第26話 新たな決意
隠れ家の薄暗い部屋に、静かな呼吸音だけが響いていた。
アリアは簡易ベッドの上で横たわり、胸元の赤い布を握りしめたまま眠っていた。
衣装は破れ、腕には火傷の痕。
第二回ショーの光は、彼女の身体に深い負荷を残していた。
イーサンはその傍らに座り、アリアの手をそっと握っていた。
(アリアを守ることができた。でも、代わりにすべてを失った)
管理局職員としての人生。
仲間。
居場所。
信じてきた秩序。
すべてが崩れた。
だが――
アリアの光だけは、彼の胸の中で確かに生きていた。
◆
アリアの指がかすかに動いた。
「イーサンさん……?」
イーサンは顔を上げた。
「アリア……! 大丈夫か」
アリアはゆっくりと目を開け、天井を見つめた。
「ここは……?」
「隠れ家だ。君はショーのあとに倒れたんだ」
アリアは少し考え、そして微笑んだ。
「みんな……色を見てくれた……?」
イーサンは息を呑んだ。
「見たよ。誰もが心を揺さぶられていた。君の光は……世界を変えた」
アリアの目に涙が浮かんだ。
「よかった……」
そのとき、扉が開いた。
「アリアさん!」
レオンが駆け込んできた。
その後ろにはミラもいる。
ミラはアリアを見るなり、涙をこぼした。
「アリア……! 本当に……よかった……!」
アリアは弱々しく笑った。
「ミラ……レオンさん……無事で……よかった……」
レオンは震える声で言った。
「アリアさん。あなたの光は……本当に……すごかった。僕、泣きました……」
ミラも頷く。
「市民の間で"色を解放しろ"って声が広がってる。あなたの光はもう止まらないよ」
アリアは胸元の赤い布を握りしめた。
(そうなんだ……私の光は、みんなの中に……)
◆
若者たちが隠れ家に駆け込んできた。
「アリアさん! 市民が色の絵を掲げて歩いてます!」
「管理局の弾圧に抗議する集会も……!」
「"アリアを守れ"って声があちこちで!」
アリアは驚き、そして胸が熱くなった。
(私の光は……もう私だけのものじゃない)
だが、アリアはゆっくりと目を伏せた。
「でも、私の光のせいで……ステーションは壊れかけてる……みんなが危険に……」
ミラが首を振った。
「違うよ、アリア。壊れたのは管理局の秩序だよ。あなたの光は人々を自由にしただけ」
レオンも言う。
「アリアさんの光がなかったら、僕たちはずっと銀色の檻の中でした」
イーサンはアリアの手を握り、静かに言った。
「君の光は誰も傷つけていない。傷つけているのは管理局だ」
アリアの瞳が揺れた。
◆
アリアはゆっくりと身体を起こした。
痛みが走る。
だが、その痛みは生きている証だった。
アリアは胸元の赤い布を握りしめ、仲間たちを見渡した。
ミラ。
レオン。
イーサン。
若者たち。
そして――
光を求める市民たち。
アリアは深く息を吸い、静かに、しかし確かな声で言った。
「私は色を取り戻す。この世界に、もう一度光を灯す」
ミラが涙をこぼす。
レオンが拳を握る。
イーサンが静かに頷く。
若者たちが歓声を上げた。
アリアは続けた。
「たとえどんなに影が濃くても、光は必ず届く。だから、私は歩くよ。光を纏って」
その言葉は、隠れ家の空気を震わせた。
革命は、ここから新しい段階へ進む。
アリアはついに――革命の象徴として覚醒した。




