第1話「秘密を知る、たった一人の高校生」
この作品を手に取っていただき、ありがとうございます。
本作は、プロデューサーの弟である高校生・柊木一眞と、日本中で絶大な人気を誇る五つのアイドルグループとの出会いから始まる青春恋愛ストーリーです。
学校では誰も知らない秘密。
放課後だけ訪れる、トップアイドルたちとのもう一つの日常。
テレビでは決して見ることのできない彼女たちの素顔や努力、そして一眞との交流を通して、それぞれの恋が少しずつ動き始めます。
まずは、すべての始まりとなるプロローグをお楽しみください。
四月。
新しい学年が始まり、校内はどこか浮き足立っていた。
教室のあちこちから、笑い声が聞こえる。
その中でも、毎日のように聞こえてくる話題があった。
「昨日のHONEY BLOOMの新曲見た?」
「見た見た! 花音ちゃん可愛すぎ!」
「いや、私はPEACH MELODY派!」
「CHERRY SMILEのライブ映像も最高だったぞ!」
「MILK CROWNのセンター、本当に綺麗だよな。」
「SUGAR RIBBONの新メンバーも人気すごいよ。」
五つのアイドルグループ。
HONEY BLOOM。
SUGAR RIBBON。
CHERRY SMILE。
MILK CROWN。
PEACH MELODY。
今やテレビで見ない日はない。
音楽番組、ドラマ、映画、CM、バラエティー。
全国ツアーをすれば即完売。
握手会やイベントは倍率数百倍。
高校生にとって、彼女たちは憧れという言葉だけでは足りない存在だった。
「一回でいいから会ってみたい……。」
「サイン欲しい!」
「写真でも撮れたら一生自慢できる!」
そんな会話が毎日のように飛び交う。
もちろん僕の高校でも例外ではない。
僕はそんな話を聞きながら、静かに窓の外を眺めていた。
「……。」
僕の名前は、
柊木一眞。
高校二年生。
ごく普通の男子高校生。
……表向きは。
「一眞、お前は誰推しなんだ?」
クラスメイトの山口が聞いてきた。
「いや、特に。」
「えぇ!? 嘘だろ!」
「五組全部興味ないの?」
「そんなことはないけど。」
「じゃあ誰?」
「……秘密。」
「なんだよそれ!」
教室は笑いに包まれる。
僕も苦笑いを返す。
本当のことなんて言えるはずがない。
だって僕は——
あの五つのグループのメンバー全員と普通に話せるのだから。
◇
放課後。
学校を出た僕は、そのまま駅とは反対方向へ歩いていた。
十分ほど歩くと、一台の黒いワゴン車が停まっている。
運転席の窓が開いた。
「お疲れ、一眞。」
聞き慣れた声。
「姉ちゃん。」
運転していたのは、
柊木沙織。
僕の姉。
そして、日本中の誰もが知る芸能界の重要人物。
「今日も学校お疲れ。」
「うん。」
「乗って。」
僕は助手席へ乗り込んだ。
車は静かに走り始める。
「今日は合同レッスンの日だから。」
「全員来るの?」
「もちろん。」
「また賑やかになりそうだね。」
「ふふっ。」
沙織は優しく笑った。
彼女はかつて、安本康晴がプロデュースするアイドルグループの中心メンバーとして活躍していた。
卒業後は芸能界に残り、プロデューサーへ転身。
現在はGRT48グループの取締役を務める一方で、
HONEY BLOOM、
SUGAR RIBBON、
CHERRY SMILE、
MILK CROWN、
PEACH MELODY。
この五組すべてを統括する責任者でもある。
だからメンバー全員が、沙織を慕っていた。
そして——
僕はその弟。
当然、メンバーとも顔見知りだった。
だが、この関係を知る人はほとんどいない。
学校ではもちろん秘密。
SNSにも一切載せない。
写真も撮らない。
絶対に外へ漏らさない。
それが僕と姉との約束だった。
「一眞。」
「なに?」
「今日もみんな楽しみにしてるよ。」
「え?」
「『一眞くん来る?』って朝から何人も聞いてきたから。」
「また?」
「ふふっ。本当に弟みたいに思われてるね。」
僕は少し照れくさくなった。
恋愛感情なんてもちろんない。
……まだ、この時は。
車は都内でも限られた人しか入れない大型芸能施設へ入っていく。
警備員が敬礼し、ゲートが静かに開く。
「お疲れ様です、柊木取締役。」
「お疲れ様です。」
芸能界の中心。
数え切れないほどのスターが行き交う場所。
そこへ僕は、ごく自然に入っていく。
もし学校のみんながこの光景を見たら、誰も信じないだろう。
五つのグループは、彼らにとって”神の上の存在”。
その彼女たちと普通に会話をする高校生がいるなんて、想像すらしないはずだ。
エレベーターの扉が開く。
合同レッスンスタジオは、もう目の前だった。
「さあ、一眞。」
「うん。」
扉の向こうには、まだ誰も知らない運命の出会いが待っている。
そして、この日から——。
プロデューサーの弟である僕と、五つのトップアイドルグループとの、誰にも知られてはいけない日々が静かに始まろうとしていた。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
プロローグ第1話では、主人公・柊木一眞と、日本中で人気を集める五つのアイドルグループを取り巻く世界をご紹介しました。
一眞は学校ではごく普通の高校生。
しかしその一方で、姉・柊木沙織が五つのグループを統括する責任者であることから、誰にも知られてはいけない特別な日常を送っています。
この物語では、アイドルとして輝く彼女たちの華やかな姿だけでなく、努力や葛藤、そして一人の少女としての素顔も描いていきます。
ここから第一章では、HONEY BLOOM編がスタート。
一眞と彼女たちの距離はどのように縮まっていくのか。
ぜひ次回もお楽しみください。
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価、感想をいただけると、今後の執筆の大きな励みになります。
これからも、一眞と五つのアイドルグループが紡ぐ物語を、よろしくお願いいたします。




