第5話 白ひげの老人
指示された場所は、森にある湖だった。
湖のほとりに立ち、周囲を探る。
視線を感じ、目をやると少し離れた木の後ろに人影が見えた。
白ひげの、小柄な男。
そして魔法を展開する動き。
「下がれ」
強い光が、ルカをめがけて飛んでくる。
俺はルカの前に出て、防御魔法を展開した。
敵から放たれた光が、目の前で弾かれる。
「速い……」
後ろでルカが呟いている。
白ひげの老人は俺を一瞥すると、外套を翻して去っていく。ほかの敵も、それに続いて引き上げていった。
「あのじじい……」
見覚えのある後ろ姿に、俺は舌打ちをする。
「知っている魔法使いですか?」
「名前も知らねぇ。……ただ、強い。あいつが来たら、いつも俺が呼ばれる」
あの老人の戦い方は実に合理的だ。俺には敵わないと分かっているのか、俺を確認するとすぐに撤退する。
「……攻撃、俺狙いでした」
「そうだな」
ルカは悔しそうに遠くを睨んでいる。
おそらく、あいつは倒せそうな方を攻撃したのだろう。
「念のため巡回してから帰るか」
「スガルさん」
「スガルでいい。じじいに遭遇するとまずい。離れるなよ」
「……はい。スガル」
ルカは呼び直した。
「なんだ」
「助けてもらって、すみません。ありがとうございます」
「……別に、礼なんか要らない」
巡回中、俺たちが会話することはなかったが、戦闘部のときに感じた居心地の悪さはなかった。




