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万魔殿《パンデモニウム》は眠らない  作者: 初美陽一
第三幕 〝心〟なき美女は、ただ〝幸せ〟のみを願う (※リリエラの物語)

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『あ、リリエラさんっ! よかったー、心配してたんだよ!』


 ナナシ様が、笑顔で駆け寄ってきてくださいました。心配してくださったのだと、もったいないお言葉を頂きました。


『リリエラさんがさ、万魔殿の外から扉を叩くの、聞こえてたんだ。でも、途中から聞こえなくなっちゃって、どうしたのかなって思ってたんだけど、顔見たらホッとしたよー』


 そう言われると、恥ずかしく感じるのかもしれません。もしかしたら、申し訳ないと思う可能性もあるでしょう。一度だけ頭を下げ、謝罪の意を示しました。


 ですがナナシ様は、むしろ心配が増したかのようでした。


『えっと……リリエラさん、だよね? 髪の色が、その……()()()()()()()からさ』


 そう指摘されて初めて、リリエラは自分の髪色が変化したことに気付きました。そういうこともあるのですね、と納得するリリエラに、ナナシ様は尋ねてこられます。


『あの、リリエラさん……大丈夫?』


 ナナシ様の問いかけに、こう返答しました。




『はい、ナナシ様――リリエラは、大丈夫です。とても、とても――〝幸せ〟ですから』




 こうして〝心〟を捨てた()()()()は――万魔殿へと戻ってくることが出来たのです。

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