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縁側のひみつ茶屋  作者: Fos B


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【何が正解かは一生わからない】

ここは、心がちょっと迷子になった人がひょっこりと訪れてしまう場所。

1杯のお茶をゆっくり飲み干す間に、ついつい心を開いて、溜め込んでいた本音を吐き出してしまう――そんな不思議な縁側です。

悪い心を持つ人は決して辿り着けず、心がほんの少し弱くなった人だけが、何かの拍子に見つけることができる場所。

さあ、今日はどんなお客様が、この暖簾をくぐってくるのかしら?



~苦しんでいるお客様~


「どうして私ばっかり、こんな思いをしなきゃいけないの……」

心の中で、そんな毒づきが止まらない。どす黒い澱が、今にも溢れ出しそうだ。

妹が育てられなくなり、代わりに引き取った長女。自分と今の夫との間に生まれた長男。複雑な家庭の中で、私は必死に「母親」を演じてきた。夫は仕事と称して毎晩飲み歩いて帰らず、結婚と同時に購入したマンションの庭でさえ、私には冷たく見える。虚しく子供の遊具がポツンと置かれているだけだ。

そんな時、学生時代の友人が遊びに来た。私の愚痴を聞きながら、彼女は屈託なく長女と遊び始めた。それを見ていた長男が、長女からゲームを取り上げようとした時だ。

「今は順番だから、ちょっと待ってあげてね」

友人の悪気のない一言に、私はなぜかカッときてしまった。

「私の子供が遊びたいって言ってるんだから、あんたが譲りなさいよ!」

思わず長女を怒鳴りつけてしまった私に、友人はポカンと呆れていた。結婚もせず、自由に生きているあなたに、私の何がわかるのよ。

結局、友人はそのまま帰っていった。しばらくして、その友人が結婚して海外へ移住することを知った時、私の心の堤防は決壊した。本当は私こそが、昔の恋人と海外へ行くはずだったのに。どうして私は、こんな泥沼のような場所で、一人で戦わなきゃいけないの?

怒りと悲しみにのまれてふらふらと歩いていると、気づけば古民家の縁側の前に立っていた。

ニコニコとしたおばあちゃんが、湯呑みを差し出す。

「どうしたの? そんなに眉間にしわを寄せて。まあ、一杯お茶を飲んでいきなさいな」

不思議と毒気が抜かれ、私はおばあちゃんの前で泣き崩れた。妹のこと、夫のこと、長女と長男のこと、そしてどうしようもない嫉妬心……。長い長い告白を、おばあちゃんはただ静かに、うんうんと頷いて聞いてくれた。

話が終わると、おばあちゃんは庭の木々を見上げて言った。

「あそこにカッコウがいるねぇ。カッコウは、自分の卵を他の鳥の巣に産み落として、育ててもらうことがあるんだよ」

「……おばあちゃん、それって私のことを言ってるの?」

「いいえ。そうじゃないよ」

おばあちゃんは優しく微笑んだ。

「あなたはカッコウじゃない。自分の子供はもちろん、預かった子も、精一杯守り抜いてきたじゃないか。あなたは、誰の巣に頼ることもなく、一人で戦ってきたんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、自分でも驚くほどの涙があふれた。自業自得だと言い聞かせ、孤独に耐えてきた。それを、誰かに認めてほしかったんだ。

「おばあちゃん、ありがとう。わかってくれる人がいるってだけで、少しだけ息がつけそうです」

「ほら、帰る道が現れたよ。家族の元へ帰りなさい」

おばあちゃんは、着物と同じ模様の折り鶴をそっと手渡してくれた。

「ここは一期一会の場所で、二度と会えないんだよ。だけど、これを持っておいき。あんたが一生懸命頑張った証だよ。時々これを見て、自分の頑張りを思い出してごらん」

「……はい」

私は深くお辞儀をして、再び茨の道へと戻っていった。何が正解だったのか、一生わからないかもしれない。けれど、私は私の人生を、今日もしっかりと生きていく。

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