【独りぼっちという名の自立】
ここは、心がちょっと迷子になった人がひょっこりと訪れてしまう場所。
1杯のお茶をゆっくり飲み干す間に、ついつい心を開いて、溜め込んでいた本音を吐き出してしまう——そんな不思議な縁側です。
悪い心を持つ人は決して辿り着けない。心がほんの少し弱くなった人だけが、何かの拍子に見つけることができる場所。
さあ、今日はどんなお客様が、この暖簾をくぐってくるのかしら?
〜1人が好きなお客様〜
「いつも1人でいるよね」「1人で恥ずかしくないのかな?」「性格悪いんじゃね?」
聞こえるように、わざと話している声。自分たちはグループでつるみ、いつも1人でいる私を冷ややかな目で見てくる。何がいけないっていうの? みんなで一緒に行動しなきゃ生きていけないの? ただ、煩わしいのが嫌なだけなのに。
大勢の刺すような視線を浴び続け、もう耐えられなくなった。私は教室から飛び出した。冷たい廊下の床を足を踏み入れたはずなのに、次の瞬間、温かい土の感触があった。
キョロキョロと周りを見渡すと、目の前に古民家があり、縁側でおばあちゃんがニコニコと私を見ていた。私は警戒しながらも、おばあちゃんに近づいていった。
「あらあら、体が冷えているねぇ。ここへ来て温かいお茶を一杯飲みなさい」
おばあちゃんは優しく声をかけてくれた。
「おばあちゃん、教室から飛び出してきたんです。次の授業が始まっちゃうから早く帰らなきゃ……」
私がそう言うと、おばあちゃんは穏やかに微笑んだ。
「すぐに道は現れるわよ。まずはお茶を飲んで温まりなさい」
私はお茶の香りに誘われるように、おばあちゃんの横に座った。一口飲むと、張り詰めていた糸がふっと切れる。空を眺めながら、私はポツリと言った。
「おばあちゃん、なんでみんな集団で行動して、話題を合わせて、無理してまで合わせなきゃいけないの? 私は煩わしいのが嫌なだけなのに」
おばあちゃんは池を指さした。
「あそこにアヒルがたくさんいるねぇ。あら、一羽だけ色の違うアヒルがいるよ」
私はまるで「醜いアヒルの子」として扱われている自分を見ているようで、泣き出しそうになった。おばあちゃんはお茶を差し出し、静かに語り始めた。
「みんな『自己演出』で仲良しごっこを演じているのよ。本当に満足している人は、いちいち仲良しのアピールなんてしないから。他の子たちは自分の空っぽさを埋めるために、『自分を認めてくれる誰か』や『いつも手を差し伸べている優しい自分』を必要としているだけ。世間は『友達が多い=豊かな人生』とセットで語りたがるけど、それは『誰とでも合わせられる人』にとっての豊かさであって、あなたのように長年、理不尽な人間関係という地雷原を歩いてきた人には当てはまらないんだよ」
おばあちゃんは私の手を取った。その手は驚くほど温かかった。
「今のあなたにとっての『煩わしさ』は、『これ以上、自分のエネルギーを他人に搾取されたくない』という、心からの防衛本能なの。友達がいようがいまいが、あなたの価値は1ミリも変わらない。煩わしい人間関係を断捨離して、自分との時間を大切にできるあなたは、とても知的で自立した女性だよ」
私はハッとした。そうか、私はきちんと自立しているんだ。誰に何を言われても気にしなくていいんだ。
お茶を飲み干すと、おばあちゃんが「ほら、あそこに道が現れたわよ」と指をさした。先ほど飛び出してきた教室が、ぼんやりと見えている。あの中には私に冷たい視線を投げつけてくる子たちがいる。でも、私はもう気にしないことにした。
「おばあちゃん、ありがとうございました。またくじけそうになった時、ここに来てもいい?」
「ここは一期一会の場所。一度来たら、もう二度と会えないのよ」
おばあちゃんは寂しそうに微笑むと、自分の着物と同じ模様の折り鶴を渡してくれた。その手はとても温かかった。
「この鶴を見て、この景色を思い出してね。そうすれば、あなたが立派に自立した女性だってことを、いつでも思い出せるはずだよ」
私は縁側を降りると、一度も振り返ることなく、教室へと戦いに行った。
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