表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/12

第2話「秘密の姉――プロデューサーとの約束」


前回は、主人公・柊木一眞が通う高校で、「Five Melody Project(FMP)」が高校生たちにとって憧れの存在であることが描かれました。


しかし、一眞には誰にも明かせない秘密があります。


それは、FMP総責任者兼プロデューサー・柊木沙織の実弟であるということ。


学校では普通の高校生。


放課後はトップアイドルたちが集う世界へ。


第2話では、一眞がFMP本部を訪れ、創設者・安本康晴、そして姉・沙織と再会します。


学校では決して見ることのできない、もう一つの日常が静かに幕を開けます。


それでは、第2話をお楽しみください。



午後四時。


終礼を終えた生徒たちは、それぞれ部活動やアルバイト、帰宅の準備を始めていた。


「一眞!」


教室を出ようとした一眞に、親友の佐伯健斗が声を掛ける。


「今日も真っすぐ帰るのか?」


「うん。ちょっと用事があって。」


「相変わらず謎が多いよなぁ。」


「そんなことないって。」


「部活も入ってないし、放課後はいつも予定があるし……彼女?」


「違う違う。」


「怪しい!」


そこへ大野翔太も加わる。


「そういえば一眞って芸能人とか興味ないの?」


「普通かな。」


「えぇー!」


「俺だったらFMPの誰か一人でも会えたら人生終わってもいい!」


「大げさだな。」


「いや、大げさじゃない!」


健斗が力説する。


「HONEY BLOOMだけでも神なのに、SUGAR RIBBONもCHERRY SMILEもMILK CROWNもPEACH MELODYもいるんだぞ!」


「合同ライブなんてチケット倍率五十倍以上らしい!」


「俺、三回応募して全部落ちた……。」


「私も!」


近くを歩いていた女子生徒たちも会話へ入る。


「私はPEACH MELODYのファンクラブ入ってる!」


「私はMILK CROWN!」


「えっ!? 握手会行った?」


「行った行った!」


「白雪澪ちゃん、本当に天使だった!」


「九条琴葉ちゃん、テレビのまま!」


「若葉結菜ちゃんも可愛かったよ!」


「羨ましいー!」


廊下はまるでアイドル談義の会場だった。


一眞は心の中で苦笑する。


(みんな、本当に楽しそうだな。)


(でも……。)


(まさか今から、その人たちに会いに行くなんて言えないよな。)


「じゃあ、また明日!」


「おう!」


「またね!」


友人たちと別れ、一眞は駅へ向かう。


電車に揺られること約二十分。


都会の高層ビル街。


その一角に建つ大きなビル。


ガラス張りの近代的な建物には、大きく英字で書かれていた。


『GRT ENTERTAINMENT』


Five Melody Projectの本部。


全国のアイドルファンが一度は訪れてみたいと憧れる場所だった。


一眞は慣れた様子で受付へ向かう。


「こんにちは。」


受付スタッフは一眞の姿を見ると笑顔になった。


「お疲れ様です、一眞さん。」


「沙織プロデューサーがお待ちです。」


「ありがとうございます。」


エレベーターで最上階へ。


扉が開くと、広々としたフロアが広がっていた。


スタッフたちは忙しく動き回り、資料を抱えて行き交う。


「お疲れ様です。」


「こんにちは、一眞くん!」


「学校帰り?」


「はい。」


すっかり顔なじみになったスタッフたちが自然に挨拶してくれる。


その奥にあるプロデューサー室。


コンコン。


「失礼します。」


「おかえり。」


優しい声とともに迎えたのは、一眞の姉。


柊木沙織。


スーツ姿でパソコンに向かっていた沙織は、弟を見ると表情を緩めた。


「学校はどうだった?」


「いつも通り。」


「またFMPの話?」


「朝から帰りまでずっと。」


「ふふっ。」


沙織は思わず笑う。


「それだけ愛されてる証拠ね。」


「でも正直、大変そう。」


「何が?」


「学校のみんな、FMPのことになると止まらない。」


「もし俺が姉ちゃんの弟だって知られたら……。」


「大騒ぎになるでしょうね。」


二人は顔を見合わせて苦笑した。


その時だった。


コンコン。


「失礼します。」


部屋へ入ってきたのは、一人の男性。


優しい笑顔を浮かべながら歩み寄る。


「久しぶりだね、一眞くん。」


「安本さん。」


Five Melody Project創設者。


そして日本を代表するプロデューサー。


安本康晴。


「学校生活には慣れたかな?」


「はい。」


「友達は?」


「たくさんいます。」


「それは良かった。」


安本はソファへ腰掛ける。


「一眞くん。」


「はい。」


「君には改めてお願いしたいことがある。」


部屋の空気が少しだけ引き締まった。


「学校では、これまで通り普通の高校生として過ごしてほしい。」


「はい。」


「君が沙織くんの弟だと知られれば、学校生活は一変する。」


「分かっています。」


「だから、私たちも学校へ干渉しない。」


「ライブやイベントへ来ても、必要以上に話しかけない。」


「君の青春は君自身のものだからね。」


一眞は静かにうなずいた。


「ありがとうございます。」


沙織も優しく続ける。


「お姉ちゃんとしては、普通に学校生活を楽しんでほしい。」


「放課後はここへ来てくれていい。」


「でも学校では、一人の高校生でいて。」


「うん。」


その返事を聞いた安本は満足そうに微笑んだ。


「さて。」


「今日はちょうど合同レッスンの日だ。」


「四十人とも来ている。」


「見学していくといい。」


「えっ?」


「久しぶりにみんなへ顔を見せてあげなさい。」


沙織も笑う。


「きっとみんな喜ぶよ。」


一眞は少し照れながら立ち上がった。


「じゃあ……行ってきます。」


プロデューサー室を出ると、廊下の奥から音楽が聞こえてくる。


歌声。


リズム。


ダンスレッスンの掛け声。


Five Melody Project。


五つのグループ。


総勢四十人。


日本中が憧れるトップアイドルたちが、今まさにレッスンに励んでいた。


一眞はその扉の前で小さく深呼吸する。


「久しぶりだな……。」


そしてゆっくりと、レッスンスタジオの扉へ手を掛けた──。


第3話「憧れのステージ裏――四十人の素顔」へ続く。



最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


第2話では、一眞の「学校での顔」と「FMP本部での顔」、二つの日常の違いを描きました。


学校では、ただの一人の高校生。


しかし放課後には、日本中が憧れるアイドルプロジェクト「Five Melody Project」の本部を訪れ、創設者・安本康晴、そして姉であり総責任者兼プロデューサーの柊木沙織と顔を合わせる――。


その特別な日常は、誰にも知られてはいけない秘密です。


また、安本と沙織から「普通の高校生活を大切にしてほしい」という言葉が贈られたことで、一眞にとって学校生活がどれほど大切なものかも描かれました。


そして物語の最後、一眞は合同レッスンが行われているスタジオへ向かいます。


次回、第3話では、五つのグループ・総勢四十人のアイドルたちが一堂に会する合同レッスンが始まります。


ステージでは見ることのできない彼女たちの素顔や、仲間同士だからこその空気感、そして一眞との再会にもぜひご期待ください。


もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークや評価、感想、コメントをいただけると大変励みになります。


皆さまの応援が、この物語を紡ぎ続ける力になります。


次回もどうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ