第27話 市民の選択
ステーションの朝は、いつもの銀色ではなかった。
非常灯の赤い残光が通路に残り、光導管の損傷による停電があちこちで続いている。
市民たちはざわめき、管理局の巡回はいつもより多く、空気は張りつめていた。
アリアは隠れ家の窓から、その光景を静かに見つめていた。
(世界が、変わり始めてる)
胸元の赤い布が、朝の薄光の中でかすかに揺れた。
そのとき、ステーション全体にアナウンスが響いた。
「こちら管理局。昨夜の事件に関与したアリア・セルフィスを国家反逆者として指名手配する」
アリアは息を呑んだ。
「反逆者……?」
アナウンスは続く。
「また、管理局職員イーサン・グレイは任務放棄および反逆行為により拘束対象とする」
イーサンは苦笑した。
「ついに言われたな」
アリアはイーサンを見つめた。
「イーサンさん、ごめん。私のせいで……」
イーサンは首を振った。
「違う。俺は自分の意思で選んだんだ。君の光を守るって」
アリアの胸が熱くなった。
◆
隠れ家の外では、市民たちの声が入り混じっていた。
「アリアを守れ!」
「色は自由だ!」
「管理局は隠していたんだ!」
しかし、別の声もあった。
「秩序を壊すな!」
「色は危険だ!」
「管理局に従え!」
ミラが窓の外を見て呟く。
「……ついに、市民が分裂し始めた」
レオンは眉をひそめた。
「管理局は、これを利用するつもりだ。"色は混乱を生む"ってナラティブを広めようとしてる」
アリアは胸が痛んだ。
「私の光が……争いを……」
ミラがアリアの手を握った。
「違うよ、アリア。あなたの光は"選択"を生んだんだ。人々は今、自分の意思で動いてる」
アリアはゆっくりと頷いた。
◆
若者たちが隠れ家に駆け込んできた。
「アリアさん! 地下で色の集会が広がってます!」
「あなたの光を見た人たちが、自分たちで色を描いて配ってる……!」
「管理局の監視を避けるために、秘密のルートも作りました!」
アリアは驚き、そして胸が熱くなった。
(私の光は、確実に届いてる)
イーサンが言う。
「アリア、君はもう自由の象徴なんだ。管理局がどれだけ規制を強めても、色の拡散は止まらない」
そのとき、隠れ家の外で足音が響いた。
――ドン、ドン、ドン!
「管理局だ! ここを開けろ!」
若者たちが青ざめる。
「やばい……! ここまで来た……!」
イーサンはすぐにアリアの腕を掴んだ。
「アリア、行くぞ!」
レオンが端末を操作しながら叫ぶ。
「裏通路を開けます! 急いで!」
ミラがアリアの肩を支える。
「アリア、走れる?」
アリアは深く息を吸い、頷いた。
「うん。私は逃げるんじゃない。光を繋ぐために走るんだ」
イーサンは微笑んだ。
「その意気だ」
◆
アリアたちは隠れ家を飛び出し、薄暗い裏通路へと走り出した。
背後では管理局の怒号が響く。
「アリア・セルフィスを確保しろ!」
「逃がすな!」
「反逆者を捕らえろ!」
アリアは胸元の赤い布を握りしめた。
(私は、止まらない)
イーサンが前を走り、レオンが後方を守り、ミラがアリアの手を引く。
若者たちは別ルートで囮になり、管理局の追跡を遅らせる。
アリアは走りながら、心の中で静かに呟いた。
(光は……まだ終わってない)
そして、革命の最終章が静かに幕を開けた。




