第30話 中央制御塔へ
地下都市の奥深く。
アリアたちの前に広がるのは、巨大な空洞――中央制御塔へと続く古い地下通路だった。
レオンがヘッドライトを照らしながら言う。
「この先が、最後のショーの舞台です」
アリアは息を呑んだ。
中央制御塔は、ステーションの心臓とも言える場所。
光導管よりも高く、広く、そして色の管理が最も厳しい場所。
ミラが端末を抱えながら言った。
「ここならステーション全体に光を届けられる」
イーサンは険しい表情で周囲を確認する。
「管理局もすぐにここへやってくるだろう。あまり時間はないぞ」
若者たちが前に出る。
「アリアさん、俺たちが時間を稼ぎます」
「監視カメラも設置済みです」
「すでに囮を出してます」
アリアは胸が熱くなった。
(みんな……ありがとう……)
レオンは中央制御塔のホログラムを展開した。
「最後のショーの目的は、ステーション全体を色で満たすことです」
アリアは静かに聞き入る。
「光導管はもう使えません。だから中央制御塔の光制御中枢を使います」
ミラが補足する。
「ここは、ステーション中の照明・空調・通信……全部の光を管理してる場所。ここを色で染めれば、世界が変わる」
アリアは胸元の赤い布を握りしめた。
(最後の光……)
ミラは大量のデータを端末に転送していた。
「アリア、今回のショーは地球の記憶を空に映すよ」
アリアは目を見開く。
「空に……?」
ミラは頷いた。
「ステーションの天井パネルを全部使って、空を作るの。青空も、夕焼けも、星空も……全部、あなたの光と重ねる」
アリアの胸が震えた。
(地球の空。私がずっと見たかった景色)
イーサンは地図を広げ、管理局の巡回ルートを示した。
「管理局は全戦力を中央制御塔に集めてくるはずだ」
若者たちが不安そうにする。
だが、イーサンは続けた。
「だから……俺が囮になる」
アリアは思わず叫んだ。
「イーサンさん、ダメ! そんなの危険すぎる!」
イーサンは静かに微笑んだ。
「アリア。俺はもう影の中には戻れない。君の光を守るために生きるって決めたんだ」
アリアの胸が痛む。
(イーサンさん……)
レオンが布を広げた。
「アリアさん。これがあなたの最終衣装です」
アリアは息を呑んだ。
半透明の光繊維が幾重にも重なり、動くたびに色が変わる。
背中には光の翼のような構造。
胸元には赤い布を固定するための特別な留め具。
ミラが言う。
「この衣装はあなたの心に反応して色が変わるの。あなた自身が光の源になる」
アリアは震える指で衣装に触れた。
(これが最後の衣装……)
アリアは衣装を抱きしめ、仲間たちを見渡した。
ミラ。
レオン。
イーサン。
若者たち。
地下都市の市民たち。
みんなが、アリアを見ていた。
最後のショー。
革命の最終決戦が、ついに始まる。




