絶望する第13話
「だ、堕天使!?」
さっきまで喋っていたお客さんが堕天使……確かにアザゼルさんの背中から生えている黒い羽は紛うことなき本物。そしてラメエルさんと同じような雰囲気を感じたのは堕天使だったからか!!
「ラメエルが人間の子供を雇ったと聞いてな。様子を伺いに来てやったんだ」
「貴方はいつも来ますよね〜?」
「う、うるさい!!ここのコーヒーが上手いのが悪い!!」
「えへへ〜。ありがとうございます〜」
やはり常連のようだ。しかし、俺が働いてもうすぐ1ヶ月経つが、今日初めてこの人を見た気がする。
「あ、そういえば最近アザゼルさんここ来ませんでしたよね〜?なんでですか〜?」
あ、俺が聞きたかったことを聞いてくれた。ナイスラメエルさん!
しかし突然アザゼルさんの表情が厳しくなる。
「そうだな……貴様も一応堕天使だ。関係なくは無いだろう」
「勿体ぶらないでくださいよー!なんなんです〜?生理ですか〜?」
「違うわ!!……コホン。実はだな……」
アザゼルさんのただならぬ雰囲気に俺は唾を飲み込む。
「……ここら辺で一瞬ルシファー様の気配を感じたという情報が入ってな……」
「!?」
急にラメエルさんの表情が変わる。……今まで見たことないような表情に。
「あ、あの……なんのことなんですか?」
つい気になって口を挟んでしまう俺。
「俺はさっき上司が失踪したせいでトップを務めさせられた、と言ったな。その上司がルシファー様だ。」
ルシファー。俺もゲームやアニメでよくその名前を見る、堕天使であり魔王。
やっぱり本当にいるんだ……
「で、その話は本当なんですか〜?」
「あぁ。微かだが、ここいらに気配が残っている。そう遠くない場所にいるはずだ。」
「……わかりました〜。そちらも頑張ってください〜。こちらでも何か分かりましたらすぐに報告します〜」
「あぁ頼んだ。じゃあな少年。コーヒー美味かったぞ」
そう言って店から出るアザゼルさん。しかしラメエルさんの硬い表情は変わらない。一体何があったのだろうか。
「あ、あのーーー」
俺が訪ねようとした瞬間、
『狐塚商店街にて事件発生。支給SSPのメンバーは現場に迎え!!』
突然脳内に直接声が響いた。
「!?」
「これが神様からの掲示です〜」
気づけばラメエルさんもいつものラメエルさんに戻っている。これが仕事モードってことなんだろう。
にしても、これが掲示か……警察とかの無線みたいだ。
「さて、とりあえず行くとしましょう〜!……にしても、随分と焦ってましたね〜……」
確かに、脳に響いた声はかなり焦ってるように聞こえた。いつもこうな訳では無いのか。
「狐塚商店街にテレポートします〜!捕まってください〜!」
俺はラメエルの腕にしっかり捕まり、そして目を閉じた。
☆☆☆
「やっぱり早いな……ホント一瞬だ……」
喫茶店から商店街までは10キロくらい離れているはずなのに、瞬きした瞬間にはもう着いている。便利だ……じゃなくて!
どうやら事件は路地裏で起きているらしい。被害者を早く助けなきゃな。
「さて〜、今日もさっさと片付けて戻りましょ………」
瞬間、路地裏の方を見たラメエルさんの表情が固まる。
「どうしました……か……」
そして俺も路地裏に目を向けた瞬間、言葉が出なくなる。
なぜなら。
「……ぐっ……あっ……だ……大地……」
「……あ……あぁ……あ……」
路地裏にいたのは血だらけで倒れている黒兎と、一糸まとわぬ姿でアザだらけの紗耶の姿だったからだ。




