには話したくない?スパイは信用ならないから」
「そんなんじゃない。つまらない行き違いなんだ」
「それは聞いてみたいわ」
俺は、彼女の押しに負けた。




