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第3話「憧れのステージ裏――四十人の素顔」


前回、一眞は放課後に「Five Melody Project(FMP)」の本部を訪れ、創設者・安本康晴、そして姉であり総責任者兼プロデューサーの柊木沙織と再会しました。


学校では普通の高校生。


しかし、その放課後には日本最高峰のアイドルたちが集う世界が広がっています。


今回の第3話では、五つのグループ・総勢四十人が参加する合同レッスンの舞台裏へ。


ステージでは見ることのできない彼女たちの努力や素顔、そして一眞との自然な交流を描いていきます。


華やかなスポットライトの裏側にある、もう一つの日常をぜひお楽しみください。



ガチャ――。


一眞は合同レッスンスタジオの扉を静かに開けた。


広さは体育館ほどある巨大なスタジオ。


全面鏡張りの壁。


天井には無数の照明。


最新鋭の音響設備。


そして――。


♪♪


軽快な音楽に合わせ、四十人の少女たちが息を合わせてダンスを踊っていた。


「5、6、7、8!」


「もっと笑顔!」


「手の角度を意識!」


「視線は前!」


ダンス講師の掛け声が響く。


汗を流しながらも、誰一人として動きを止めない。


一眞は思わず息をのんだ。


(テレビで見るより……。)


(何倍も迫力がある。)


すると、一人の女性スタッフが一眞に気付く。


「あっ、一眞くん!」


その一言でスタジオ中の視線が一斉に集まった。


「えっ!」


「一眞くん!」


「久しぶり!」


「来てくれたの!?」


「おーい!」


ダンスを止めた四十人が笑顔で駆け寄ってくる。


「一眞くん!」


最初に声を掛けたのは、HONEY BLOOMのリーダー・一ノ瀬花音。


「元気だった?」


「うん。」


「学校はどう?」


「楽しいよ。」


「よかったぁ。」


その隣にはSUGAR RIBBONのリーダー・天宮ひなた。


「高校生活満喫してる?」


「それなりに。」


「いいね!」


「青春してる?」


「普通かな。」


「それが一番!」


続いてCHERRY SMILEのリーダー・春川さくらが笑顔で言う。


「また背が伸びた?」


「少しだけ。」


「高校生はまだ成長期だもんね。」


MILK CROWNのリーダー・白雪澪も優しく微笑む。


「ちゃんとご飯食べてる?」


「はい。」


「睡眠は?」


「取ってる。」


「安心した。」


最後にPEACH MELODYのリーダー・桃井音羽が近寄る。


「学校は楽しい?」


「みんな優しいよ。」


「それなら良かった。」


五人のリーダーを中心に、残る三十五人も一眞を囲む。


「久しぶり!」


「元気?」


「制服似合ってる!」


「もう高校二年生?」


「早いね!」


「学校どう?」


「友達できた?」


質問攻めだった。


一眞は苦笑する。


「みんな一気に聞かないで。」


「あはは!」


スタジオは笑い声に包まれた。


その時。


パンッ!


「はい、集合!」


講師が手を叩く。


「一眞くんも来てくれたけど、まずはレッスン。」


「続きやるよ!」


「「「はい!」」」


一瞬で表情が変わる。


さっきまで笑っていた少女たちが、アイドルとしての真剣な顔になる。


音楽が流れ始めた。


「5、6、7、8!」


息の合ったフォーメーション。


一糸乱れぬダンス。


力強い歌声。


何度も何度も同じ振り付けを繰り返す。


少しでもタイミングがずれると、すぐ講師が止める。


「今の位置!」


「もう一回!」


「笑顔!」


「疲れても笑顔!」


「はい!」


全員が真剣だった。


額から流れる汗。


息を切らしながらも誰も弱音を吐かない。


一眞は改めて思った。


(テレビでは三分の一曲。)


(でも、その裏では何百回も練習してるんだ。)


休憩時間。


スタッフが飲み物を配る。


「お疲れ様!」


「ありがとう!」


四十人は床へ座り込む。


「疲れたー!」


「脚が……。」


「今日ハード!」


「でも楽しい!」


そんな普通の女の子らしい会話も聞こえてくる。


一ノ瀬花音がスポーツドリンクを飲みながら笑う。


「学校のみんな元気?」


「うん。」


「最近もFMPの話ばっかり。」


「本当?」


「毎日。」


「そんなに?」


「朝から放課後まで。」


「えぇ!」


周囲のメンバーが驚く。


天宮ひなたが笑う。


「なんか照れるね。」


春川さくらも苦笑する。


「学校へ行ったら大変そう。」


「確かに。」


白雪澪が少し心配そうな表情になる。


「一眞くん。」


「ん?」


「もし学校で私たちのこと聞かれても無理しないでね。」


「普通にしてて。」


桃井音羽もうなずく。


「私たちも学校では話しかけないから。」


「みんなで約束したもんね。」


「うん。」


そこへSUGAR RIBBONの水瀬苺が笑顔で割って入る。


「でも放課後はいっぱい話そう!」


「学校の話聞きたい!」


CHERRY SMILEの高瀬美咲も笑う。


「恋バナとかある?」


「ないよ。」


「えぇー!」


「好きな子!」


「いない。」


「本当に?」


「本当。」


「もったいない!」


MILK CROWNの神谷羽菜が笑う。


「一眞くん優しいから絶対モテるよ!」


「そうかな。」


PEACH MELODYの若葉結菜も元気よく言う。


「今度学校のお話いっぱい聞かせてね!」


「もちろん。」


そんな何気ない会話が、一眞には心地よかった。


テレビでは決して見られない。


トップアイドルではなく、一人の少女として笑う彼女たち。


その空気を感じながら、一眞は自然と笑みを浮かべる。


その様子を少し離れた場所から見ていた安本康晴は、隣に立つ柊木沙織へ静かに話しかけた。


「やっぱり、一眞くんが来るとみんな表情が柔らかくなるね。」


「はい。」


「弟は昔からみんなのお兄ちゃんみたいな存在でしたから。」


「学校では普通の高校生。」


「ここでは家族みたいな存在。」


「その距離感をこれからも大切にしていきたいですね。」


沙織は優しく微笑んだ。


その頃、一眞は四十人に囲まれながら笑っていた。


まだ誰も知らない。


この何気ない時間が、やがて五つの恋物語へとつながっていくことを――。


そして、秘密の青春は少しずつ動き始める。


第4話「学校では他人――誰にも知られてはいけない秘密」へ続く。



最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


第3話では、「Five Melody Project(FMP)」合同レッスンの様子と、四十人のメンバーたちが見せる舞台裏の素顔を描きました。


テレビやライブでは完璧なパフォーマンスを披露する彼女たちも、その裏では何度も練習を重ね、仲間同士で励まし合いながら、一つのステージを作り上げています。


また、一眞に対してはトップアイドルという立場ではなく、昔から知る一人の仲間として接する姿も描かれました。


一方で、学校ではその関係を決して明かすことはできません。


この「学校」と「芸能界」、二つの世界を行き来する一眞の生活が、これからどのように変化していくのかも、本作の大きな見どころの一つです。


次回、第4話では、学校で秘密を守り続けるために交わされる大切な約束が描かれます。


普通の高校生活を守るため、そしてトップアイドルとして活動を続けるために、一眞とメンバーたちが選んだ答えとは――。


ぜひ次回もお楽しみください。


もしこの作品を気に入っていただけましたら、ブックマークや評価、感想、コメントをいただけると大変励みになります。


皆さまからの応援が、これからも物語を紡いでいく力になります。


次回もどうぞよろしくお願いいたします。


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