ステアーズを越える存在
久しぶりの投稿です。
忙しさにかまけてサボってた訳じゃないですけどね。
もっと早く書けるようになりたいです。
150倍と叫んだニヤの姿が消える。
「ほう、ノーマン戦で見せた高速移動だな」
嬉しそうに、目を細めると、不意に背後を振り向き両手で横からの攻撃に合わせ、縦に剣を構える。
キンーッ
火花が散り、突然ニヤが姿を表す。
ロングソードでニヤの横なぎの一撃を受け止めたのだ。
「いかに高速で姿を消しても、攻撃を受けられた瞬間は動きが止まる!」
ズイッと、一歩踏み出しロングソードから片手を離し、動きが止まったニヤの顔面を鷲掴みにすると、そのままアスファルトに頭部を叩きつける。
「ぐはっ」
衝撃でニヤの体がバウンドする。
「ノーマンにも同じように捕まってただろう?学習しない奴だな」
真っ赤な鮮血で染まったニヤの髪を掴み、上半身を引き起こす。
「剣筋は単純、回転系の攻撃を多用するのは癖か?攻撃が読まれやすいから、そういう大技はここ一番って時に使うのが定石だ。神眼の使い方はまあまあ…と、ギリギリ合格ってとこだな、って、おい聞いてるのか?」
髪を掴んだまま、ニヤの頭を乱暴に振るミカド。
「頭がガンガンするから、あんまり振らないでくれるかな」
朦朧とする意識の中、青い瞳のままミカドを睨みつける。
「お前の神眼は能力を倍にするギフトだ。倍にするのは筋力や再生力だけじゃないだろう?ギフトに限界を作るな!何が倍に成るかじゃなく、何を倍にするか?お前が支配するんだ」
「そんなナリで、ナニ父親ぶってるんだよ…俺と母さんを捨てたクセに!今更なんだってんだ!」
髪を掴んでいるミカドの腕に向かって剣を振り上げる。
スッと手を離して剣先をいなして、今度は逆の手で再びニヤの顔面を掴み後頭部を地面に叩きつけ、馬乗りになる。
「ぬがっ!」
「捨ててねぇから、こうして会いに来てやってんだろう?あぁ」
イラついた感情のまま、ロングソードをニヤの首真横に突き刺す。
首の皮一枚切り裂いて、一条の鮮血が滴る。
「俺はよ、ずっとこの瞬間を待ち望ん出たんだぜ」
剣の柄を握ったまま、天を仰ぐ。
「ニケあの女がお前を産んで、その蒼い瞳を見た瞬間からなぁ、ずーと思ってたんだ…」
子供の姿のミカドの表情が狂気に歪む。
「あぁ、この蒼い瞳を俺に移植したら、ギフトが一つ増えるなってよ… だから、大事に大事に瞳が育つのを待ってたのさ…」
感無量な表情を見せた後。
「穿て!」
ニヤの左目を目掛けて親指と中指人差し指をかざして捻る。
「あがっ!」
ニヤの左目から大量に涙のように赤い鮮血が溢れる
「空間を眼底筋ごと捻り切ったから、暴れるんじゃねぇーぞ、大事な目に傷がついちまう」
ニヤは反射的に左目を庇う為に手で目を覆おうとするが、腕をミカドの膝で制される。
「大人しくしてろって!」
バタバタと暴れるニヤを制しながら、ミカドは舌舐めずりしながら懐から眼球を取り出す為の医療用の鉗子を取り出しパッケージを歯で破る。
そして、暴れるニヤの頭部を押さえ左目にグチュッと音をたてて鉗子を挿入する。
「うぎゃぁぁぁぁ!」
ミカドは鼻歌まじりでニヤの左の眼球を取り出し、液体の入ったガラスケースに入れる。
新しいおもちゃを手に入れた子供のような無邪気な表情で、ケースの中の蒼く輝く眼球に光を透かす様に掲げて覗く。
「オッケー、良い状態だ」
そう言うと、ニヤに馬乗りのままモバイルを取り出して自分の眼前に構えると、鏡の様に自身をモニターに映すとさっきと同じ様に瞳に合わせて「穿て!」と発する。
ごぽっ
ニヤ同様自ら左目に鉗子を突っ込み。煌々と紅く輝く眼球を取り出して見せた。
「これが俺からのプレゼントだ!活かすも殺すも、まぁお前次第だ」
ミカドは自身の左目をそのままニヤの左目があった血溜まりの穴に入れると、まるで目薬を指すように鮮血が溢れる左目にエリクサーを打ち込む。
「コレで…良し」
紅く輝く左目が暴れるようにグルグルと痙攣する。
「あぐぅぅぅぅぅ!!」
ニヤはもがき苦しんだ後、口から泡を吹いて意識を失う。
「はっ、情けねぇヤツ!ギフトの拒絶反応で失神したか…」
ミカドはゆっくりと立ち上がり、ニヤ同様奪った蒼い瞳をケースから取り出して、自身の左目のニュルンと挿入る。
「うがっ!」
エリクサーを注入した途端、蒼い瞳がグルンと白目を剥き片膝をつき、全身を襲う痙攣で手にしてたケースを落とす。
「かっ…は!コイツは確かに効く…な」
左目を抑えながらフラフラと立ち上がると、息を切らしながら倒れた息子を見下ろす。
「その瞳がお前を認め、身体がその目を受け入れたなら、お前は最短でSSSにたどり着けるだろう…まぁ、俺は更なる高みに進んでるだろうが…な」
ミカドもダメージで蹌踉めき壁にその身を預ける。
「おい!ミサト!!」
突然名前を呼ばれて、慌ててカメラを落としそうになる。
「はっはい!!」
うお、バレてた!と呟きながら、隠れていた茂みから姿を現す。
「映像を秘匿しろとは言わん、だが放送するのはやめておけ、俺以外の都合の悪い連中が、隠蔽工作でお前の口を塞ぎに来ることとなる」
「わっ、わかりました!」
左右色の違う目睨まれ、ミサトの声が上擦る。
そんなミサトに背を向けて、ミカドが「開門っ!」と叫ぶと空間がドアのように開いた。
「ついでに、そこのガキのこと頼む…」
ミカドはそう言い残し、時空の扉ん中に姿を消した。
「うぉぉぉぉ!スクープなのにスクープ出来なんてぇぇぇ!酷すぎるぞおおおおお!」
夜空に向かって叫ぶミサトを最後に映像は終了した。
「残念ながら、エンドロールは無いわよ」
ミサトは、めでたしめでたしと言いながらカメラを片づける。
「めでたしじゃないっすよ!ニヤは集中治療室で意識不明の重体じゃないっすか」
「それは皇帝さんも同じだ、勝算があるからこんな人体実験まがいの事をしたんだろう?成功すれば事実上ギフトの二つ持ちってのが二人誕生したわけだが、この情報はしばらく秘密にしておいてくれよ」
「そうよ、じゃないと私の口だけじゃなくて、貴方たちも口封じで消されちゃうかもね」
「ウソ!なんで、私たちに見せたのよ」
いち早く反応したのは安綱だった。
見せなかったら、お前怒るだろ?だからだよ。
「冗談抜きでな、エボってのは人類にとって既得権益の宝庫になってんだわ。エボで新たな発見があれば、そのチーム企業は莫大な収益を得る。当然上層階に行けば行くほど他者に荒らされてない分、お宝に遭遇する確率はグンと増える、だからより上層階へ上がる確率を上げるため、企業はギフトの研究ってのに力入れてるんだ」
いつになくマジメな表情のシャオロンに続いて、ミサトさんも真顔で続ける。
「で、各国各企業がこぞってステアーズの強化プロジェクトに着手し始めたのよ、貴方たちも身に覚えがあるでしょ?」
「より上層階に挑める、ステアーズを人為的に作る計画っすね」
「デザイナーズ・ギフト・プロジェクト…」
おそらく最初は九識のステアーズの義体化から始まった。
足りない能力を機械化して補う方法だ。
その次に、安綱のようなステアーズの両親を持たない代わりに、一族が悠久の時をかけて磨いたギフトに匹敵する『業』を身に付けた強者を、エボでギフトを付与させる、スキル型と呼ばれる強化が一般的なった。
フロア10で出会った『陰陽師』の環さんなんかもそのタイプだ。
…って、環さんのギフトってなんだ?知らないぞ…。
まぁ、その話は置いといて…。
俺の場合、より強いライカンスロープを作る為、同型のライカンスロープの両親の血をかけ合わせで産まれた。
いわゆる競走馬と同じ「サラブレット型」の二世だ。
で、アリスの場合は別種のウィザード級ギフトの両親から『火』と『空気』を操る二つギフトの能力を得ているが、実際は両親の能力を足して二で割った感じで、『火』『空気』と単体の能力は両親の能力に及ばないそうだ。
「異なる瞳術を使いこなす…それはギフトを二つ得る事と、ニヤのギフトの性質上その力は200倍まで引き上がる。理屈ではエンペラー×200って事になるな…ただ、この情報が知れ渡ると面倒が起こるのは容易に想像できるだろ?」
考えたくないが、十分あり得る話だ。
「ギフトの強奪、又は売買っすね」
「そういう事だ、とりあえず、お前らは寮に戻れ」
「ニヤの事、お願いしていいんですね?」
「ああ、後は大人に任せておけ」
シャオロンは煙草に火をつけると、用は済んだとばかりにシッシと帰れと手を振る。
ミサトさんも「バイバーイ」と手を振る。
そんなこんなで…
ニヤの傍にいても何もしてあげれない俺たちは、苦虫を潰したような顔のまま寮に戻ったのだった。
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