目覚める第15話
俺、白老 黒兎は金属バットで殴られた傷の痛みに耐えながら体を起こす。すると、大地が俯いたまま様子がおかしいことに気づいた。
「(なんだ……?なんか嫌な雰囲気がする……)」
大地のバイト先の店長(ラメエルさんだっけ?)も驚いた顔をしている。
「おいオメェら。アイツ潰せ」
「は?あの、どうかしましたか?」
「いいから早く!!」
男が怒鳴る。あの男も大地の異変に気づいたのだろう。
男の手下共は言われるがまま、金属バットで大地の頭を殴る。
ガイィン!!
嫌な音が響く。
「因幡さん!?」
「だ…大地!!」
しかしすぐに不思議なことが起こった。
「ぐっ、ぐぅぅぅ!?」
「ど、どうした!?」
「こ、こいつ、電信柱みてぇに硬ぇ!!」
そう。殴った男の方が痛がっているのだ。
対して大地は俯いたまま微動だにしない。
「因幡さん!?大丈夫ですか!?」
ラメエルさんが体を揺するが、反応がない。
男達が再び大地に襲いかかった。
次は顔面にバットを叩き込む。
「なっ!?」
しかし、そのバットは今まで微動だにしなかった大地の手によって阻まれた。
「コイツ……見ないで止めやがった!?」
バキュッ!!
そのまま大地の手は金属バットを握り潰し、そして先程から開かなかった口が今開いた。
『ほう……貴様ら、人間の分際で我に楯突くか。しかもこのような玩具で……ハハ、ハハハハハ!!』
大地の口から出た声は確かに大地の声だった。しかし、その喋り方がいつもの大地とは違う。
まるで誰か別な人が乗り移ったような……
「……ル、ルシファー…様……?」
何かラメエルさんが呟いた気がしたが、もうそれどころではない。
「な、なんだ?コイツ狂っちまったか?」
「とにかく今のうちにやっちゃおうぜ!!」
再びバットで殴り掛かる男達。しかし、大地が男達の頭蓋を掴んだことで動きは止まった。
『ハハハハハ!!この程度でやる?誰を?我を?ハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!』
そしてそのまま男達を建物の壁に叩きつける。おびただしい量の血が男達から流れてくる。
『脆い!!脆いな人間は!!』
そして気づけばーーー
「な、なんだよアレ……羽……?」
大地の背中からは黒い羽根が4枚生えていた。まるで堕天使のような……
「お前ら何グズグズしてんだ早く潰せ!!」
「で、でも!!」
「俺たちじゃコイツはーーー」
その言葉はそれ以上続かなかった。
大地がリーダーの男以外のふたりの鳩尾に拳を叩き込んだからだ。
地面に倒れ伏す男達。
残りは……
「ひ、ひぃ!?」
『貴様が最後か……ハハハ。貴様のさっきの言葉、そのまま返させて貰おう……』
「な……なにが………」
『当たりどころが悪ければ死ぬが、許してくれ。』
大きく拳を振り上げる大地。
その時、
「や、やめて大地!!」
ピクッ
大地の拳が止まる。すでに男は失禁して気絶していた。
「だ、大丈夫だから……もう、大丈夫……」
身体を震わせながら立ち上がる紗耶。まるで大丈夫には見えないが、紗耶の事だ。自分のことより大地のことの方が心配なんだろう。
『……………」
大地の背中から黒い羽が消える。そしてそのまま地面に倒れこんだ。
「い、因幡さん!?」
慌ててラメエルさんが大地のもとへ駆け寄る。
そして俺も意識が途絶えた。




