昇給試験とスカウト
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シャオロンは電子黒板に大きく《昇級試験》と書き出した。
その下に受付期間として、今日から一週間の日付を記載する。
授業用のインカムのマイクをオンにして、教壇から生徒たちを見渡す。
講義室ではAクラスとBクラスの生徒たちが電子黒板に注目する。
「えー、みんな知ってると思うが、ライセンス昇級試験が今月末から開催される。詳細は今から端末に送るので各自申し込みするように! 」
手元のタブレットにライセンス試験の申し込みと詳細が一斉送信された。
生徒は皆黙って、タブレットに視線を落とす。
ライセンス試験は年に2回、夏と冬に開催される。
A・Bランク試験は二日間
Sランク試験は三日間
SSランク試験は四日間
SSランクの試験は四日間の塔登試験期間が設けられ、この間は一般ステアーズのエボの立ち入りは禁止となる。
ライセンス試験の内容だが、6人以内のパーティで目標を設定する。
機界層フロア10到達でBランク
獣界層フロア20到達でAランク
獣界層フロア25到達でSランク
鬼界層フロア30到達でSSランク
ちなみにランクCは70時間の学科と100時間の戦闘訓練を受けると受理できる。
俺たち進化学園の生徒は卒業と同時にCランクのライセンスが交付される事になっているので、エントリーはBランクからの受験となる。
「期日内に各自6名以内のパーティを作り、メンバーの名前と目標ランクを明記して提出してくれ!」
シャオロンは改めて、講義室の生徒たちを見渡す。
「いいか! お前らはまだ一年だからあまり無理な目標を立てず、身の丈にあったランクを選ぶように!」
「パーティ組めって言われてもなぁ、ランクどうするニヤ?」
プロジェクトの内定はもらっているが、俺たちは最低でもSクラスを受験しなくてはいけない。
「当然、SSランクにするつもりだよ…ただ誰かと組んで足を引っ張られるのも嫌なんだよねー」
ニヤはあえて俺の方を見ながら言う。
「足を引っ張るって、俺のことか? 」
「あはは、違うよぉ」
ごまかすように笑い、ニヤはタブレットを俺に見やすいように画面を寄せる。
「ほら、ここ見てよ…」
「ん?…」
「登録したパーティメンバーの一人でもリタイヤした場合、連帯責任としてメンバー全員を不合格とする。ってヤツ」
ニヤが指したのは昇級試験の注釈の部分だ。
「メンバーは六名まで登録可能だが、一人でも欠けたら全員アウト…でも、実力や連携が取れる相手ならメンバーは多いほうがいいわけだよな?」
「たとえば、俺と天満、んでアリスと安綱の四人ならSSランクも十分可能性はあるよ…あぁ、アリスの場合はこないだのシャオロンの技が使えるって前提だけど…」
なんか、ニヤのヤツ、含みのある言い方だなぁ。
「いいかい、ほら、ここも要チェックだよ…パーティは同じランクの受験者に限る…ってヤツ」
「ん? んな事はわかってるって」
「本当に? 例えばこれって、一年生以外とも組んで良いって事になるよ」
毎年学園生以外でも数百人の受験者が塔に挑む。
「はっ? そうか!」
「だから、ホラ、そろそろ来ると思うよ」
わかった様な口ぶりで、廊下をダッシュしてくる集団を見つめる。
その集団は授業中だというのに、思い切りドアを開けてドカドカと講義室に入ってくる。
「おい、コラ!お前らまだ授業中だぞ! 」
シャオロンの注意を無視して、先頭の男が誰かを探す様に室内を見渡す。
そこで、授業終了のチャイムが校内に鳴り響く。
「これで、授業は終わりだろ? 」
ドカドカと入ってきたのは、別棟の上級生たちだった。
「猫柳ニヤ! 俺達のパーティに入らないか!? 」
一人の上級生がニヤの姿を見つけて、叫ぶ。
「待て!、猫柳は俺達が!」
「ちょっと待ちなさい! 私たちよ!」
教壇から数グループがニヤを求めて争いながら、こっちにやってきた。
集団が目をつけていたのは、ニヤだけでなく、安綱や俺、そしてアリスに群がりパーティの参加を促してきた。
2年、3年生たちは全員Aランク所持で、Sランク受験する連中だ。
二年、三年生たちは口々に勧誘を始める。
「猫柳! うちのパーティに来てくれ!」
「安綱さん! 前衛が足りないんです!」
「アリスさん! 一緒にSランク受けませんか!?」
講義室が一瞬で就職説明会みたいな空気になる。
「ねぇ、コレどう収拾するの?」
アリスも上級生に詰められ戸惑っている。
「ちょっと…アリス! なんかヤバいのが近づいて来てる!!」
同様に上級生に囲まれてた安綱がアリスに向かって叫ぶ。
ただならぬ空気をまとった存在が教室に向かって近づいてくる。
「……」
シャオロンはその存在に気が付き、頭を抱える。
「…ごめん、天満…一緒にパーティ組めないかも!?」
ニヤが立ち上がり、廊下を見る。
「はっ? どういうことだよ?」
つられて立ち上がったところで、入り口のドアが勢いよく開く。
「はい!邪魔するよぉ!と」
現れたのは、赤髪の狐耳の誰もが知るSSランカー。
「出た、赤い狐」
そう呟いた安綱を入室した瞬間に見抜く玉藻銀子。
「聞こえてるよ、渡辺ぇ」
威圧的な視線で睨む。
上級生たちは突然のSSランカーの登場に驚き、緊張で固まっている。
「銀子ぉ、生徒たちを威圧するの頼むから止めてくれ」
シャオロンは銀子の肩をポンと叩き、生徒たちを一瞥する。
「いいかぁ、ライセンス試験のパーティは生徒同士だけでなく、一般ランカーのチームに参加するのも自由だからな!」
そう言い残し、講堂から出ていく。
教壇に残った銀子はニヤを見つける。
「ニヤ! 行くよ!」
と、顎でしゃくる。
「天満、ごめんね、やっぱり指名入っちゃった」
ニヤは俺に申し訳なさそうに手を合わせ。
群がる上級生たちをかき分け、銀子とともに行ってしまった。
そんな銀子たちとすれ違いで講義室に現れたのは二メートル超えのサイボーグ、九識ナインのチーフだ。
「安綱、ヨンウ。行けるかい?」
「別に迎えに来なくても良くない?」
安綱のつぶやきに、隣りにいたヨンウが答える。
「こういうのは競争相手に見せつけるようにさ、派手にデモンストレーションするもんなんだよ」
二人はチーフが来ることを待っていたようで、揃って教壇に向かって降りていく。
「おいおい、俺はてっきり少年漫画みたいに、俺たち四人で試験受けれると思ってたのに…よ」
講義室を出ていく二人を見ながらつぶやくと、アリスが少し寂しそうな顔で近寄ってくる。
「私も四人で一緒に登りたかったけどね、今回は競争になりそうね」
アリスはそっと俺の方に手を置いた。
アリスの艶やかな金髪からシャンプーの香りが漂ってくる。
「アリスさんや、ひょっとして君も決まってるのか? 」
「まぁね、大人の世界って、利権やお金にメンツ、色々あるのよ」
「アリスさん、迎えが来たみたいです」
アリスにそう声をかけてきたのは 、水使い波際奈美だ。
「お迎えに上がりました! 少尉!」
廊下では米軍の制服を着た女性士官が敬礼する。
「そう…じゃ、行こうか…じゃあね、天満君」
「ちょっと…待ってくれ…俺、どうすりゃいいんだよ? 」
講義室には多くの生徒が残っている中、俺はなぜか孤独感に襲われた。
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