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「ナナシくんっ」
「ん、なに? おねえちゃ――」
呼ばれて顔を上げたナナシの唇に――彩音の唇が、重なった。
「にゃあっ!?」
「…………」
驚いたように一声鳴いたクロと、無表情で黙って眺めているリリエラ。
それから少し間を置いて、彩音はナナシから離れ、改めて扉に手を掛けた。
「皆――本当に、ありがとうっ! 元気でね!」
羽のように軽い扉を開き、彩音はその先へと消えていく。そんな彩音に――ナナシは顔を真っ赤にしながら、最後に声を掛けた。
「おねえちゃん――頑張ってね! 僕、いつだって、応援してるからさっ!」
――ああ、そうだ――
万魔殿では、いつだって少年の笑顔が、そこにあった。
彼はいつだって、彩音のことを応援してくれていたのだ。
彩音はきっと、彼のことを、ずっと忘れないだろう。
万魔殿で出会った――太陽のように笑う少年のことを。




