↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/89

彼女の理由

暑くて溶けそうです。

職場も暑いです。


早く冬にならないかな。

 閉鎖的な結界内に閉じ込められたみたいで、どれだけ派手に戦闘行為を繰り返しても、野次馬や治安部の連中が駆けつけることは無かった。

 誰の邪魔が入る事無く戦闘は絶賛続行中だ。


 十二階のオークの次は、十三階のトロール戦を終えて…。



 今対峙しているのが十四階のフロアボスのミノタウロスとホースマンの希少種、ノートリアスモンスターの牛頭(ごず)と馬頭(めず)だ。



 筋肉隆々の3メートル越えの二体相手に、奥の手の大口真神を召喚して2対2の状況で何とか拮抗を保ってる状態だ。

 パーティで望むのが定石の相手なんだけど…。


 しっかし街中でこのレベルのガーディアンと戦うなんて、思ってもみなかった。

 実際に塔に登る前、ガキの頃に見ていたスタジオ・ステアーズで紹介されていたガーディアンと戦えるのは実に美味しい。


 これは自信に繋がる。

 この経験は必ず糧になる。


 が、めちゃくちゃ疲れた。

 正直、クタクタだ…。


 うう、もう止めたい。

 

 



「はいはい〜!蒼、その辺にしておこうか!」


 俺の疲労を察した環さんの言葉で、二体のモンスターはフリーズしたように停止する。


「ちょっと、環さん! 止めるの遅くないですか!? 」


 変身を解いた俺も大口真神も致命傷は無いが、身体中傷だらけだ。

 昼食べたばかりなのに、もう腹ペコだ。


「それに…うう、先に着替えておけば良かった…」

 破れた制服を脱いで、大口真神に隠れて替えの戦闘服に着替える。



「ごめんねぇ、うわさの大口真神がどんなものか見ておきたくてさ」

 環さんは大口真神の鬣を愛しそうに撫でる。


「あげませんよ」

 陰陽師の式神にされる前に隠してしまおう。

「真神 還れ!」



「牛頭馬頭帰還せよ!」

 蒼さんも召喚したガーディアンを戻す。



「それじゃ、帰ろうか?」


 パチン


 環さんが指を鳴らす。


 

 すると、何もなかったように、街の喧騒が戻る。


「いったい何の能力なんですか? コレ!」


 別次元で今まで戦っていたかのような経験に正直戸惑う。


「次元転送みたいなものかなぁ、昔流に言えば固有結界みたいな? これはギフトの能力じゃなくて代々伝承されてきた陰陽の技だよ」


「なんつー規格外の技なんですか!? 」

 

「それを言うなら、君の大口真神もその類でしょう? こんな時代にならなかったら決して公に出てくる技じゃ無いでしょ? 」

 イタズラに微笑む環さんの言葉にはうんと皮肉が込められている。


「エボの存在のおかげで、我々みたいな歴史の闇に屠られてきた存在が、堂々と技を振るえる時代になったってことね、感謝感謝だよ」


 環さんの言葉に苦笑いする蒼さん。

「それを良しとしない、昔ながらの堅物連中も多いですけどね」

 

 話しながら、二人は裏路地に入る。

「門鬼招来!!」

 環さんは二枚の式札を投げると、二体の腕の長い鬼を召喚する。


「私たちがエボの中に引っ込んでいる理由がそれなんだ」


 二体の鬼が両手を繋ぎ、大きな輪を作る。

「さぁ、天満くんもご一緒に」

 環さんはその鬼の手の輪をくぐると、消えてしまった。


「どうぞ、行き先はあなたも知ってる場所ですので…」

 蒼さんに促されて、鋳造のように動かない鬼の腕の輪をくぐる。


 ジャリ。


 着地した場所は、砂利が敷き詰められた木造の老舗旅館の正面口だった。


「って、ここエボ! 十階層じゃないっすか!? 」

 マジで空間転移だ。

 何の苦労もなく十階だぞ。


「だから、帰るって言ったよ! 」

 環さんが可愛らしく言うが、問題はそこじゃ無い。


「言ったよ! じゃないっすよ! 俺、登塔登録してないし! ゲートも通ってないっすよ! 」

 保安部にバレたら、ライセンス剥奪に学校退学レベルの規約違反だ。


「バレなきゃいいんだよ、世の中何したってね」

「そうです。バレなきゃいいんです」

 陰陽師コンビはしれっと恐ろしいことを吐く。


「下界に滞在する方が我々にとっては危険なのです。 本気で命狙われてますから」

 蒼さんが周囲を警戒しながら建物に入る。


「さぁ、入って、お茶でも飲みながら話をしましょう」


 ☆☆☆


 入学の儀式以来の十階層の茶宿のロビーで緑茶と茶菓子を振る舞われ、ゆっくりと話を聞くことにした。


「まず、天満くんにお願いした理由から話しますね」

 正面に座った蒼さんが切り出す。


「先ほども話したように、私たちは命を常に狙われている状態です」

 一口、熱々の緑茶をすすり。

「明治時代になり新政府が天社禁止令を発令、陰陽師は表舞台から姿を消しました」

 

「綺麗に言えば、裏から国と政府を支える組織として姿を変えたんだけど…」

 豆まんじゅうをひとつ摘んで、環さんも腰掛ける。

「世の中から魑魅魍魎を消し去る為だけの特務機関に成り下がったってのが正解で」


「おかげで、一般人の認識レベルでは妖怪や鬼の存在は今や都市伝説レベルまで激減したわけだけど、エボが降ってきてねぇ、それどころじゃなくなってしまったのが現状でね」


 エボの情報が解禁されてから、エボ以外の場所での妖怪や鬼の目撃が増えたって聞いたことがある。

「人々の認識の問題だね…皆が《有るんだ》《居るのだ》と認識してしまうとおぼろげな存在がはっきりとした存在になってしまう」

 蒼さんはうつむき呟く。

「だからといって、長年秘密裏にしてきた我々の存在や技を公にすべきでは無いと考える主流派が刺客を送って、我々のようなエボに在留している陰陽師の口封じしているんです」


「この宿屋は、いわば《はぐれ陰陽師》のシェルターの役割をしてるんだ、常に用心棒代わりの凄腕のステアーズが宿泊しているからね」

 確かに塔登で宿泊しているステアーズの姿が数人見える。

 それに環さんたち以外にも、数人の従業員の姿が見えるが、あの人たちも陰陽師なのだろうか…。


「天満くんにお願いしたいのは、試験中に刺客から私を守ってもらいたいのと、先ほど見せた《ガーディアン》の補充のお手伝いをお願いしたいのです」


「試験中に受験者として刺客が潜り込んでるんですか!? 」

「受験者名は事前に公表されてしまうからね、しかも受験生は数千人だ。刺客を送り込むにはもってこいのイベントだからね」


「天満くんにとっては塔のガーディアン以外にも敵を作ってしまう事になってしまいますが…」

 蒼さんは申し訳ない表情で俺の手を取る。



「それって、俺は試験受かるんですかね? 」



 




この作品を見つけてくれてありがとうございます。

そして、読んでくださってありがとうございます。

もし、続きが気になった方はブックマークお願いします。

広告の下の☆☆☆☆☆から応援していただければ励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。